百五十四話 お姉ちゃん
自己紹介を終えた少女達。他にも色々な事を話した。
その結果、少女が狙われたのは、ただの勘違いだと分かった。
そして、現在。
少女と乙女は2人取り残されていた。
騎士達を撤退させたので、迷子になってしまった。
出来れば、騎士達と合流したいと、少女は思っている。
現在地はなんとなく理解しているが、女性の2人旅は少し危険であり、安否の報告もしないといけない。
そう、考えていると、乙女が口を開く。
「あの、イヴ?」
「はい?」
「質問。良いかな?」
「良いですよ。なんでしょうか?」
「黒龍について知ってる事はある?」
知識の有無の確認かな?疑われてるのだと思う。
ここで「知りません!てへぺろ」なんて言ったら怒られそう。
要は監視兼、お手伝いって事だろうから、滅多な事を言ったら怒られる。
あれ?でも気になる事がある。
フユさんの立場がよく分からない。
まあ、黒龍様について詮索する訳にもいかない。なので、これは置いておこう。
それよりも、質問に答えないとね。
私にとっての、黒龍様のイメージを答えるべきなのかな?
‥‥‥不勉強で怒られたりしないだろうか?
「お会いした事はありませんが、偉大な方だと教わっています」
「あー、うん。予想通りかな」
「すみません」
期待していた答えでは無いらしい。
怒られた訳では無いけど、落胆された気がする。
思わず落ち込んでしまう。
「あ!違うの。イヴが気にする事は無いの。個人的な話だから」
「え?そうなんですか?」
「うん。さっきも言ったけど、あなたに従う様に言われてるの。それはもう、言葉通り全て」
「えっと。では失礼ですが、質問しても良いですか?」
私がそう言えば、頷くフユさん。
なので、私の気になった事を質問する。
怒られるかもしれないが、どうしても気になったのと、なんでもと言われ、自制を振り切ってしまった。
「フユさんと黒龍様の関係って、どんな感じなんですか?」
「え!?あ、えっと。眷属、かな?友達、とは言えないか」
「眷属って事は、血の繋がりがあるのですね」
「あー、うん。そうだね。まあ、逆らえない関係かな?」
「な、成る程」
凄い。まさか、答えてくれるとは。
つまり、黒龍様とフユさんは、家族よりも強い繋がりらしい。眷属てそんな意味だった気がする。絶対的な上下が存在するとかとも。
少なくとも、黒龍様の次に偉い方。
黒龍様を呼び捨てにしていた理由も、なんとなく理解した。
上下があるとは言え、きっと気安い関係なのだろうね。
あれ?でも何で、私に従うんだろうか?
やっぱり、そこがよくわからない。
1人考察していると、フユさんが喋る。
「だから、イヴ?私に敬語は使わないで欲しい」
「え?で、ですが、黒龍様の眷属である、フユさんにその様な。寧ろ、様を付けた方が良い気がして来ました」
「え!?それは駄目!それだと距離を感じるし。あっ!そうだ。私を呼び捨てにして呼んで!これは黒龍の命令なんだからね!?」
「め、命令なんですか!?」
「そ、そうだよ!し、従わないと怒られるから」
なんと、怒られるらしい。
黒龍様の命令は絶対で、フユさんを呼び捨てにしないと、叱られるとの事。
それならば仕方がない。呼び捨てにする他無い。
黒龍様の指示に従わなければ、罪に問われかねない程重い。
そもそも竜聖国では、黒龍様が第一に法律が組まれている。例え、王家であろうともそこは揺るがない。
命令なので、少女は渋々、乙女の言葉を受け入れる。
嫌では無いが、遠慮がちに呑み込む。
断れない事も理解したので、そうする他ない。
「わかりました。では、フユ」
「そう!そんな感じで。遠慮したら駄目だからね?命令なんだから」
「あ、と、なら。国に帰りたいのですが、どうしましょう?」
「あーうん。ひとっ飛びだよ?私。空飛べるから」
「え?」
「案内してくれたら帰れるよ?」
なんと空を飛べるらしい。
強くて綺麗な上に空までも。最早、欠点が見つからない。
こんな凄い人を、私に付けてくれるなんて。
王様といい、黒龍様といい、感謝してもしきれない。
何も返せていないし、黒龍様に至っては、面識すら無いのに。
どうして、私にそこまでしてくれるんだろう?
私みたいな年端も行かない未熟者に、これだけ与えてくれるなんて。
応えないといけない。期待に。いや、それ以上で答えられる様に、努力をしよう。
ま、まあ、今回はフユさんに助けて貰おう。
し、仕方ないじゃん。見るからに、必要無いって言ったら落ち込みそうな顔してるもん。
うん。理解した。フユさんは良い人。
だって、頼られるのが好きみたいなんだよ?
そんな人が、悪い人な訳が無い。
初めて会った時も思ったけどね。
少女は言い訳をして、乙女に願いを伝える。
「では、騎士の皆様に合流したいです。出来ますか?」
「うん。オッケー。お姉さんに任せて」
快く了承する乙女。
そして、さりげなくお姉ちゃんアピールもする。
ちゃっかりしている所も乙女らしい。
あれ?いつの間にかフユさんがお姉さんになってしまった。
まあでも、いっか。
優しそうだし、こんな綺麗なお姉ちゃんなら大歓迎。
「お姉ちゃん。宜しくね」
「グフッ」
乙女は悶絶する。
たったの一撃で、乙女は簡単にやられてしまう。それは、今も昔も変わらない。
乙女は確かな絆を思い出した。
辛い日々の果て、漸く大切な親友に出会えた。
その喜びは、後悔を隠しながら。
例え、どうあっても少女に勝てない乙女。
少女には、対乙女の特攻効果があります。
眷属にならなくても、乙女は、少女に尽くす事を厭わない程べったりで、もう既に好感度がMAXです。
今後、好感度が減る事はありません。
以上。乙女の分析結果でした。