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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
七章 継承者
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百六十一話 心

少女は乙女と共に馬車に乗せられて、東へと向かっていた。

つまりは帰還中であり、これからおよそ2週間程度で国に着く。

少女と乙女だけならば、帰るのに1日も必要無い。

だが、少女は一応指揮官なので残っている。

正確には、少女がその方法に思い至っていないだけであるが。


馬車の中では2人は向かい合って座り、気不味そうに見つめあっている。


少女は甘えたくて、見つめているが、自制心を強く保ち、耐えている状態。

だが、誘われたら仕方ないかと言い訳を、いつでも言える様に準備している。

乙女は、少女が甘えてこないかと待ち構えている状態。

甘やかしたいのは山々だが、拒絶されたら耐えられないのと、自分から甘えておいでと言うのは恥ずかしいので、声をかけられるのを待っている。

そんななんとも言えない空気だが、耐えかねたのか、2人が同時に声を出す。


「「あ」」


ハモってしまったので、互いに遠慮してしまう。そして、お互いに話すのを待ってしまったが、先に乙女が問い掛ける。


「あの?」

「は、はい」

「えっと」


特に何かが言いたい訳ではなかった。

甘えて欲しいだなんて言えず、咄嗟に質問を探す。そして捻り出して言葉にする。


「あのさ?どうして敬語なの?」


問われた少女は考える。

ほんの少しだけ、落ち込みながら。


あ、誘ってくれなかった。

べ、別に甘えるつもりなんて無かったけどね!

それより何故って言われても。

それは、まあ。畏れ多いから、かな?

いくら部下だって言われても、そんなに簡単には変えられない。

まあ、無意識に遠慮してるのかな。


「遠慮してるの?」


少女が考えたとほぼ同時に、乙女が口に出す。その声音は寂しげで、ほんの少しだけの小さな怒りもある。

言い当てられた少女は、焦って言葉をなくしてしまう。


「あ、あの」

「だと思った。相変わらずだよね」

「ごめんなさい」

「怒ってないよ。みーちゃん」


乙女が大切な人の名前を呼ぶ。

しかし、そのせいなのか、少女は申し訳ない気持ちで一杯になる。


「あの、嘘をついて、ごめんなさい」

「嘘?」

「私。みーちゃんさんではないんです。その、勘違いで」

「ああ、うん。そうだね」

「よく似てるんですか?」

「うん。本人だよ。記憶が無いんだろうけどね」

「な、何故それを!?」

「多分そうなんだろうなあって。それよりも敬語禁止」

「は、はい。わかり、った」

「うん。良し」


わかりましたと言おうとして、慌てて訂正をした。

冗談の様に聞こえるが、黒龍様の命令らしいので、気を抜くわけにはいかない。

それよりも、私が記憶を失っている事を知っているらしい。

ならば、失う前を知っているかもしれない。


「何故記憶を?」

「あーまあ、色々と、かな?」

「それなら、私の記憶を失う前を知っているんですか?あ、いえ。知ってるの?」

「うーん。イエスでありノーでもあるかな?」

「そう、ですか」


どうやら、あまり情報は無いかもしれない。

それでも何か判るかもしれない。

諦めるのはまだ早い。そう思い、フユさんに。いや、フユに質問する。


「知ってる範囲で良いので教えてくれる?」

「うん。良いよ。でも、期待してた答えにはならないかもね」



乙女はそう言って話し始める。

時折情報を隠しながら、伝えたのはかつての少女の情報。

どんな人だったのかなど。優しい人だったとか。

そして、大事な話を告げた。


「次に、イヴ。あなたは女神の娘だよ」

「え?え!?」

「あとは、黒龍のむす、いや?保護された子ども。えっと養子、かな」

「え??その、黒龍様の娘?」

「うん。まあ、一応」

「だからですか?」

「何が?」

「フユが助けてくれたのは」

「そうだね」



なんて事だろう。私は女神様の娘で、黒龍様の養子。それなら、白龍様が守ってくれるのは理解出来る。それが私でなければね。

あれ!?じゃあ、娘って思ったのはあながち間違いじゃない。

自意識過剰だと思ったけど、そんな事ない。

あれ?王様は知ってたのかな?多分知ってたと思う。

でも、黒龍様に会った事が無い。

一応の娘なのに。それって変だよね?


「フユ?」

「ん?」

「私。黒龍様に会った事がありませんよ。それって、一応娘なら、変だと思うけど」


少女が疑問に思った事を乙女に問えば、乙女が慌て始める。


「え!?あ、えっと。それはその」

「何故ですか?」


ただ単純に疑問。

疑っているのでなく、素朴に気になる。


「色々あってね!?うん!だから私が頼まれたの。その、面倒を」

「成る程」

「そう!色々ね!」


強い口調で押し切る乙女。

手がバタバタと動き、必死に説明をしている。

しかし、少女は追撃をする。独り言のつもりだが、それは乙女への攻撃になる。


「何故、王様は教えてくれないのでしょうか」

「うん!?それはね?内緒にしないといけなくてね!?」

「そうだったんだ。命令なら仕方ないか」


まるで自分にまで言い聞かせる様に、少女に説明を続ける。

そして、乙女も1人溢す。


「くぅ、鋭い。相変わらず。ああ、もう取り消せない。でも、これもみーちゃんの為」


乙女は唇を噛み締めて下を向く。

目の前の人と顔を合わせられず、落ち込む。

この道が、孤独だと乙女は理解している。頼らない為に仮面を被る。

ただ、目の前の人の為に。全てと戦う為に。

乙女も悪よのう。


ダークヒーロー的な?乙女。

優しき乙女の全てを賭けた戦い。記憶を取り戻すまではこんな感じです。


さて、予定は未定ですが、女神様ことアリシア様の話に脱線します。

勿論そこには黒龍父も出てきますので。

作者としては、外伝に書こうか迷いましたが、長くなりそうなので辞めました。

ですので、タイトル詐欺!と怒らないで欲しいです。

m(*_ _)m

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