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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
六章 運命の邂逅
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百五十一話 龍と神の戦い【前編】

勝負の天秤は乙女の方に傾いていた。

雪が舞っている。

吹雪が巻き起こっていて、乙女の有利な環境である。

これは、狙っていたわけではなく、戦いの最中自然とこうなった。


黒龍に近寄られない様に、一定の距離を維持しつつ、氷の弾丸を飛ばして行く。

黒龍は、それらを回避するだけで精一杯の様子で、向こうは遠距離魔法が使えないのだろう。一方的に攻撃出来ている。



油断は出来ない。

まだ、私の攻撃に慣れていないだけで、いずれ反撃に転じるのは間違いない。

この猛吹雪も、効いていないのかもしれない。

だからこそ、私は焦っていた。

かすり傷は負わせているものの、逆に言えば、その程度だと言う事。

私には最強の盾がある。でも使わないに越した事は無い。

だから、早く終わって。



乙女が雑念に気を取られた瞬間。

少女が弾幕の合間をくぐり抜けて肉薄する。



マズい。


そう、思った時には遅い。黒龍が私の盾を殴る。

内心かなり焦ったが、障壁は攻撃の無力化に成功する。そして、反撃をしようかと思った時には、距離を取られてしまった。



「どう、しようか?」


少女が何かに向かって問い掛ける。

答える者は居ないので、代わりに私が答えてあげる。


「時間の無駄だよ。だからさ?大人しくしてくれる?」

「本当にそうかな?」

「あなたの攻撃は無駄。今、理解出来たでしょう?」



そう。私の言った通り、黒龍の攻撃は無駄。

私も、攻撃を当てれてないけれど、相手は無傷ではない。

だから、不安を煽る為に、丁寧に言い聞かせている。



「勝てないって理解してても、負ける訳にはいかないの。それに、まだ、わからないよ?」

「そう?私が油断しなければ近寄る事さえ無理な癖に?」

「次は本気で行く。肉体強化!」


少女は言葉を宣言して、乙女に詰め寄る。

咄嗟に乙女は迎撃したが、氷の槍は、小さな的に当たる事は無い。

乙女は内心焦っている。魔力が尽きる心配はしていないが、どれだけ揺さぶろうとも効果が見られない。

まるで、心が見透かされている様で、苛立ちが募る。



また、当たらない。

なら、また連射するだけ。

そうだ、いい事を考えた。わざと隙を作る。

そして、目の前まで近寄らせて、相手の急所を射抜く。

あいつが距離を取ったのは、近すぎると、私の攻撃を躱せないから。

あいつの攻撃が、無駄なのが解って良かった。安心して、待ち構えられる。



乙女の暴風雪とも言える攻撃は、少しだけ和らぐ。

少女は、それを勝機と見据えたのか、再度肉薄してしまう。

強化された拳は、障壁を砕く事に成功した。

しかし、乙女の盾は分厚く、幾重にも障壁を重ねていた。


少女は確かに、手応えを感じた。壁を砕いた感触。しかし、相手は無傷。その時に理解した。届いていなかったと。

そして、理解が遅かった。


小指の爪程の弾丸が、少女の胸元を貫く。

絶望と悟った様な声音が、少女の口から漏れる。


「あ、」


弾丸の勢いに引っ張られて、少女は仰向けに倒れる。

胸から血が流れ、瞳が輝きを失くしていた。



危なかった。まさか、本当に砕かれるとは。

念の為、障壁の枚数を増やしておいて良かった。あのままだと、負けてたかも。

いや、それよりも。やってしまった。



乙女は少女を目で捉えて、自身の起こした結果を噛み締める。



あんなに小さい子を殺してしまった。

せめて、その綺麗な顔だけは傷をつけたくない。

ごめんね。

せめて、あなたが黒龍では無かったら良かったのに。



パクパクと口を動かしている女の子。

小さな声を発していて、それが気になったので、耳を傾ける。


「‥‥‥‥さい。アイちゃん」


最後だけ聴こえた。

その聴こえた単語は、乙女の中で、光よりも早く駆け巡る。


「え?」


思わず疑問が浮かぶ。



今、なんて?

アイちゃん?

え?嘘?

いや、まさか?

あの子は私をアイちゃんとは呼ばない。

そう。だから間違い。‥‥‥そんな筈は無い。



乙女は否定する。

しかし、不安は消えない。

否定しながらも、乙女は少女に近付く。


「ごめんなさい、アイちゃん。約束守れなかった」



違う。違う筈。

でもなんで?この不安は何?

違うという保証も無い。いや、でも。

あ、まだ、間に合う。



乙女は、少女を膝枕で抱き抱え、一度も使った事の無い魔法を発動する。

青色の輝きは、黒髪の少女を包む。

しかし、血が止まる事は無かった。


「なん、で?効かないの??」


魔法を発動しても、少女の傷は癒えない。

乙女は涙を流す。取り消せないと知ると、色々と調べないといけなかった事を思い出す。



瞳の色が青色だった。片方だけ。でも、あり得る。

見た目は子ども。でも、女の子。可能性はある。


情報のいくつかは、合っている。女神様の結婚した相手が、黒龍では無いとは、誰も言っていない。

なのに、この子が親友かどうかを確かめる事すらせずに、命を奪ってしまった。


確かに違うかもしれない。

だが、違わないとも限らない。

もし。違わなかったら?



乙女は理解してしまう。重大なミスをしてしまったかもしれない。

それを確かめたいと、後悔しても遅く、涙は流れ続ける。


少女は目を閉じる。

乙女は嘆く。


そして、それに呼応してなのか、赤色の稲妻が少女から発せられる。

死んだと思しき、黒髪の少女。しかし、少女は起き上がる。

元の少女からは、発することの無い筈の雰囲気を纏いながら。

すみません。

一話で済ませたかったです。

でも書いてて思いました。あ、無理だ。(絶望)

というわけで、後編に続きます。

勝敗は乙女ちゃんの勝ち!


敗北者トカゲは次話も頑張ります。

あ、あと、次話は少しキツいことになるかも。

先に謝っておきます。m(*_ _)m

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