十一話 秘められたモノ
ここはとある建物の中。
日は沈み、少し賑やかなこの空間は、少し特殊な熱気に包まれ‥‥‥つまり夜の風来亭である。
夜は酒場として村の男衆の憩いの場となっている。とは言ったものの、時々女性も居て色々な話題を話し合っている。
その中で少し珍しく静かに話している二人組がいた。
「どうしたよ。珍しくお前から誘ってくるとは。フレアは放置していいのか?」
「クロに付きっきりで相手してるから。なんとなく、そのなんて言うか」
「あー構ってくれないんだな」
コワモテがそう言うと、2人とも無言になり睨み合う。
「悪かったって。そんなに睨むなよ。で?それだけじゃねえんだろ?」
「ああ、そうだな。明日からクロを狩りに連れて行こうと思ってな」
「はあ?正気か?あれか妬みなのか?」
「違う!今日の昼間に使える武器があるか色々試したらな?自由自在に扱ってて、何というかとんでもないんだよ」
「何がだよ?」
「投げナイフを投擲して、五十メートル先の的に当てたんだよ」
「まぐれじゃねえのかよ」
「10回中10本だぞ?あれ程出来る奴はあんまり居ないし、なによりも今日初めて武器を触ったみたいでより驚いたよ」
「まあ、それはそれとして、魔物は見たことねえし、問題ねえと思うが、一応気をつけた方が良いだろうな」
「ああ。だからお前に相談したんだよ」
2人はそんな事を話しながら長い夜は続く、少なくともそこには恐怖や馬鹿にする様な感情はない。自身の娘を自慢する様な、どちらかと言うと穏やかな雰囲気がその空間を支配している。
少女はいま抱き枕である。
抱かれて寝ているのがとても心地良く、よく眠っている。夢の中に居る少女は、今までの睡眠よりも深いところにいた。
夢を見ていると、そこには2人の男性?の様な者達が睨み合っていた。
戦い初めてやがて1人が倒れ伏せる。倒れた者が何かをして、立っていた者はそれを見て慌てて何処かへと飛び立つ。それに対して疑問を持ったが、とても心地が良く、すぐに忘れて何を見たのかを思い出す事はない。どれほど重要であっても。