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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
五章 対なる者
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百二十一話 嵐の後の虹

屋敷へと帰った黒髪の少女は、日々の日課を始める。

随分と長く、王城に居たので、昼を過ぎている。

食欲も無いので、仕事をしていると、オルトワさんが食事を持って来た。


「お嬢様。食事を置いておきます」

「ん。ごめん。サボっちゃった」

「いえ、たまにはそう言う日があっても良いですよ」


サボった事に対しては怒られないらしい。

エルードさんはどうだろうか?あの人も忙しい筈だから。聞いてみようか。


「エルードさんは?」

「魔法の本を借りに行きましたよ。王家に」

「え?なんで?」

「お嬢様?魔法が使える様になったのでしょう?」

「あ、そっか。知ってるんだね」


そう、魔法。確かにエルードさんには見られてる。ついでにリスタさんにも。

魔法か。ラーナちゃんには申し訳ない事したな。


私が落ち込んでいってると、オルトワさんは話し続ける。


「魔法を使える様になった訳ですし、訓練の種類を増やしていけますからね」

「うん。まあ、程々にお願い」

「わかりました。それよりも、明日はいかが致しますか?」

「明日?」

「竜巫女様の所に行くのですよね?王妃様からそう聞きましたよ?」

「え!?なんで?」

「いえ、基本的に私は、お嬢様のそばに居ます。追い掛けましたが、王妃様に大丈夫と言われて、帰されました」


「嘘?」

「流石に、城内に黙って入れる訳ではありませんが」

「見てたって事?」

「はい」


全て見ていたらしい。と言うよりも、常に私のそばに居るらしい。

気配を消してとか、そう言うヤツだろうか。

今まで、気付かなかった。

つまり、私の失態を知っているらしい。


「しかし王女様が、あの様な魔法を使えるとは」

「その、どうしよう」

「ん?何がですか?」

「ラーナちゃんに謝りたくて」

「何故です?」


どうやらあの芝居に気付いている訳では無いらしい。

私は細かく説明をする。


「な、成る程。それはまたなんとも」

「どうしよう。ラーナちゃんに嫌われちゃった。なんて言って謝れば」

「そこはもう、素直に悪かったと思った所を謝るしか」

「許してくれるかな?」

「王女様は、お嬢様の事が大好きですから大丈夫ですよ?」

「本当に?」

「はい」


大丈夫だと、太鼓判を押された。

私はその後、ひたすら訓練や勉強をした。

何かに打ち込んで無いと苦しくて、その日はその後疲れて泥の様に眠った。





次の日。



迷惑にならない様に、出来るだけ早くの朝に、王城へと向かう。

建物内に入れば、メイドさんに案内されて、とある部屋へと向かう。

毎度お馴染みの応接室である。


扉を開けて貰って中に入れば、王妃様と王女様が居た。


「ようこそ。イヴ様」

「ど、どうぞ。イヴ様」


王女様の対面の席を、案内される。

王女様の緊張が、私に感染り、返事も返せずに私は座る。


先程のメイドさんは、足早にこの部屋を去り、非常に重苦しい空気となる。

この場はメイドにとっては、酷な空間だろう。



あぁ、ラーナちゃんはやっぱり怒ってるよね。

ウジウジするのはダメ。謝るんだ。

話し始めたら、勢いでなんとかなる!多分。



黒髪の少女は、そう考えて、謝る。



「「ごめんなさい!」」


金の巫女と黒髪の少女の声は重なり、同時に謝る。

ピタッと空気が固まって、すぐさま金の巫女が主導権を握る。



「あ、ああ!いえ!私が悪いんです。イヴ様にあの様な、私が、ウッ、グス。ごめんなさい」



謝りながら泣き始める金の巫女。

片方が泣きじゃくれば、黒髪の少女も同様に、泣いて謝る。



「私の方こそ。ごめんなさい。ラーナちゃん、に、謝り、たくて」

「違います。私は嫉妬をしたんです。イヴ様が意地悪をしたんだって、思っちゃいました」

「うん。ごめん」

「そんなつもりじゃ無かったんですよね。本当に、私は」

「いいの。私が、悪いんだもん」

「イヴ様は悪くありません!」

「ラーナちゃんだって!」

「「あ、」」


2人はまたもや、ハモってしまう。

よく似た者同士なのだ。


そして上目遣いを使いながら、金の巫女は言う。目線を上下に動かして、黒髪の少女をチラチラと見ながら。



「その、私はイヴ様の事が、その、大好きです。なのでその、許してくれますか?」

「え、あ、う」


顔を真っ赤に染めながら、黒髪の少女は動揺する。

そして、1つ頷いて答える。


「私も、その、好き。許して欲しい」



それを聞いた金の巫女は、笑顔を咲かせて、黒髪の少女に抱きつく。

このまま、抱き合うかと思えば、唐突に金の巫女は離れる。

何事かと、黒髪の少女は疑問を浮かべれば、金の巫女は話し始める。



「イヴ様。これをお返し致します」



蒼玉のペンダントを差し出す、金の巫女。

それを見て、少女は考えてしまう。



要らない?‥‥‥そっか。

少し、悲しいな。


そして黒髪の少女が、チラリと金の巫女に視線を走らせると、名残惜しそうに見ている。

なので、一応確認してみる。



「要らないの?」


思わず、冷たい声音で言ってしまう。


「い、い、‥‥‥はい。私には」


と言いつつも、名残惜しそうに視線が動いている。なので私は閃く。

きっと今度は上手く行くと思う。

ペンダントを受け取って、私は言う。


「ラーナちゃん。あっち向いて。と少し屈んで」

「え?あ、はい」


私はそっと、後ろから抱きついて、ラーナちゃんの首に掛けてあげる。

驚いているだろう。ラーナちゃんにトドメを刺す為に、耳元で囁く。


「貰ってくれないと泣いちゃうもん。私の気持ち、受け取ってくれるでしょ?」



しかし、泣いてしまうのは金の巫女だった。

スンスンと泣き始めて、段々と涙の粒が大きくなり、床に落ちて行く。


甘美な光景を眺める王妃様。

その表情は暖かな眼差しで、娘達を見守るのだった。

仲直り出来ましたね。


当然の事ですが、あのペンダントはとんでもない代物です。


蒼神のペンダントと言い、所謂神器です。

魔力がない者でも使用可能で、効果はイヴの祈りと同じですね。

イヴが装備すれば、効果範囲拡大。

他人が装備すれば、単体。

とまあ、差はありますが、それでも十分ですね。


余談ですけど、あのナイフも神器です。

さて、何処にいるのやら?ですがね。



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