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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
五章 対なる者
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百二十二話 暖気

冬も終わりかけの頃。

雪は溶け、草花は芽吹き、春を運ぶ風が吹く。

黒髪の少女と、金の巫女が仲直りをして3日。

あれ以来、毎日ラーナちゃんが遊びに来ている。

竜巫女の仕事を終えてから、昼まで私の家でお話をして帰るのが、定番となっている。


勿論、王女様は暇では無い。私も同様だ。

仕事や勉強がある筈。

しかし、忙しくとも王女様を相手するのは、実質仕事である。

私事は置いておいて、王女様との雑談は、最優先の仕事なのだ。

それに、なんだかんだで楽しい。

今日は竜巫女の仕事が無かったので、ラーナちゃんは来ないかと思っていたのだが、今日も今日とて、ラーナちゃんが訪ねて来た。

なんと、連続記録は更新中である。


「イヴ様!」


元気に私の名前を呼びながら、執務室へと入ってくる王女様。


遅れながら、オルトワさんが来て、ラーナちゃんの後ろに立っている。

そして申し訳なさそうに、目で謝っている。

オルトワさんは悪くないので、私が怒る事はない。

そもそも、王女様を止められる筈は無いのだ。


側から見れば、傍若無人に見えるかもしれない。

元気一杯。ムードメーカーな所が、ラーナちゃんの良い所だ。

うん。今日も元気そうだね。


「いらっしゃい」


私が挨拶をすれば、ラーナちゃんは嬉しそうに、私を連れ出す。


「さあさあ、本日もお話しをしましょう」


私を引っ張って、応接室へと連れて行ってくれる王女様。

昔は随分丁寧な人だったのだが、あの事件以来、随分と仲良くなって、お互いに我慢をする事は無くなった。

今もこうして、私を連れ出す。


毎日の様に、ラーナちゃんが来るので、常にお茶会は用意されている。

気の利くオルトワさんが、毎日セッティングしてくれているのだ。


2人共が揃って、席に座ればお茶会が始まる。


「イヴ様?聞いた話になりますが、この度より、軍議に参加されるとか?」

「うん。王様からの命令だね」

「ふふ。私も居ますからご安心下さいな」

「そうなんだ?」

「ま、まあ、とは言ってもまだ、半年程しか経験はありませんが。陛下より、次期女王として、勉強の為にと言う事で参加しています」


成る程。流石はラーナちゃん。頑張り屋さんだし、将来の王様か。

言われてみれば、そうだよね。

ラーナちゃんが王様か。ちょっと格好良いかも。


「ラーナちゃんなら、いい王様になれると思う。改めてよろしくね」

「は、はい。こちらこそ」



姿勢を正してから、返事をするラーナちゃん。

アレ?なんで、そんなに改まっちゃったの?

まあ、いつも通りのラーナちゃんだね。


そう言えば、私は王様に言われた事がある。

それを思い出す。


「あなた様の未来の為に、今後、軍議に出て頂きます。斜に構える事無く、なんなりと意見を披露して下さい」


なんて言われちゃったね。

私に対して、新人だが頑張って下さいって事かな。

なんだかんだで、随分と見守ってくれてるんだろうな。王様は。

お世話になりっぱなしだよね。

だって、この仕事も、エルードさんが無理言って貰って来たらしいし。

まあ、頑張ろう。ラーナちゃんも居るし。

なんとかなる筈。うん!



良い空気が回り始め、新たなる仕事に対して、自分なりに喝を入れる。

仲直りが出来た事で、凄く前向きに考えられる様になった。

そして、2人の話題は変化して、次は魔法について話し始める。


「そうそう、イヴ様?私最近魔法が使える様になったのです!」

「え?あ、うん」


私が微妙な反応をすれば、頬を膨らませるラーナちゃん。

だって、ペンダントで魔法が使えるから、今更だと思ってしまった。

しかし、私は気付いた。相手が嬉しそうに話しているのだから、この反応は良くないのかも。

私は慌てて、励まそうと口を開く。

しかし、それはラーナちゃんに遮られてしまう。


「違います!その、水の魔法が使える様になりまして」

「え?水?」


ペンダントの効果では無いらしい。新たに使える様になったと言う事だろう。


「その、今までいくら試しても、駄目だったんです。それが、つい昨日試したら、その、使える様になってて」

「凄い。ラーナちゃん」

「ペンダントの効果かと思い、外してみましたが、魔法が使えました。ですが、ペンダント無しで魔法を使うと、すぐに魔力が無くなって」

「うん」

「つい、はしゃぎ過ぎまして。気絶してしまいました」

「え!?大丈夫なの?」

「身体には問題無しです。魔力の使い過ぎだろうと言う事らしいです」


凄く照れながら、嬉しそうにしている。

顔を真っ赤に染めながら、とても綺麗な笑顔だ。

とても嬉しかったのだろう。

そうだ、こう言う時に言ってあげる言葉がある。


「おめでとう。ラーナちゃん。私も負けないからね」

「う、イヴ様が本気を出すと負けてしまうので、手心を加えて下さると、有り難いです」


私は少しの負け惜しみも混ぜながら、純粋にラーナちゃんを祝う。

良いライバルでもあり、良い友でもある。

ラーナちゃんも笑いながら冗談を言っている。


とても幸せな時間。

2人は雑談をしながら、昼まで笑い合うのだった。

さて、ラーナ様は魔法が使える様になりました。


あのペンダントの力によって、ラーナ様の魔力核が強化された結果です。

あとは、魔力を使い続ける事で成長します。

まだまだ、ペンダント無しでは弱く、持久力も無いですけどね。


この世界の魔法は才能に依存していますが、飛び抜けている者の魔力を浴びる事で、才能が開花する事があるみたいですよ。

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