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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
六章 運命の邂逅
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百三十二話 召集

乙女の心が、ゆっくりと快方に向かっていた頃である。


お店で雑談、もとい接客をしていた。

すると、複数の兵士達が、お肉屋に来た。

その瞬間、乙女は悟った。


ああ、遂に来たのか。私を、裁きに。

理不尽だよ。いくらなんでも。

正当防衛は認められないんだろうな。

なら仕方ない。私も、簡単には死ねない。やるべき事がある。

だから、可能な限り抵抗しないとね。


乙女が、考えていると、1人の強そうな人が入って来た。

その人は、私を、視認してから言い放つ。


「お前か。貴族に魔法を使ったのは」


問われた私は、身構える。

でも、少し異変を感じた。

私を、捕らえる為なら、何故、全員で入って来なかったのか。


半ば諦めていた乙女は、冷静に考え始める。

普段ならば、気付かない違和感も察知した。

そして、違和感の正体を、男性が話し始める。


「ああ、俺たちが、罪に問うつもりはない。一応だがな。グナ婆を知っているな?」

「え?」


急に問われた乙女は、咄嗟に、考え始める。


誰?グナバーさん?

ん?グナ婆さん?どっち??

いや、そもそも誰かわからない。


悩んでいると、強そうな人が、説明してくれる。


「ギルドマスターの事だ。これならわかるか?」

「え、あ、はい。グナ婆って言うんだね」

「知らなかったのか。まあ、どうでも良い事ではあるがな」

「えっと、それで?」

「細かい説明は後だ。来て貰う。異論は無いな?」


その、強そうな人は、強引に連れて行こうとする。

乙女は、仕事中だが、断れそうも無い。

抵抗しても良いが、そもそも敵意は無さそうだ。


恐らく、ギルド関係の仕事なのかな。

確か、最初に説明された。

召集が掛かる事がある。そして、それに応じるのは、義務だって言われた気がする。

それならば、仕方ない。


乙女は、言われた通りについて行く。

ギルドに辿り着けば、グナ婆こと、老婆が居た。

建物の中には、大勢人が居て、私は、ほぼ全員に見られている。

そして、グナ婆に話し掛ける、さっきの強そうな人。


「グナ婆、連れて来たぞ」

「おうおう、久しいね。フユちゃんや」

「久しいって、昨日ぶりですよ」

「おや?そうかね。年寄りは物忘れが多くてな?」

「嘘だな。グナ婆が惚ける事は、まず有り得ん」

「ヒッヒッヒ。まあ、なんでも良いさ。さて、フユちゃん。単刀直入に言う。あんたは女神様かい?」


唐突に言われて、私は焦る。

何故バレたのか。魔法を使ったからかな?

取り敢えず、否定しとこう。

女神だって知られて、祀られるのだけは、勘弁願いたい。


「違います」

「ふーん?否定が早いね。違うならば、完全否定は出来ない筈だがね。違う確信があるのか、それとも」

「う、ぐ」

「まあ、どっちでも良いさね。コレを使うからね」


そう言って、グナ婆が取り出したのは、現代の物で例えると、タブレット端末の様な物で、薄く透明な、平らな板である。

ソレを、私の前でかざして、まるで、スキャンをするかの様に、動かしている。


不味いかもしれない。

万が一にも、この変な道具で、私が女神だとバレたらどうなるか。

間違い無く、面倒事になる。

お願いします。神様。見逃して。


乙女は、祈る。神頼みだ。


「やはり」


グナ婆は、予想通りだと、言わんばかりの声音で呟く。

それは、乙女にとって、望まない言葉である。

苦い表情の乙女に、グナ婆は言葉を告げる。


「フユちゃん。お願いがある。この町に、大規模な魔物の軍勢が侵攻しているんだ」


とんでもない事を、言っているグナ婆。

緊急事態らしい。

お願いとは、なんだろうか。


乙女が、続きが気になったタイミングで、グナ婆は続ける。


「町の防衛に、力を貸して欲しい」


そう言われた乙女は、考え始める。

助けてくれ、と言う事かな。

そんなの‥‥‥あれ?どうでも良い気がする。

なんで私が?

助ける事が、あの女神様にとって、人々を、導く事に繋がるのかな。

でも、私は、そもそもの話だけど、あの子以外どうでも良い。

この町の人に、私は、何をされた?

今更、都合が良すぎると思うんだけど。


乙女は、すぐに、返事を出す事が出来ずにいた。

しかし、たった1人。そう、ただの1人。お世話になった人が、居た事を思い出す。

誰かによく似た、不器用な人。

困っていた私を、助けてくれた人。

店主さんが、死ぬのは少し悲しい。

仕方ないか。

まあ、店主さんの為に、頑張るか。


乙女は、答える。一応、頷きながら。


「わかった。私の、やるべき事を教えて」

「ああ、助かる。フユちゃんは、何が得意なんだい?」

「魔法かな。氷の魔法が使える」

「初めて聞く魔法だね。うん。斥候の情報によると、約1週間後に、魔物が到達するらしい」

「連携は?」

「好きにするといい。元々、冒険者は助け合いが下手なんだ」

「そう。バカだね」

「ああ。この仕事は、馬鹿しかいないのさ」


乙女は、指令を聞いてから、走って、借り部屋へと帰る。

別に、急ぐ必要は無い。

動いていないと、落ち着かないからだ。

緊張している訳では無い。

ただ、乙女は、考える事よりも、動く事の方が好きなのだ。


そして、魔法の練習を始める。

意味があるかは、分かってはいない。

ただ、ひたすらに、戦いの準備をする為に。


この話は、百二十七話からの続きです。

もっと言うと、今の章は乙女が、少女に出会う迄の話です。

追憶は、過去の話の、さらに過去と言う事になります。

分かり辛くて申し訳ないです。


あと、ついでに乙女の決戦は、章の終わり頃になります。


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