百八十話 格闘少女
「それではストーンゴーレムの駆除、お願いしますね」
受付の人から目的地への地図を貰って、ギルドを出る。
適当に依頼を掴んだけれど、目的の獲物はストーンゴーレムと言うらしい。
本当はもう少し、よく調べてから受注しないといけないとは思う。
でも、どうにも他の冒険者さんの会話が気になって、と言うか気が散ってしまい、依頼の内容も聞きそびれてしまった。
「はあ」
声を漏らしながら、ついでに貰っておいた、公女様とやらの情報も確認する。
「えっと、何々?」
そこに書いてあったのは、10歳くらいの少女で、黒髪異眼の瞳は赤と青、と言った簡素な物だった。
他には、服装などの予想も書いてあったが、ドレスとあったので、この外套を装備している限りは大丈夫そう。
外套を持ち出したのも気付かれてなさそう。
「仮面と外套を持って来てて良かった。ありがとね。ふふ」
何となく仮面と外套にお礼を言った。
少し光った気もするけど、多分気のせい。
多分だけど、昔の私がお世話になった筈。今の私とは別人だけど、お礼を言わないといけない気がした。
後は自己紹介も兼ねての言葉。
無駄だろうけど。
「取り敢えず、依頼。やらないとね」
言葉に出して気を引き締めてから、目的地である町の外に出掛ける。
依頼の獲物は、少し北に歩くと辿り着く、岩場に居るらしい。
ストーンと名がつくだけあって、岩の多い所に棲息していて、一応魔物。
門番?(門は無いから警備兵)さんに挨拶をしてから外へ出る。
目的地は直ぐに到着して、魔物を探すが見つからない。
少し困って、依頼内容を確認すると、岩などに擬態するらしい。
「えぇ?見つけるのは大変だよ」
愚痴りながら周りを見渡すも、どれもこれも同じ岩にしか見えない。
注意深く依頼の内容を確認すると、魔力感知を使ったり、衝撃を加えたりして魔物を見つけられると書いてあった。
「ほうほう成る程。魔力感知は使えないから、手当たり次第に攻撃してみようか」
そう言いながら、肉体強化を施す。
そして、
「とりゃー!」
目の前の岩を殴った。
すると大きなヒビが入り、不可思議な動きをしてから、本物の岩になった。
「あれ?まさかこれ?」
恐らくストーンゴーレムだった物。
その岩の亀裂の間から小さな光が漏れていて、それを手に取る。
「魔石?かな」
魔物から取れると言われている素材。
この事も書いてあった。
恐らくこれが魔石。琥珀色の石で、これが採取出来た事から、倒してしまったらしい。
魔物から魔石を取ると死んでしまうので、回収した時点で、倒せているのは間違いない筈。
だが、確証が持てなかったので、他のゴーレムを探す。
もし、生きた?(ゴーレムは生命体では無いらしい)ゴーレムを見つけたら、それを倒して魔石を入手しないと、本物だったのか判断がつかない。
「多分、合ってるとは思うけど」
言いながら岩を軽く叩いて反応を確かめる。
弱すぎる衝撃だと無反応で、強すぎる力を込めれば壊してしまう。
そんな、何とも扱い辛い岩を調べる事数回。
「うん?」
私が気付いたとほぼ同時。
岩が動き始める。
「あわわ。ひょっとして怒ってる?」
私が訊ねると、答えだと言わんばかりの右手?を振り抜いて来た。
勿論躱した。
ちょっと!?危ないじゃん。急に攻撃するなんて。
ん?まてよ?私が先に攻撃したような物。
それだと、私が悪いような?
そっかあ。私かあ。
考えながらも攻撃は飛んで来る。
とは言え、全く当たる気がしない。
油断してても回避したのだから当然。
なので相手の右ストレートに合わせて、
「ていっ!」
気持ちはポコん。
でも実際は、バキッ!
ガラガラと音を立て崩れ、岩の真ん中から、橙色の光が見える。
そこに近寄って手に取り確認すると、間違い無く魔石。
なので、最初のアレはゴーレムだったらしい。南無。
手を合わせ合掌した所で最後を探す。
今回の目標討伐数は3体で、魔石を納品する事で証明出来る。
正確にはこの依頼は魔石の納品が本体なのだけどね。
魔石も一個は報酬で貰えるけど、どっちかと言うと、目当てはお金なので、そこは気にしない。
そして、一度コツを掴めば次は早い。
「多分、アレだよねえ?」
なんとなく普通の岩とは違う雰囲気。
説明は難しいけれど、周囲の空気が違うと言うか。
うん。自分でも何を言ってるのかわかんない。
でも多分。
違和感を確かめる為に近くの小石を拾う。
そして、それに魔力を流して投げると、小石は砕け散りながら、怪しい岩に小さなヒビが入り‥‥‥動きだした。
確認が出来てから、怪しい岩を殴って破壊する。
「うん!完了!」
声に出して、魔石を外套の中に仕舞ってから、来た道を辿る。
なんだかんだで上手く行き、冒険者と言う仕事は意外と楽しいなと思いながら帰る。
鼻唄を歌い、ルンルンのスキップ。
今は昼過ぎで、出発したのは朝。
大体3時間くらい。
なのでまた、警備の人に挨拶をする。
向こうも覚えててくれたらしい。
「こんにちわ!」
「おう!朝通った少年か!元気で良いな」
「入っても良いですか?」
「勿論!無事で良かった」
「うん。ありがとう。頑張ってね」
「良い子過ぎる」
何故か撫でられた。
でも、うん。嫌じゃない。
「髪の毛サラサラだな」
「そうですか?は!?あ、いえ。ボクはよく言われますね!?」
撫でられて気付いたけど、髪の毛の質は、男の子と女の子では違う。
その事に気が付いた。今更。
「そうか!いや。いい髪だ」
褒められただけで、疑われては無い気がする。
でも、油断したらバレちゃう。
そして、女の子だと気付かれたら、そのまま身元が割れてしまうかもしれない。
「これは、男の子のフリをするしかない」
誰にも聞こえない様に宣言する。
自分自身に言い聞かせる様に。
さて、当面少女の内面重視で書きます。
久しぶりの書き方で、若干忘れてたり。
まあ、作者はアホトカゲですからね。
(黒龍の少女談)