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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
七章 継承者
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百六十五話 女神の思い出④

黒龍様は山賊達に触れました。

その時に一言告げました。

当時の私には聞こえませんでした。だからこれは、私が後から知った事です。

神の力を使って調べた事ですね。



「冥府の力よ」



一言の後には、私以外は灰になりました。

何が起きたかよく分かりませんでしたね。

手品と言うやつですかね?


現実味が無くて、不思議と怒りが湧かなかったんですよね。

父と母が消されたのに。


でも、死者を冒涜する、それではありませんでした。

まあ、何にせよ、逆らう事は出来ませんから。

心のどこかで諦めがあったんです。

でも、それのお陰で、後ろを見なくて済みましたよね。



ああ、それから街に向かって歩いていたんです。

やはり、倒れてしまいました。

予想。当たってましたね。



「ぬう。折角助けたが、流石に無理か。一応書庫を覗いて‥‥‥やはり。道を知らないのか。連れて行ってやろう。はあ、面倒な事をした」



黒龍様は、面倒くさがりながらも私を抱えて、街へと行ってくれました。

道はやはり間違えていた様です。


ああ、ローザさんだ。懐かしいなあ。

お世話になったのに、何も出来なかったな。


「お、お嬢様!?」

「倒れておってな。ここの娘だと聞いた。我は忙しい故、失礼する」

「あ、あの!」


黒龍様は去ってしまいました。

それから少し眠って、あ、目が覚めたみたいです。


「ここは?」

「ああ!良かった。お嬢様」

「夢?」

「旦那様や奥様が、お戻り頂けておりませんが、お嬢様が倒れていたと聞きました」

「お父様。お母様」


私は安心と同時に、曖昧ながらも現実だと理解していました。

お母様の、あの感触が偽物の筈はありませんから。

当然、私は泣きじゃくって、ローザさんに一杯励まされました。


「お嬢様。何があったのですか?」

「ううん。なんでも、ないの」


ほぼ一日中泣きました。

今でも、ローザさんは疑っていません。

それなのに、父と母を殺した容疑が、ローザさんになってしまいました。


納得いきませんでした。

当然です。ローザさんがそんな事する筈がありません。

当家が取り壊されたのはどうでも良いです。

父も母も居ない家に、未練などありませんから。


結局、無知な私は何も出来ませんでした。

頼る人もいない。信じられる人もいません。

まあ、10の娘が何か出来る方が変かもですよね。


ただ、王様に1つだけ願いを叶えると言われました。

私を放り出す代わりと言うやつですね。

何を頼むか。決まってます。


牢屋越しに、最後にローザさんと会話をしたんですよね。



「ローザさん」

「申し訳ありません。お嬢様」

「私。信じてる。お父様を、お母様を殺したのは、ローザさんでは無いですよね?」

「はい。ですが、私にはもう」

「どうして、死ななくちゃいけなかったの?」

「それは」

「悪い事してないのに」

「お嬢様生きてください。私が言えた言葉ではありませんが、お嬢様の幸せを願っています」



2人して泣いちゃったんです。

手を握ったら嘘じゃないって、子供ながらに。いえ、子供だったからこそ、信じられたのかもしれません。


だから、私の願いは「ローザさんを解放して下さい」でした。

それでも、追放は免れませんでした。


その後すぐに我が家は取り壊されました。

思い出が崩れる様な錯覚を抱きました。

お父様やお母様。ローザさん達との日々は、消えていきました。

儚いものです。


でも、頑張るって決めたんです。

悲しくなんてないんです。

そう、ほんの少しだけ。最後の涙です。

もう。泣きません。何があっても。


結局。家は無いのに、そこから離れられませんでした。

戻って来る筈もないのに。


「お母様。お父様。私。守って見せます。いつでも待ってますから」


2日位経ってから、ある人が来ました。


「リユーラ子爵の娘か?」

「誰?」

「私はエルノア・フォン・スルファンと言う」

「そうなんですか」

「そなたの境遇は聞いた。良ければ当家に来ないか?」

「いえ。父と母を待たねばなりませんから」

「それは、噂で耳に入れた。本当に申し訳ない事をした。あの時。当家に来ようとしなければ」

「もう、いいんです」

「頼む。何としてでもそなたを連れ帰らねばならぬ」


深々と頭を下げる伯爵様。

強情になってたんです。私。

頑張るって、後ろは振り返らないって、決めてたのに。

でも、痛そうだったから。心とか、手とか。

だから、ついて行く事にしました。


本当は理解してて、その上で、どうしたら良いのか迷っていたのです。



こうして、10年くらいですかね。

王都から離れて、伯爵領で過ごす事になりました。

王都は、本当に色々ありました。

離れて良かったんだと思いますね。

あのまま残ってたら、未練がましく居座ってたら、のたれ死んでいました。


そして、私は養子として、伯爵様の末席に加えて頂きました。

時間はかかりましたが、ゆっくりと馴染んでいきました。

正確には、皆さん優しくて、私が遠ざけてたんです。

今までの思い出が消えていくみたいで、拒絶してしまいましたね。


考え過ぎでした。

特に、義兄様には随分と助けて頂きました。

け、結構強引でしたが、塞ぎ込んでた私を、無理矢理にでも連れ出してくれました。


義兄様なりの優しさです。

本当に時間がかかりましたけどね。

それでも、第二の故郷です。私の半生を過ごした場所ですから。

今でも。義兄様には感謝しています。

生前は、女神なんて言われてましたが、義兄様の為に頑張ったからです。


せめて、伯爵家に恩を返したくて、必死に頑張ったんです。

今なら。無駄では無かったと信じています。


でも、失敗は結構ありました。

まあ、気にしないです。今更過去は変えられませんから。

私は、私の役目を果たすだけですよね。


ね?イヴェトラ様?

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