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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
七章 継承者
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百五十五話 合流

ふわふわと、上空を浮かぶ様に飛んでいる。

現在私は空に浮かんでいた。



「どう?凄いでしょ?」


そう言って、少女に自慢する乙女。


私は抱き抱えられてフユさんに密着している。

フユさんはとても綺麗な人で、そんな人が目の前に居るのでとても緊張している。いや、正確には今の状態が恥ずかしいのかも。

お姫様抱っこ。

安全の為と力説されたので、仕方なく受け入れている。


緊張しているのには他の理由もある。

フユさんが空を飛ぶ為に、使っているある物。

そう。翼。

背中から生えてる真っ白な綺麗な翼。

とても大きく、見るからにふわふわな羽毛。

それのお陰で、おんぶは却下。邪魔になっちゃうから仕方ない。

抱っこ。それなら‥‥‥と現在に至る。


黒龍様の眷属ならば、翼が有っても不思議は無い。寧ろ、あーやっぱりって感じ。

偉大な方の配下なら、同様に偉大。推し量る事は無礼。知る事すらも。

空を飛ぶと言う事は凄い事だ。

私達人間は地上を歩くしかない。



少女が様々な事を考えていると、不安そうに乙女が喋る。


「イヴ?」

「あ!」


思考に耽っていたので、問い掛けられた事を忘れていた。

それに気付き、慌てて答える。


「す、すいません!その、凄いです!」

「えへへ。そう?」

「はい」

「いつでも頼ってね。私、なんでもするから」

「わ、わかりました」



心底嬉しそうなフユさん。

照れてる顔がとても美しい。頬が上気している。


「ちょ、そんな目で見ないで。恥ずかしい」

「ご、ごめんなさい」


見惚れてた。あまりの綺麗さに。

照れた表情も様になってる。

でも、ジーと見られるのは嫌だよね。怒られちゃった。


「ま、まあ。いいけどさ」


怒ってはいないらしい。許してくれた。

とても寛大なフユさん。優しいお姉ちゃんだ。




少女達は雑談を交わしながら、空を泳いで行く。

兵士達と離れてから、1日近く経っている。

とは言え、歩行に追い着くのに、それ程時間は掛からなかった。

少女が集団を見つけて、乙女に伝える。


「あ、いましたね。追いつけました」

「うん。みたいだね。じゃあ、その。話してた通りにお願い」

「はい!お安い御用です」

「ふっ。そんなこと言うキャラだっけ?」



フユさんが吹き出している。

何に対して笑ったのだろうか?

わかんないや。まあ、気にしても仕方ない。



「と、取り敢えず行きましょう」

「あ、そうね。了解」


乙女は翼を畳んで、ゆっくりと地上に落下する。地面に近付けば、着地の瞬間止まってから、地に足を着ける。

当然目立っていて、囲まれるものの、すぐには斬り込んでこない。


乙女はしゃがみ、少女を降ろしてあげている。

事態の理解に追い付けない騎士達は、少女達を眺めて沈黙する者も居れば、ざわざわと話す者も居る。

そして、この事態に割り込む者が居た。

それは、面白おじさんこと、レイエン軍団長である。


「イヴ様!」


大きな声で少女を呼びながら駆け寄る。

マイペースな少女は、面白おじさんに挨拶をする。無邪気な笑顔で。


「ただいま」

「お、おお?おかえりなさいませ!」


一瞬戸惑いかけたが、流石の軍人。

疑問あれども、挨拶を欠かせる訳にはいかないらしい。


「ご無事で何よりです!ですが、これは?」


疑問があるのだろう。少女を見た後、乙女に視線を走らせる。

少女も、おじさんの疑問には理解しているので答える。


「友達になった」

「成る程!?」


説明されたが全くもって理解出来ない。

当たり前である。

敵同士だった筈だ。それなのに、2人で帰って来た。

未だ完成してない情報。少女は補足する。


「フユさんは偉い人。でも、私の部下」


説明下手な少女。呆れる乙女。

事態は混沌に呑まれかけていたが、乙女が代わりに説明を始める。


「私は黒龍様の使いのフユ。命あって、この娘に従う事になった。なので敵じゃないです」

「そ、そう。レイエンさん、わかった?」

「な、成る程。心得ました」


少女が命令に近い指示を下す。

要は、乙女に手を出すなと言う事。

少女の言う様に、黒龍様の使いならば少女ですら手が出せない相手。

簡単に言ってくれるが、気を揉む相手が増えたと言う事。


そもそも信用は出来ない。

本当の事を言っているのかもしれないが、少女が洗脳されている可能性もある。

凡そ、乙女は人の域を超えているので、嘘でも真でも変わりは無い。逆らう事が不可能だから。

しかし、少女が人質に取られているのであれば、逆らう云々の前の話である。

勝てるかどうかでは無く、勝負に挑む事すら出来ない。


レイエンは悩む。考え過ぎて、今まで苦労し続けて来た。

悩みの種が増えてしまった。乙女という名の種。



レイエンは、少女をとても優秀な人だと思っている。将来を想い、なんとしてでも守らねばと思う程に。

だからこそ、苦労が絶えない。程々と言う言葉を知らないから。


それは必然かもしれない。

レイエンに与えられた上司は、見るからに無邪気な子供。しかして、優秀。考えていない様で、全てを理解している。そんな少女。


レイエンは振り返る。貴族とは何かを。



貴族と言うものは、ガサツで理不尽な人ばかり。少なくともそう思っていた。

レイエンも貴族であるが、貴族の前に、軍人である事が誉れに感じている。

だからこそ、他の貴族からは影で罵られている。知っているが気にはしない。

棲む世界が違うから。


ところがどうだろう。目の前に居る公爵は、殆ど戦争に縁の無さそうな少女。

陛下の命令には逆らえないので、嫌々来たものだと思っていた。

幼い公爵に、箔をつける為の戦争。

軍議の席で見た印象は、可愛らしい令嬢。

その印象が逆に、子守を押し付ける貧乏くじだと思ってしまった。


騎士達に興味が無いだろうと思っていた。

なのに、急に訪ねたいと言われ、騎士の宿舎を案内した。

一切の偏見を持たず、それどころか労う事すら厭わない。

この方ならば、ついて行きたい。そんな、理想の上司を得た。


騎士達を嫌う貴族は多い。

国を護る同胞なのに。

陛下から与えられた役職。とても光栄だと当時は思った。

まだ、捨てたものでは無いかもしれない。



レイエンは少し笑う。

そして、少女の命令を飲み込むのだった。

竜聖国の中でも、レイエンさんは軍事関係では優秀な方ですね。

なので軍事に関しての実務は、ほぼ一任されてます。


王様としては、まあ、任せればいいでしょ。的な感じでイヴを預けてます。

それのせいで、過去に不信感が溜まったのですけどね。

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