十六話 やり過ぎ注意?
ウサギを一羽狩ってから、コツを掴んだのだろう。
嬉々として獲物を狩っては積み上がる。およそ10というところで2人は少女に告げる。
「まあこんな物で良いだろう。そろそろ終わりにしよう」
「おーいクロー」
すると、茂みからウサギを掴んだままの少女が現れる。
「まだまだいけるよ」
と言っている。その瞳にはまるで、嫌だと書いてあるようで、その表情は、ほんの少し不機嫌の様にも見える。
元々は殆ど無表情だが、たまに感情の起伏が読み取れる。その様子に苦笑いの表情で2人は言う。
「持てない量狩っても仕方ないしな」
「楽しそうなのはわかるんだが、狩り過ぎなのも少し困るからね」
それを聞いているとアイちゃんがかぶせる様に話しかけて来る。
《そうですね。食べるのに必要な量だけにして、もう終わりましょう。楽しいからと言って狩り過ぎるのは生物としてはあまり良くないですから》
『わかった』
頷きながらも、頬を膨らませた少女は少し悲しんでいる様にも見える。
しかし、なんだかんだでみんなで撤収の準備を始める。片付けながら3人は会話を始める。
「しっかしまあ、一応聞いてたが、確かにとんでもねえわな」
「何がですか?」
「クロのことだよ」
「私?」
「そうそう。ナイフについてもだけど、改めて狩りも初めてとは思えないよねってね」
「俺の初めての狩りの成果はゼロだったからなあ」
「まあ僕もそんな物だね」
「えっと」
「あーいや、クロはすごい才能があるんだなと思ってね」
「おう。冒険者や狩人とかにもなれるだろうしな!それでいて、将来は美人になるだろうから引く手数多ってやつだな」
それを聞いて少女は顔を赤くする。目や口の形は変わらないが間違いなく照れているのだろう。そっぽを向きながら答える。
「あ、ありがとうございまひゅ」
おそらく噛んだのだろう。目元が潤み少し震えている。
2人は思わず吹き出し、これまでの狩りよりも早く帰路に着くのであった。