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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
五章 対なる者
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百二十三話 議会

昼まで談笑を楽しんだ少女は、王女様と共に王城に向かう。

今日、初めてやる仕事がある為だ。

軍議に参加する様に。と御達しを受けた。

とても大事な仕事である。

しかし、ラーナちゃん曰く


「軍議とは名ばかりの物です。今回は、イヴ様を周囲へ紹介するのが目的で、今後についての話をするみたいですよ」


らしい。軽目の会議の様な物だと言う事だ。

参加する者は侯爵以上、もしくは王様に指名された者となっている。

私もその対象なので、今回から参加する。


事前に出掛ける準備はして貰っていたので、王女様と一緒に馬車に乗り込む。

私は、お供としてオルトワさんを連れて行く。

1人でも良いと思ったのだが、どうにもそれはダメらしい。

私は何をするのにも、共の者を付けなければならないらしいのだ。



目的地の王城に到着して、大会議室へと向かうらしい。

とても贅沢?な、王女様に案内して頂いて、部屋に入れば、殆どは揃っているのか席は埋まっている。

入室と同時に、全ての視線は私達に注がれる。

物凄く緊張してしまうが、王女様は堂々としているので、私もそれを見習う。


空いている席は王様の隣と、さらにその隣だけである。

王様の隣の片方は、王妃様が座っているので恐らく、ラーナちゃんを王様と私で挟む様な形で座るのだ。


予想は当たっていて、ラーナちゃんが隣に座る様にと、目が言っている。

私が椅子に座れば、周囲が騒ついて私の噂を話している。


やれ、あの者は誰だとか。

イヴです。


まだまだ子供だとか。

うるさい。小さいって言いたいのか?


可愛らしいだとか。

照れるからやめて。聞こえてます。



罵詈雑言?を無視していると、王様が話し始める。


「各々気になるのだろう。諸侯には追って説明するが、取り敢えず、議会を執り行なおうと思う」


王様が淡々と言葉を言えば、全体は一斉に静かになる。

それを確認してから、王様が話を続ける。


「では、いつも通り。リアーナよ。進行役に任命する。良いな?」

「はい、陛下。それでは皆様。これより私、リアーナが議会の進行役を務めさせて頂きます。改めまして、発言権は陛下によって与えられます。意見等、ありましたら手をあげて下さい」


王妃様が議会のルールを説明してくれている。

これに対して文句を言う人は居ない。

王妃様が一つ頷いてから、議会が開始する。


「まずは、ご紹介です。さて、この度より議会に参加して頂くことになりました。イヴ様。どうぞ、自己紹介をお願いします」


どうやら、まずは私の事かららしい。

緊張しているが、奮起する。


残念ながら、舌は理想通りに動く事は無いのだが。


「ご、ごしゅ」


ご紹介に賜りました。と言おうと思っていた。

相変わらず人前で話すのは苦手らしい。

思いっきり。しかも、最初で躓いてしまった。

少女は一瞬で頬を染め上げ、半泣きになる。


結局。


「い、イヴです。よろしく、お願い、します」


それだけしか言えなかった。

今日に至るまでの毎日は、貴族の何たるか等、言葉の言い回しとかを勉強した。

その、努力が生きる事は無かった。

少女の頭の中で、やってしまったと言う後悔が暴れ回っている。

しかし、王妃様がそれを見てフォローをしてくれる。


「えー、イヴ様は公爵になります。永らく、リベリオン家の当主が不在でした。しかし、この度お戻り頂いたので、今日は参加したと言う事になっています」



少女は黙ってしまうが、王妃様の話を聞いて、周囲の人達は、またもや騒つく。

それは、仕方ない事だ。

今まで、その公爵家は隠されていた。

それがある日、急に生まれた様な物だ。

しかも、小さな女の子が当主なのだ。

当然、疑惑は生まれる。

しかし、王様が頷いているので細かく追求する者はいない。


雑談はあっという間に無くなってしまい、声が聞こえなくなってから、王妃様が議会を再開する。


「紹介は以上になります。次は法についてになります。この国に黒龍様が居られる事は、周知している事でしょう。そして、黒龍様を、この国の龍神とすると言った法案を提案したいと思います」


否定の者は居ない。

話を続ける王妃様。


「この国を興した時より、今この時まで黒龍様を皆が崇めていました。ですが、あの方はただの龍ではありません。他国の文化から学んだ事で、龍ではなく、龍神として扱うべきだと判断しました」


王妃様が言い切れば、頷く者達。

この国では、黒龍は絶大な存在感を発揮している。

崇め、奉られ、いわば狂信的に、まさに国の神として扱われていた。

寧ろ、今まで何故この案が出なかったのか、と言う者ばかりである。


反対では無く逆に、賛成一色に染まった。

否定が無かったので、この法は可決される。

議会を行っても、ほとんど否定意見が出る事は無い。

黒龍に関わる法律ならば、尚更だろう。


この異常な空気に、呑み込まれる少女。

正体不明の既視感を感じるが、思い出せないので放置する。

それはさておき、今後もまた議会は行われるだろう。

今回の失敗を踏まえて、次回は失敗しない様にする。

そう、心に決めて、会議の内容を聴くことに徹するのだった。

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