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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
五章 対なる者
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百二十五話 軍事

ある日の事。


現在は昼である。

少女は軍議に参加している。

今回は、文字通りの軍議である。

竜聖国は、西方の国との仲が、非常に悪い。

そして、今回の議会の議題は、それについてである。


前回と同様、リアーナ王妃様が喋っているので、耳を傾ける。


「それでは、この度、レングラム王国に、宣戦布告を仕掛けようと思います。陛下の決定でありますが、疑問や否定等、ありましたら、何なりと発言を許可します」


殆どの人は、周りを見回したりして、様子を窺っている。

しかし、王の決定ならばと、逆らう者は、居なさそうな雰囲気。



私も、少しだけ調べた。

我らが、龍神様を敵と見做し、正義を主張しているらしい。

それは、恐らく建前だが、時折、小競り合いが発生している。

私達の、国としては厄介極まり無いが、毎度の事で鬱陶しいので、少しでも攻撃して黙らせたいのだろう。

竜聖国に住む全ての人間は、黒龍様を敬い、敵対者は、国の敵と判断する。

だからこそ、否定意見は無い。

およそ、全員が頷いている。


そして、話は進み、次の議題になる。

正確には、それの延長線である。


「否定が無いので、次に移ります。では、此度の戦の総責任者の任命です。イヴ様。総司令官の任、ご了承頂けますでしょうか?」


リアーナ王妃様が私を見つめている。



イヴ様?って私の名前だよね。

え?私?え?

そんなまさか。

‥‥‥嘘ですよね?


私は、動揺してしまう。

全員の視線が集められ、困惑も混ざっている気もする。



辺りは静かであり、私も、固まっている。

そして、静寂を切り裂く、王妃様の声。


「イヴ様?」

「はえ?」



思わず、変な声が出た。

それはそうだよ。

初陣で、総司令官て何よ?

兵士についての勉強も、まだ出来ていない。

そもそも、信頼されてないと思うし。


は!?


それよりも早く返事しなきゃ!

拒否なんて、出来る訳ないもんね。


はあ。



「はい。謹んでお受け致します!」

「ええ。宜しくお願い致します」



決定してしまったよ。

確かに、仕事は必要だと思ってたよ?

でも、いきなりこんな大役。荷が重いよ。

ラーナちゃんも知ってたんだろうか?



少女は、そう思い、王女様を見る。


なんと王女様は、とても笑顔である。



あぁ、知ってたんだね。

なんで止めてくれなかったんだろう。

うぅ、胃が痛い。



結局、その内容が少女にとって、とても重すぎて、以降の内容は頭に入っていない。

実際、それ以上の話題は無く、役職の決定を、追って決定しただけである。


少女は悩み、屋敷へと帰る。






次の日を迎え、少女は出掛けている。

まず、各部下への交流を図らなければならない。

出陣は1週間後なので、それまでには、様々な勉強をしておかねばならない。

そして、それが最も手っ取り早いのが、現役の人に聞く事である。

交流を兼ねた、勉強会みたいなものである。



そして、今日会うのは、軍団長である。

私の、1つ下の役職になる。

とは言え、情報を調べた結果、相当長い期間を、軍団長として務めているらしい。



とても緊張する。

私みたいな、子供でかつ、戦争経験の無い者に、優しいとは思えない。

出来るだけ、怖くない人でお願いします。


少女は祈る。神に。

実質、自分自身に。


そして、約束の場所に着けば、1人の鎧を着ている人が居た。

そこは、騎士達の宿舎で、外で待ってくれている。

恐らく、この人だ。

少女は、丁寧に挨拶をする。

すると、少女はある事を思い出す。


とても、綺麗な敬礼をする男性。

とても見覚えがある。


「これは、イヴ公爵様」



そう、面白おじさんである。

あの、お偉いさん。本当に偉い人だったんだね。



「あ、えっと」

「これは失礼。名前を名乗っておりませんでした。レイエンです。改めて、宜しくお願い致します」

「宜しくお願いします」


私が、頭を下げれば、慌てて止めるレイエンさん。


「あぁ公爵様!頭を下げるなどと」

「その、これからも迷惑掛けると思うし」


事前に謝っておこう。

ミスしない筈が無いから。

しかし、素直に受け取ってくれない、レイエンさん。


「そ、そんな!何があろうとも、力の限りお助け致しますので、頭を下げるのはお辞め下さい」

「役職とか関係無く、ミスとかあったら言ってね」

「で、ですが。いえ、わかりました」


よし、これで最悪は、事前に教えてくれる筈。

戦争で失敗したら、不味いもんね。

人の命が懸かってる訳だし。

と言うか、出来るなら任せたいんだけどね。


‥‥‥駄目、だよね。はあ。


上の者が働かないのは駄目だよね。

そうだ。騎士さん達と交流もしておこう。

幸い、宿舎に来たんだし、皆んなにも頑張って欲しいもんね。

あ、でも勝手にウロウロするのは邪魔だよね。

許可貰えるかな?


「ねえ?」

「は、いかが致しましたか?」

「私騎士の人達とお話がしたいの。駄目かな?」


私が、そう言えばすごく悩む、レイエンさん。


「う、問題はありませんが。その」

「じゃあ、お願い」

「わ、わかりました」


許可を貰ったので、宿舎の中を案内してもらう。

すれ違った騎士さん達には、挨拶をして出来るだけ、愛想良く振る舞う。


一部の人達には、何故か、天使ちゃんと呼ばれてしまう。

その時の会話は面白かった。

とてもフランクで、新鮮だった。

懐かしかったような気もするけど。



「あ!天使ちゃん!こんにちわ!」

「あ、えっと、こんにちわ。よろしくお願いします」

「見学かい?」

「そんなところです」

「是非ゆっくり、見てってくれよな!」

「ええ。お邪魔します」

「そんな、邪魔だなんてとんでもない」

「いえ、頑張って下さいね」

「おうよ!んじゃまたね!」


とても、明るい男性だった。

私もそれを、分けて貰った。


しかし、レイエンさんはとても難しそうな表情をしている。

少女は、その表情を見ていない。

だが、もし見ていても理解は出来ない。

ある意味、幸せな少女なのであった。

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