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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
七章 継承者
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百五十九話 わがまま

方針が決定したので、少女は司令部に残っていた。

少女の仕事は指示を出すだけなので、騎士達への伝達は、軍団長が代理で行う。

なので一番偉い人は、他の人が居なくなったのを確認して机に突っ伏す。


「はあー。疲れた」


先程の雰囲気は掻き消され、今の姿はワガママな少女そのもの。

とても同一人物とは思えない。それ程までに伸びきっている。まさにぐうたら少女。


しかし、それはやむを得ないのだ。

立場上一番上に任命されているので、嫌でも演者にならなければならない。

自分に自信は無いが、仕事は仕事だと割り切り、部下に情け無い姿は見せられない。

それが上に立つ者の役目だと、少女は考えているからだ。

ただし、残念ながら少女は詰めが甘かった。


「お疲れ様」

「ふぁ!?」


少女が慌てて振り返れば、そこには白龍こと乙女が立っていた。

当然乙女もやる事が無いので、護衛も兼ねて後ろに立ったままだった。乙女は会議が始まる前から、ずっとそこに居たのに忘れられてしまっていた。

少女は全員が去ったものとして油断してしまった結果である。


会議中の頭の中は、逃げ出したい気持ちで一杯だったので、緊張の糸が切れてしまったのだ。

そもそも何故、逃げたかったのかと言えば、白龍様に命令を下すのは神経をガリガリ削っているからである。


また、演技といえども、一度怒鳴ってしまっているのも後ろめたい要素の1つである。

少女の内心では、乙女が黒龍の命令で従っていると思っており、上司として立ててくれていると理解している。

それは間違いでは無いが、微妙にズレている。

実際は、乙女からすれば少女が全てであり、それ以外の命令は聞く気がさらさら無い。


そんな感じの乙女だが、背伸びをしようとしている少女の事が、可愛くて仕方がない。

改めて親友だと認識すれば、手は少女に伸びて行き、撫でてしまうのは仕方の無い事だ。


「偉い偉い」

「あう」


乙女が撫でてあげれば、少女もまんざらでは無く、抵抗する事も無く受け入れてしまう。

そもそもの少女としては、あまり褒められた事が無いので、受け入れざるを得ない。

さらに先程の疲労で、少女の思考能力が停止してしまっているのもある。

赤く火照った少女は、破壊力が抜群で、乙女は益々甘やかしてしまう。


「可愛い。これは駄目だ。世界一可愛い」

「はうぅ」


結局、少女の反応が可愛らしいので、乙女の思考力も落ちてしまって、辺りの空気は甘ったるい雰囲気に侵されてしまった。

それのせいなのか、乙女は遂に我慢が出来ず、少女を抱きしめてしまう。

抱きしめられた少女はと言うと、安心したのかその直後に眠ってしまった。




ある程度の時間が経って、軍団長が総司令官へと、質問に行こうとして司令部に入ると、そこには抱かれて眠る少女の姿があった。


「こ、これは?」


軍団長が問えば、答える乙女。


「ああ、うん。寝ちゃった」

「そ、そうですか」

「用事?」

「いえ。大した事では無いので」

「そう?」

「随分と信頼されているのですね」

「そうかな。だと嬉しいな」


乙女はそう言って、少女の前髪を触りながら微笑む。

その顔は慈愛に満ちており、聖母の如き慈しみを浮かべている。

嘘だとは思えないが、初めて見た時と印象が違いすぎて、レイエンは思わず質問をしていた。


「何故、我らを襲ったのですか?今のあなたからは、敵意が感じられないのが不可解です」

「まあ、うん。そうだよね」

「嘘をついているとは思いませんが」

「えっと、信じてくれるかはわかんないけど、この子も寝てるし答えてあげるよ。でも、内緒にしてね」

「は、はい。黒龍様からの命令とは聞きましたが」


レイエンが情報を出せば、乙女が少し鼻を鳴らしてから答える。


「それは建前。実はね、私とこの子は親友だったの。命令とか関係無く。でも、色々あったんだろうね。まあ、私の勘違い。命令ってのは本当だけど、この子の側に居たい気持ちは、命令とか関係無し」

「信じて良いのですか?」

「うーん。難しいかな。まあ、命令でこの子には逆らえないから、少なくとも裏切る事は無いよ。でもまあ、信頼の証にはならないかもね」

「成る程」

「内緒だよ。この子は勘違いしてると思うけど、確かに殺しかけたから」

「そ、それは!?」

「もう2度とやらない。あの時死ぬほど後悔したもん。良かった。また会えて」


そう言い切った乙女は、変わらず少女を撫で続け、微笑みながら少女の反応を見て楽しんでいる。

大事な話を聴かされ、反応を忘れる軍団長。

この場は暖かな空気が流れ、辺りは静寂に包まれたが、乙女は余韻に浸りながら、ある一言を溢す。


「ありがとね。聞いてくれて。誰かに聞いて貰いたかったんだと思う。少し、スッキリしたよ」

「いえ」

「ねえ?私さ、幸せだよね。こんなに良い子の側に居られるの」

「そうですね。勘違いでしたね」

「うん」


話を聞けば聞くほど、裏切る気が無いのだと思わされる。

もし仮に、演技ならば仕方が無い。そう、思うほど疑いようが無い。

そう思ったレイエンは、2人の時間を邪魔すべきでは無いと考えて、会釈をしてからその場を後にする。




そのまま時間が経って、少女が目覚めたのは夜。その間乙女は寝る事も無く、ひたすら撫で続けていた。


「うぅん?」

「起きた?おはよ」

「ここは?」

「司令部だよ。寝ちゃったからね」

「そう」


記憶は曖昧で、寝ぼけている少女は、いつに無くワガママモード全開であった。


「フユ?」

「ん?なあに?」

「寝床まで連れてって」

「え!?」

「早く。寝足りない」

「あ、うん」


乙女が言われるがままに寝床に連れて行くと、少女は乙女を睨みながらベッドを叩く。

そして続くのは、当然。


「一緒に寝よう」

「ふあ!?」

「むー、早く!」


バシバシとベッドを叩き、頬を膨らませている。

いつもメイド達に無理を言っている少女の、我儘が今回の甘やかしで爆発してしまった。

そして、乙女は断ることも出来ず、言い訳を浮かべながら、すごすごと少女と眠るのだった。

なんだか、2日ぶりとか書いてましたよね?後書きに。3日でしたね。


遂に数も数えられなくなってしまいました。

どうも。あんぽんたんトカゲです。


m(*_ _)m ごめんなさい!!

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