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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
七章 継承者
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百七十三話 少女の本質

食事を終えて眠り、次の日の朝。


早速メイドに起こして貰って、着替えをお願いしながら、今日の予定を空想する。


取り敢えずアポを取ってから、可能なら王様と面会をする。

戦争の報告や、フユの処遇について相談したい。

後は、今後の仕事についても気になる。

竜巫女補佐も今日から復帰しよう。

まずは、朝の竜巫女の仕事から。



専用の服に着替えさせられ、朝食を摂る。

未だフユは起きて来ていないみたいで、オルトワさんに視線を送ると、察したのか答えが返って来た。


「寝惚けていらっしゃったので、断念しました。まだ寝たいとの事で」

「そっか。まあ良いか。返って来たら訓練お願いね?」

「はい。承知しました」


少女は一つ頷いて、近くの教会に向かう。

約一月ぶりの巫女様と会うので、少し緊張しているが、その事よりも会える事を楽しみにしている。

そして、目的地に辿り着き、護衛の騎士達に会釈をしてから中に入ると、いつもと変わらぬ美しき金の巫女がそこに居た。



金の巫女は騎士に指示を出しながら、悩み相談の準備をしている。

どうやら向こうを向いていて、こちらには気付いていないらしい。

なので、私は後ろから近付いて、竜巫女様の名前を呼ぶ。


「ラーナちゃん」

「はい?なんでしょわ!?」


ラーナちゃんは後ろへ飛び上がり、あからさまに驚いている。

何故そんなに驚いたのかはわからないけど、嫌悪とかでは無さそう。

なんと言うか、尊敬する人に遭遇して、声をかけられたみたいな感じ。

いつもならすぐ立て直すのに、目が泳いでる。


「あ、あわわ」

「ひ、久しぶり?」

「ほ、本物ですか?」

「私は私だけど、偽物がいるなら会ってみたい。かな?」

「帰還予定は来月の筈ですが」

「うん。色々あって、帰って来た」

「ああ。おと、ゴホン。陛下とお母様がピリピリしていましたが、イヴ様が戻られたからですか」


なんと、ラーナちゃんからとんでもない事実を聞かされてしまった。

どうやら私は、王様達を怒らせたらしい。

これは間違い無く、呼び出されたらお説教だ。

ああ、やっぱり。撤退は良くないんだね。

確かに、私は何もしてない。

進軍しておくべきだったんだ。失敗したなあ。

怒られるんだよね?


少女が昨日、家に帰らされた理由を察してしまった。

すると、自責の念が少女に襲いかかる。


「イヴ様?」

「うう、ごめんなさい」

「イヴ様!?急に泣いてどうしたのですか!?」



気付いたら私は泣いてて、ラーナちゃんに励まされた。



「と、取り敢えず、何があったのか教えて下さいますか?」

「フユと出会った」

「フユ?」

「うん。白龍。黒龍様の眷属の方」

「は、はあ??」

「どうしたら良いのか判らなくって、帰還したの」

「ふむふむ」

「一戦も交える事無く戻ったから、それで多分、怒ってる」

「成る程」

「それで、叱られるのが怖くて」

「困りましたね。どうすれば良いのか、私にも判りません」

「うう。処罰されます。ラーナちゃん、ごめんなさい。私。期待に応えられなくて」

「そ、そんな」



少女は責任という名の重荷に潰されかけ、叱られてしまう未来に対して、恐怖で震えてしまっている。

とてもこの状態では、話を聞くことが出来ない。

それでも、なんとか励まそうとする金の巫女。

巫女はぽつりぽつりと独り言を溢しながら、頭をフル回転させている。



「イヴ様が何の考えも無く撤退するとは思えませんし、お父様がイヴ様を叱る事は有り得ない筈。それよりも白龍?そちらの方が気になりますが」



巫女は脱線しかけた思考を一度止めて、冷静さを取り戻してから発言をする。


「イヴ様!」

「ぐすっ。はい」

「一旦お城に行きましょう!」

「連行ですか?」

「そ、そうではありません。詳しくお聞かせ下さい」

「事情聴取されるんだね」



少女は物事を、悪い方に悪い方にと考えてしまっている。

もう既に、死刑にされると考え始めている。

内容は全然違うが、巫女と少女は互いに、諦めてしまった。


正に。ああ、もう、駄目だ。これ。


なので半ば強引に、巫女は少女を城へと連れて行く。

少女は抵抗する事無く、お城へ。





少女は、お馴染みの応接室へと通された。



私は座らされてから、ラーナちゃんは慌てて飛び出して行った。

それをぼんやりと眺めて、ある事を思いつく。

そう。逃げたらどうだろうか?

このままいたら怒られるから。

でも逃げたら、もっと怒られるよ。



そんな事を考えてしまう。

少女は初めての大役を任され、それを果たす事が出来ず、あろう事か逃げ帰ってしまった。

その結果が、少女には無い胃袋を痛めつける。



うう。お腹痛い。

もう嫌だ。帰りたい。

フユ、助けて。



少女は身近な人に呼び掛けるが、無駄だという事は、少女が1番理解している。

ぐるぐる、ぐるぐると、嫌な気持ちに支配されているその時。

王家のメイドが、お菓子とお茶を持って来た。

しかし少女は、接待されていると感じたのでは無く、最後のおやつだと受け取った様だ。



ぐすん。

甘くて美味しい。

味わって食べないと。

ああ。せめて、フユには罰則がない様にしないと。

大切な親友を守らないといけない。

私の所為で怒られて欲しくない。

うう。どうにか私だけにして貰えるように、交渉頑張ろう。



少女は諦め、別の目標を立てる。

優しさは自己犠牲へと変わり、小さなズレは少しずつ大きくなる。

かつて、乙女から始まった誤解は、形を変えながら少女へと巡る。


廻る運命を遡ることが出来たならば、誤解など生まれない。

優しき者達は、ただ単に、少女の為に尽くしている。

たったそれだけの事なのに。

さてさて、ものすごい勘違いですね。


王様には戦果は説明していないのに、何故か報告した気になっている少女。

中々にネガティブな子どもなんですよ。少女は。


さて、他にも正されてない勘違いは多いですよ?

それが良い時もあれば、逆もありますが。


あ、因みに作者はご都合主義ですからね?

勘違いしない様に!なんて。


今章のタイトルも公開しました。

もうすぐ次の章になりますけどね。


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