百八十一話 過去の別れ
八章のタイトル出しますね。
あと、その内情報紹介も。
気が向いたら、外伝二話も。(小声)
ギルドに戻り、依頼の完了報告を済ませた。
すると、またもや受付さんに見られた。
疑う感じでは無いけど、少し戸惑っているみたい。
それを見てつい、私にも伝染ってしまった。
「えっと?」
「あ!済みません。朝出たばかりですよね?」
「うん」
「早過ぎませんか?」
「そうかな?」
ストーンゴーレム3体の討伐が早過ぎたのかな。
でも、早い方が良いでしょ?
確か依頼に書いてあったけど、怪我人が出たとかなんとか。
それで依頼が発生したらしいけど、次の犠牲者が出る前に、一刻も早く達成した方が、みんなの為にもなるよね。
「1人ですよね」
「うん」
なに?ボッチって言いたいの?
うるさい。余計なお世話。私は1人の方が良いもん。
決して自分が嫌われてる訳じゃないもん。
ねえ?そうだよね?
うぅ。ぐすん。目から汗が。
私は泣いてないけど、どうやら相手は関心している様だった。
「ルビー君は凄いんですねえ」
「別に」
「仲間は作らないんですか?」
「出来、要らない」
「そ、そうなんですか」
危うく出来ないと言いかけた。
勿論、私の精神力で耐えた。
ま、まあ?私程の人になれば?むしろ引っ張りダコですけど!?
仲間が出来ない訳じゃないし!
そうだよ。私が選んだんだ。私は強いから要らない。
何?逃げてない。そう、これは修行。
怖くなんてない!
私は、私の感情を怒りで押さえつける。
こうする事で目の汗を止める事に成功した。
ぐすっ。つらくない。
1人最高。私は楽しい。
他人なんて要らないんだ。ばか。
口の中から鉄の味がする。
胸が痛い。心が苦しい。さみし、くない。
私は自分自身に言い聞かせる。
途中からよくわからなくなった。私の感情。
諦めそうになった。けど、駄目。
なんでだろう。何かを諦めることだけは、許せない。
「約束です」
ふと、何かが聞こえた。
頭の中で響く声。
誰かの声。思い出せない。
「誰?」
返事は無い。
ただ、1つ。
思い出して声に出す。
「約束。諦めない事。大切な人」
なんだろうか?
忘れたらいけない事。
私の記憶。消えた記憶。断片。
「愛しています」
また、聞こえた。
えっと、愛?‥‥‥アイ?
「アイちゃん?」
名を呼ぶ。その瞬間。
右眼が痛みを訴え、頭を揺さぶられた様な衝撃。
「あ、がぅ。あぐ」
ズキズキと痛み、形容し難い苦しみ。
悶絶し、耐えようとするも、痛みは更に増す。
濁流に攫われ、意識が遠のく感覚。
「嫌だ。今度こそ」
抗えば更なる痛み。
何かが焼けるかの様な。落ちる。
ふわり。
何処かわからない世界。
頭を抱えて蹲る私。
その数歩前にいるアイちゃん。
《抵抗しないで下さい》
『嫌だ!』
《このままでは貴女が!》
『だったら止めれば良い!』
《記憶を残したら、貴女は。私は見てしまったんです》
『うるさい!それが本当だとして、私が頷くと思ってるの!?』
《こうするしか、無いんです》
泣きそうな声のアイちゃん。私の前に歩いて来て、触れた。
《ごめ、なさい》
『あ、うぐぅ。やだ。嫌だ』
1つ、2つと焼かれる感覚。
それから、私は、
《これで、終わりますから》
私の記憶が途切れるまであと少し。
いや、もう、殆ど終わってた。
だから、ここから先は曖昧。殆ど知らない。
でも、最後の抵抗。
『まけ、ない』
《え、まさか!?》
私の身体から何かが飛び出し、アイちゃんを貫く。
ぶすり。ぽたっ。ぽた。
《これは、そう、ですか》
飛び出した何かは鎖。
貫くだけで終わらず巻き付く。
ジャラジャラ。
『逃が、さない。1人は嫌、だ』
私はここで意識を失った。けど、多分思い出す。全てを。
《この力。こんな使い方。ふ、ふふ。本当に、お馬鹿。そこまでして、この土壇場で?ズルいです》
プツン。
焼き切れた音。
煤けた本。書庫の中で眠る。
冥府の更に奥。魂の書庫。
いつか、また来るから。君の為に。
「大丈夫ですか!?」
呼ばれて目を覚ました。
覚えてる事は少ない。
でも、今回は。
「アイちゃん。私の親友」
覚えてる。私の側にいてくれた人。
私は、黒龍だった事。
どんな想いだったのか。今度こそ忘れない。
「あのー?」
「誰?」
咄嗟に聞こえた声。
いや?さっきから聞こえてた。多分起こしてくれた声。
よく見ると、受付の人かな?
「あぁ、良かった。急に倒れて呻き始めたものですから。心配しました」
「そうなんだ」
ここはどこだろう?
よくわからない部屋。ギルドの中だろう事は察した。受付の人も居るし。
あ、それより仮面。
「あの?イヴ公爵様ですか?」
うん。バレちゃった。
だよね。介抱する時に外すよね。うん。どうしよ。
「あの?」
「違う」
無駄だろうけど嘘を吐いた。
しかし、
「あ、ああ!?そうなんですね!わかりました!私は何も見ていないです!!」
「わた、僕はルビー。だよね?」
「は、はい!そうです。私は何も知りませんから!」
ブンブンと首を振る受付さん。
そんな勢いだと、首取れちゃうよ?
そんな事を思いながら、感謝をする。
でも、感謝を直接は言えない。
だって、誤魔化してくれてるのに、お礼を言ったら認めた事になるから。
この人まで共犯になっちゃう。
ふふ。良い人なんだ。
暖かい色だね。
私は仮面を付け直して立ち上がる。
今度こそ、バレない様に。
今度こそ、忘れない様に。お礼を言うんだ。
「ありがとう」
誰でもない。誰かに向かって。
1人になる事で自分を見つめ直す。
旅は1人で行くのも楽しいですよね。
え!?少女は楽しんでない?
まあ、色々あります。
新たな発見。かつての、思い出。郷愁。
それら全部含めて旅だと思います。
そして、複数人だともっと楽しいですよね。