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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
六章 運命の邂逅
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百四十五話 妄想

足早に街を飛び出す乙女達。

商機が訪れ、逃すまいと行動に移す。物を売ろうにも、その物が無くなってしまう。

乙女は折角なので、街でショッピング等をしたかったが、他の町街へ出発すると決まれば、断る事は出来ない。


なので現在は、お馴染みの馬車に乗せられ、ガタゴトと揺れている。

前回と違って、クッションを用意されており、その事実が、乙女を仲間だと認めてくれた様な気がして、思わず頬が緩む。


「えへへ」


ニマニマと笑い、花も恥じらう美しさ。年齢の割には、若干幼く映る無邪気な笑顔。


乙女を見る者はいないが、感情を発露すれば魔力が漏れ出し始め、近隣の魔物は異変を感じて逃げ出す。

乙女にそんなつもりは無かったが、奇跡的に魔物は近寄らない。魔物は魔力に敏感で、格上だと判断したら近寄らないのは、一種の本能みたいな物だ。

かの少女も、膨大な魔力を備えているので、気配と魔力を隠す事で、なんとか人の世界に溶け込む事が出来ている。

乙女は、魔力を隠す術を会得していないので、一部の人には気付かれてしまうだろう。

結果的にではあるが、魔物が襲って来る事は無く、道中は馬車を安全に次の町へと運ぶ。






およそ半日を掛けて乙女と店主は町に着いた。その足で早速、商業区へ向かう。


レルクさんが商品を眺めながら、商店の人と交渉を始めてしまった。

私に出来る事は無いので、見て勉強をする事にした。

会話の流れを理解したり、粗方の品物の値段を覚える為に観察していると、ふとある本が気になって手に取る。


ソレは魔導書と書いてあった。

魔導書とは名ばかりの、魔法について書いてある物だった。パラパラと捲り、内容を簡単に読み取る。

そこには、あらゆる魔法についての対策や、魔法の効果や種類が網羅してある。

その中の、風魔法を使った飛行という項目に目が走る。


「何々?四肢から魔法を制御する事で、空を飛ぶ事が可能。大魔導師エトリアの秘術とされており、生前、魔法の知識を残して、亡くなった魔法の英雄」


思わず口から声が漏れてしまう。



英雄について興味は湧かないが、飛行に関しては気になる。

この世界で、ただ1人の親友を見つけるのは至難の業。そもそも生きてるかも判らないけど、どちらにしても機動力は欲しい。

今更だけど、情報も殆ど持ってない。あの子についてどころか、女神様の情報すらも。


今持ってる情報を整理しよう。

あの子は女神様の娘。これは女神様の情報だから確信して良い。

銀髪碧眼と言う情報も、女神様を見た感じと、伝承が合致しているから、ほぼ正しい。

髪か目のどちらかは、最低でも合ってると思うから、それらを見かけたら質問してみよう。

でも、青色の瞳の人はかなり多い。銀髪は全く見ないけど、目の色に関しては5割は居ると思う。


他には確か、女神様が亡くなったのは13年前だから、最低でも13歳だね。でもさあ、女神様の情報に、子どもを産んだ記録は無いんだよね。

色々な国に、女神教が存在するらしいのに、娘が居るのなら、祭り上げられてても不思議は無い。


あ、そうそう。娘って言ったのだから女の子だよね。まあ、男だったら色々と困るよ。だって、女友達が久しぶりに再会したら、

「男の子になってました!」

は焦るよね。

待てよ?ソレはソレでアリかも。これなら後ろめたい事もない。さらに、年上の可能性が高いから、リードしてもらってそれから。

‥‥‥そういう関係に。

って、駄目駄目!あの子と私はそういうのじゃないもん。


乙女は真っ赤になりながら、脳内をかき混ぜている。

整理すると言っておきながらも、余計散らかるのは乙女らしい事だ。思春期特有のごちゃ混ぜであり、未だ自身の気持ちに素直になれない乙女。

そんな乙女は、深呼吸をして冷静を取り戻す。


落ち着け、落ち着け。

そうそう。情報が無いのは仕方ないけど、空を飛ぶ方法を探そう。そして最悪、手当たり次第で見つけよう。

風魔法で空を飛ぶのは、浮き上がっている感覚かな?

でも別に、風である必要性無くない?

要は自分の体重よりも強い力を、空中に向かって出せば良いんだよね?

例えば、空中から魔力で引っ張ってもらう様な感じで。アレ?それって結構危ない気がする。流石に千切れるなんて事にはならないと思うけど、身体を引っ張られるのは、なんか嫌かも。

うーん。あ!そうだ。障壁を纏って引っ張るのはどうかな?

四角の箱の中に居て、ソレを空中から引っ張る。これなら飛べる気がする。

物は試しでやってみよう。まず、前提の引っ張り上げからかな。



乙女は魔力を行使して、誰にも気付かれない様に、ほんの少しだけ身体を浮かせる事に成功する。



いけた!これで遂に私も、魔法少女だ!



空を飛ぶというのは間違いの、どちらかと言うと、立体機動が正しい。全方向に出力する事が可能な、およそ人外の魔法。

それ程難しい魔法では無く、魔力の制御が得意な者ならば、容易に習得可能な魔法だ。

しかし、思いつく者は居らず、空を飛ぶ事に憧れはするものの、不可能だと断じる者が大半な為、この魔法は知られていないのだ。

初めて空を飛んだ者は、かの英雄エトリアのみとされており、風魔法を極めねばならないとされていたのも大きい。

小さな閃きから、乙女は新たな魔法を会得する。


そして、乙女は運命に向かって羽ばたく。

イカロスが翼を得たかの様に、勇気を胸に。

空を飛ぶ方法は幾つかありますが、大別すると二つになります。


乙女の様に、引く力で飛ぶ方法。ワイヤーアクション的な感じ。空気中の魔力に力を加えて、吊ってます。魔法の飛行はこれが近いです。


英雄の様に、押す力で飛ぶ方法。単純に魔力をエネルギーとして、反動で飛んでます。翼とかで飛ぶならこちらです。


乙女の思考の矛盾に違和感を覚えたと思いますが、あれは乙女が勘違いをしています。同じように空を飛びますが、原理は正反対です。

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