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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
六章 運命の邂逅
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百四十二話 初めての仲間

厳しい寒さは終わり、少しずつ過ごしやすくなってきた頃。

乙女は、現在男性と共に街を歩いていた。

この街は、前居た町よりも大きく、かなり栄えている。例えるならば、田舎から都会へと上京した様なもの。

なので、乙女は人目も憚らずに、辺りをキョロキョロと見渡している。


何故、乙女が街を歩いているのかと言えば、散策も兼ねているが、乙女が働く商店の顧客への紹介が今回の目的だ。

商店の主な取引は、他の商会への売買であったりと、業者向けが大きな割合を占めている。

住民に物を売ることもあるが、それ程大きな儲けは無く、どちらかと言えばイメージアップを目的にしている。


商売ではあるが、危険な行商をこなしているので、どちらかと言うと物流と言う方が正しい。

少なくとも、重要な一手を担っているので、食いっ逸れる事はない。

他にも同じ様な仕事をする者はいるが、危険もあるのでこの仕事を選ぶ者は少ない。

まあ、この仕事を選ぶ者は、選べなかった者と言われているのだが。


一応、大事な仕事なのは間違い無いので、他の商売人から見下される事はあっても、嫌われる事はほぼ無い。

縁の下にいる者は、どうしても低く見られがちなのだ。


だが、危険がある代わりに、大きなリターンがある事もある。

そう。例えば、何かトラブルがあって、町が封鎖されたとする。

すると、物を届ける事で、感謝されて評価が上がる。

さらに、物価を跳ね上げても、文句も言われずに儲けることが出来る。

あくまで、例えの話であるが、それだけリターンが大きいかもしれないと言う事だ。



そんな感じの内容の話を、男性は熱く語りながら、乙女を連れて歩く。

そして、辿り着いたのは一際大きな建物で、店主の男性曰く、この街の最大の商会らしい。

男性は、受付の人に話し掛けてから、どうやら取り次ぎをして貰っているらしい。

伝令?的な人が、誰かを呼びに行ってしまった。

私達は指示により、待たされている。

少し時間が経ってから、中年の、いかにも豪快で巨漢な男性が歩いて来た。

そして、発する声は姿に合った声だった。

まさに、雷鳴轟く大声。


「ガッハッハ!久しいな兄弟!」

「お久しぶりです、バートンさん。先日戻りましたが、用があって来ました」

「相変わらず堅苦しいな!その子娘か?」


大声も相まって、怒っているのかわからない。

そんな感じなのに、ジロリと睨まれる様に見られてしまって私の体がすくむ。


「失礼しました。先日雇った見込みのある者です」

「レルクとの仲だ、気にはせんがな!しかし、見込みか?」

「はい。教育を受けているみたいで、商人としての計算は、恐らく私より優れています」

「ほう!?それは素晴らしいな。それでわざわざ、来たのか」

「そうですね」

「成る程な!よし。娘よ!名はなんと言う?」


唐突に、巨漢に問いかけられて慌ててしまう。

だが、紹介だと事前に聞いては居たので、一応答える事は出来た。


「は、はい!フユって言います」


すると、私の反応を見た巨漢の人は、少し声を小さくしながら、出来る限りの優しさを出して、私に話しかけてくれた。


「おっと?すまん。怖がらせたか?」

「あ、いえ!」


見透かされてしまったが、私は否定をしておく。

すると、レルク?さんが、フォロー?してくれる。


「師匠は声が大きいですからね」

「なにい!?全く。いつからこんなに生意気になったんだか」

「師匠のお陰ですかね?」


仲悪く見えるが、お互いが笑いながら、冗談を言い合っている。

少なくとも、レルクさんは巨漢の人を尊敬している。そんな感じの眼差し。

巨漢の人はと言うと、馬鹿にする様な目では無く、対等に扱おうとする感じ。

間違いなくどちらとも優しいのがわかる。



あぁ、師弟だなって思った。

よく似た2人で、まるで親子。信頼の形。

羨ましく思う。

そう。私に無かった、誰か、もしくは何かへの信頼。無くしてしまった。



乙女は思考に耽っていた。

音は拾い忘れていたが、ハッとして意識を取り戻すと、声が聞こえてきた。


「‥‥‥と思っていたんです。しかし、フユさんは、Cランクの冒険者らしいのです」

「なに?それは、ん?銀髪!?」

「師匠?どうかしましたか」

「いや?隣の町でな?銀嶺と呼ばれた冒険者の噂が、凄い事になっているらしいんだが」

「そ、そうなんですか?」

「たった1人で、町に攻め寄せた魔物の群れを、殲滅したとかって聞いたぞ?」


その言葉を聞いて、私は思わず身体が強張ってしまう。

この街でも噂になっているらしい。

いや、まだ私とは限らない。


乙女は希望に縋るも、次の一言で敢えなく崩れ去る。


「銀髪碧眼だから間違い無さそうだな。噂通りだ」

「フユさん。そうだったんですか」


レルクさんに問い詰められ、誤魔化しきれなくなってしまった。

助けてくれた人に、嘘を吐く訳にはいかない。

心臓が煩い。拒絶されるのが怖い。

でも、また逃げるの?


‥‥‥それは嫌。次こそは頑張るんだ。



そして、掠れ掠れの小声で乙女は答える。


「多分」

「そうだったのか」


無機質な音が耳に届く。

乙女の識別能力が、エラーを起こしてしまい、感情を読み取る事が出来なかった故である。

だが、続く声は乙女の機械を動かす言葉だった。


「凄い人なんだね。でも、俺は気にしないさ。少なくとも、特別扱いはしない。対等な仲間だからね」


初めて、乙女は対等扱いをされる。

かつての世界では劣等感を。

今生では、羨望という名の腫れ物扱い。

持てど、持たざれど、どちらにしても後悔は絶えない。

普通の傲慢な人ならば、少し思う事があるだろう。

だが、乙女にとっての対等は、他の何にも代え難い大切なもの。


親友も仲間も同じ物。

乙女は今生で、初めての仲間を得る事になる。

ただ、乙女は対等な人が欲しかったのだ。

昔の記憶と向き合う為に。

申し訳ありません。m(*_ _)m


更新頻度が落ちてしまっています。

出来る限り頑張っているのですが、あまり時間が取れず。

読んでくれている皆様の為にも、時間を見つけては書いているのですが、本当に申し訳ないです。


あとは、過去の話とかも修正したいんですが、中々難しいですね。


‥‥‥身を粉にして頑張ります。

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