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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
七章 継承者
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百五十七話 隷下

ざわざわと声が周囲に広がる。

騎士達が集まり、全員が一箇所を眺めていた。

視線の集まるところには、銀色の長髪の女性が立っており、少女が呼び掛ける。


「では、お願いします」


少女の言葉に頷いた乙女は、翼を広げて空を飛び、直後に眩く光を放つ。

そこには、白銀の龍が空を舞い、辺り一帯を支配するかの様な存在感。

その巨体はスラリと細く美しい。四肢に加えて、天使の羽を思い浮かべる立派な翼。人の姿で使っていた物よりも圧倒的に大きい。


そう。乙女の真の姿。白龍。

人の理から外れ、最強の生命体として君臨する。

騎士達にその姿を見せて、黒龍の使いである事を証明する為に、態々、皆の前で変身した。


視線を浴びながら、乙女は先程の事を振り返る。




あからさまに喧嘩を売られた。

だからその、つい、調子に乗った。

ほんの少しだけ、私も悪いと思う。

いやまあ、一応、先に攻撃したのは間違い無いから、疑われても仕方ない。

それは分かるけどさ。

つい、ねえ?カチンと来ちゃって。

私より弱い癖に。

あー駄目だ。頭では理解してても、我慢できない。


何してんだろ。私。

それで、怒られちゃった。

アレは本気のやつだ。3回目位の時のやつ。

一度だけ。あれ以来、怒らせない様に誓ったんだよね。

でも、なんて言うか、その。嬉しかった。

ああ。偽物じゃないなって思って。

それに、命令されるのは、えっと、その、あ!

ち、違うからね!?そんな趣味無いから!

いや、うん。

うぅ。格好良かったんだもん。


身体がじんわり熱くなって、従うのは当たり前って思っちゃう。

命令されたい。従いたい。尽くしたい。

怖いけど、幸せ。

これが眷属。でも、昔と変わらないのかも。

ずっと。側に居たいって、願ったから。




数分間の間、龍に変身していたが、騎士達も落ち着いて来たので解除する。

ゆっくりと地上に降り立ち、少女の元へと向かう。

乙女が少女に駆け寄ると、少女がもじもじしている。

遠慮がちに乙女に視線を走らせ、すぐ外す。

なんだろうかと、乙女が思った瞬間に、少女が謝る。



「ご、ごめんなさい。フユ。怒ってしまって」



先程の会議で、イヴが怒鳴ってしまった事を詫びている。

イヴは悪くない。調子に乗った私の方が悪いに決まってる。それに比べて私は。

凄いなあ、イヴは。いつも素直で。

私の方こそ謝りたいよ。



「ううん。私の方こそごめん。それでね、もし、私が悪い時は叱って欲しい。失敗する前に」

「そ、それは」

「お願い。このままだと、いつまで経っても追いつけないから」

「‥‥‥わかりました」

「うん。ありがとう」

「こ、こちらこそ」


互いに謝る少女達。互いに許し合う。

穏やかな空気になれば、少女が躊躇いながら、乙女に話す。


「あ、あの!フユに質問があります」

「ん?」

「龍の姿になっていましたが、羽ばたいてなかったですよね?」

「あ、うん。空を飛ぶのに、翼は無くても良いんだよ」

「え!?」

「まあ、格好良いから」

「そ、そんな理由」


少女は呆れてしまうが、乙女は気にしない。

乙女は形から入るタイプで、割と気分屋である。

気に入らない事があれば、すぐに辞めてしまう所がある。そんな感じの気分屋。

ちょっぴり努力が苦手で、面倒くさがり。

そして、お調子者。

‥‥‥長所は無いかもしれない。

しかし、未だ埋もれているだけ。

乙女自身でさえも、知らない。

それだけ「当たり前」は、見え難いのだ。




全員が乙女の姿を知った事で、その後の会議では、荒れる事は無かった。

レイエン軍団長が謝罪をした事で、乙女も自身を振り返って、謝った。

一同は乙女を信用している。元より、総司令官が認めたので、下々が疑う訳にもいかない。


そうなれば今度は、乙女を怒らせていないかが問題になる。

黒龍様の使いに無礼を働いたとあらば、最大級の罪となる。

しかし、乙女はそこを問う事はしなかった。

段々と冷静になって行った。



こいつらが悪い。


ま、まあ?私もほんの少し悪かったかも?


いや、悪いわ。私が悪い。


ああーどうしよう。私。最低だ。



乙女が、レイエンに謝られた時には、既にこんな感じの、自己嫌悪モードに突入していた。

こうして、一応両方が謝罪して終わった。




そして、その日の夜。


早々に少女は眠ってしまい、司令室に居るのは、乙女とレイエンだけ。

何故この2人が居るのかと言うと、乙女が呼び出したからである。



「オラ、面貸せや」

全く根も葉も無い嘘である。


実際は、少女の事を相談する為に、呼び出した。少女が居ては出来ない話。



「それで、どう言った話ですか?」

「信じて貰えないかもだけど、一応伝えとこうかなって思ってさ」

「はい。その話とは?」

「私は黒龍に命令されて、イヴに従ってるの。だから、あの子の為なら何でもする。私は絶対にイヴを裏切らない」

「成る程」

「信じて貰えないよね」

「いいえ。寧ろ、納得しました。出会った時の雰囲気と違っていましたから」

「それは、その。忘れて。私の勘違いだったの」

「アレは本心ではなかったと?」

「そうね。ずっと探してた。だから焦ってた」

「かつての友人とかですか?」

「‥‥‥そんな資格無い」


苦悶の表情。苦しそうな乙女。

レイエンは察する。そして、理解する。

乙女が裏切る可能性が無い事を。

レイエンは乙女を信用する。同じ者に仕える仲間として、受け入れるのだった。

乙女は結構偏見持ちですね。

そして、やった事を後で後悔する。

そんな乙女ですが、ある長所を持っていますよ。

何でしょうかね?


結構役立つ能力ですよ。いずれ。

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