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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
七章 継承者
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百七十五話 騒動の幕開け

少女はお菓子を食べた結果。

落ち着いたのか黙々と、いや、もぐもぐと口を動かし続けていた。

正確には泣くのを辞めて、若干諦めている。

お菓子は美味しく、気持ちが晴れそうになるのだが、悲しい事を思い出してから、また落ち込むと言った感じの行ったり来たり。


ほぼ自棄食しながら、人が来るのを待っていた。

するとそこに、巫女が王妃様を連れて戻って来た。

少女は手を止め、怒られる事を覚悟して待ち構える。

しかし、王妃様から出て来た言葉は、叱りの言葉では無かった。


「此度の戦について、説明を受けました。さて、イヴ様。ご無事で何よりでございます」

「はい」

「一応お伝えしますが、陛下は怒っていません。なので、落ち込まないで下さい」



どうやら処罰は無いらしい。ひと安心。

でも、何故だろうか?

わからない事だらけで、疑問符が浮かぶ。

リアーナ王妃様は、私の疑問符に気付いてから、説明を開始した。



「まず私共は、あなた様を叱る事はありません。その証拠に、戦争で得た領地に関しては、イヴ様への褒美にするつもりでした」



え?私の領地?なんで?

あ、いや。怒られないのは理解した。意味はわかんないけど。

誰かが代わりに説明してくれたのかな。



「本当は、国の領地を割譲したいのですが、色々とありまして。それならば、戦果をそのまま褒美にしようとして、今回の戦争になりました」



王妃様は、聞いて良いのかわからない説明を開始する。

説明を受けている筈なのに、余計にわからない事が増えてしまった。



「他には、そうですね。フユ様についてですが、あなた様の部下として、正式に姉と認めます。礼状は作成しておきますので、改めて宜しくとの事です」


他人から聞いたみたいな説明。

少女は思わず訊ねる。


「え?それは、誰からですか?」

「黒龍様です」


即答。

王妃様は答えた。

そして、謎が解けて少女は理解した。



あ、成る程。説明してくれたのも多分。

じゃあ、庇ってくれたのもそうなのかな。

叱られないのもそう言う事?義娘だから。

なんだろうか。有難いけど、結局私は失敗しかしてないよね。


なんでだろう?悔しい。

そうだよ。いつまでもおんぶに抱っこ。

失敗しては助けて貰っての繰り返し。

黒龍様が味方なのは嬉しい。いわば国全体が助けてくれている様なものだもん。

でも、結局それは私の力では無い。

私って何。私の力って?


公爵?取ってつけただけの位。

竜巫女補佐?私が居なくても変わらない。

毎日頑張ってます?結果が出せて無いだけの言い訳。

戦争では叱られ、殆ど、いや全く何もしていない。

私は役立たずもいいとこ。私には何も無い。


勘違いなのかな。

フユは親友だと思ってた。

本当は、黒龍様から命令されて手伝ってくれただけ。

命令だから、仕方無く。

そうだよ。とんだ勘違いだった。私の大馬鹿。



少女は唇を噛み締め、ただ淡々と言葉を聞いていく。

下を向いて、瞳は涙で滲み、口元からは血が流れる。

反論は出来ない。反論しようがない。

言葉を聞き入れるしか無い。

普通の者ならば感謝をするのだろうが、少女は己の不甲斐無さに、ただ憤るしか出来ない。


昔と比べ、感情の変化は分かり易くなった。それでも相変わらず難しいのと、下を向いているのも相まって、誰も気付かない。



私は1人だと何も出来ない役立たず。

このままだと駄目だ。

優しいみんなが庇ってくれるけど、今のままだと私は何も出来ないまま。


国を出よう。


みんなには悪いけど、私なんて居なくたって変わらない。

強くなって。頼られる。そんな私になる。

そうだ。自分自身を見直す為の旅。

1人で行こう。


また、頼っちゃうから。



少女は掠れ掠れに返事をする。


「ありがとうございます」


声に出せば泣いているのは明白。

背中も震えている。

しかし、少女の感情とは全くの正反対に認識された。

それ故に、誰も気付かないまま。


少女は顔を上げずに屋敷へと向かう。

この行動が無礼であっても叱られない。

その事は、半ば仕方のない事。


この世界で、最も少女を理解しているのは乙女。

しかし、乙女は龍へと変化した事で、ある力を手に入れた結果、少女の感情を理解する能力は低下した。

乙女の強大な能力には些細な代償だが、それは何にも代え難い物だったかもしれない。


それは、ほんの片時を誤魔化すのには充分な変化。

早速、少女は準備を開始する。

必要な物を適当に集め、いわゆる家出の準備。

メイド長には嘘を吐き、日課の訓練をキャンセル。

乙女と会ったが、適当にあしらう。


この時点では乙女には気付かれない。

適当に扱われるのもいつものこと故。

少し意外な事に、メイド見習いには気付かれかけたが、ゴリ押しで押し切った。



そして、夜。

少女が寝る時刻。


寝床を整え、寝たふりをする。

いつも見回りがあるので、それを乗り切ったら、家を出る予定。

少し暇な時間。ぼんやりと考え事をする。



危ない。もう少しでバレるとこだった。

まあ、そりゃそうだよね。出掛ける用意してたらね。

それも1日だけの事。

夜みんなが寝静まってから出るから、もう大丈夫。


はあ。みんな心配するかな?

いや、そんなの気にしてちゃ駄目。

でも、怒られるよね?今度こそ。

‥‥‥辞めようかな。怖いし。


寂しいな。



そして、メイド長が部屋に入って来て、頬をツンツンとしてから、出て行った。



多分、起きてるかの確認かな。

さて。もう良いかな。もう来ない筈。

行こう。何かを探しに。私を見つけに。



少女は飛び出す。

窓から、逃げ出す様に。暗い夜の中を走る。

ただ1人で。

さて、もう一話。

少女以外の視点を書いてから、次の章です。


人の心を読めたら凄く便利ですよね。

読者様はどう思いますかね?

便利だと思う方も居れば、汚い部分も見えて嫌だと思う方も居るのでは?


ふふふ。


この世界でのその力は、所謂チートと呼ばれる物です。

読みたい感情を選べるという代物ですが、少女を見透すのは不可能です。


理由は2つありますが、説明が面倒なので適当に濁しておきますけどね。

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