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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
五章 対なる者
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百十八話 何気ないきっかけ

昼食を取ってから、今度は仕事に取り掛かる。

日々の日課なので、コツコツと進めた結果、それ程多くはない。

エルードさんに見て貰いながら、書類を片付ける。


仕事が終われば、今度は勉強だ。

政治関係や、この国の歴史。軍事や他国の情報等、果てには魔法の勉強もある。

魔法が使えるかどうかは、関係無い。知る事に意味が有り、対策を勉強するのだ。


そして、勉強には実務も含まれる。

実際に魔法の練習を行った。

残念な事に、私は魔法の才能が無いらしい。

その事で、すごく励まされたが、余計に惨めになってしまった。


アレは苦い思い出だ。


魔法が使えないならと、ひたすらに勉強をした。この街にあると言う、冒険者ギルドなる物に行って、魔法についての本も買った。

意味は理解出来るのに、一切魔法が発動しないのだ。

諦めはついたが、負けず嫌いの私は火がついてしまった。

今では、誰にも気付かれない様に、コソコソと魔法を勉強している。



実際には気付かれているが、勉強の原動力になるならば、と知らぬふりをされているだけである。



そして、やるべき事が終われば、エルードさんはどこかへと行く。

恐らく、エルードさんは他の仕事があるのだろう。

折角なので、魔法の練習をしよう。

そう思い、本を開いて読み始める。


「なになに?火魔法のコツ?これで貴方も脱初心者?」



ムカッ!なによ。魔法なんてどうせ役に立たないもん。

こんな物よりも、身体を動かした方がいいし。



脳内で愚痴りながら、オルトワさんに褒められた事を思い出す。

それは、格闘訓練の時の記憶だ。


「お嬢様。大変運動神経が良いですね」

「そう?」

「こんな短期間でしっかりと上達しています。私も教え甲斐があります」

「えへへ」


褒められて、つい姿勢を崩せば、掌底が鳩尾に入る。


「隙あり」

「んぐ」

「油断はダメです。戦闘中に気を抜いてはなりませんよ。お嬢様」



よく考えれば、褒められてはいるが注意もされている。

訓練中は厳しいオルトワさん。油断すると、すぐに負けてしまう。


私は弱いのだ。

だから今も勉強してる。

まあ、魔法の勉強は役に立たないかもだけど。





場所は変わって王城の中。

黒髪少女の部下である老人が、王様と面会をしている。


「陛下。お変わりありませんか」

「うむ。ご苦労。イヴ公爵はどうだ?」

「日々頑張っております。常々、陛下に恩を返したいと言っています」

「う、んむ。そうか」


苦虫を噛み潰したような表情の王様。

その理由が理解出来る者はいない。

一瞬、間を開けてから、老人は話題を変える。

王様の好まない話題だったと、老人が判断したからだ。


「陛下。先日お願いをしていた件はどうなりましたか?」

「ん?ああ。ギルドか。情報遮断をしているから問題無い」

「ありがとうございます。冒険者ギルドは取り壊す訳にも行きませんか?」

「いや。こちらの駒として使える。ギルド長は国寄りの者を選出したからな」

「成る程。陛下のお考えですか?」

「実は、リアーナに相談したのだ。そして、出てきた案だ」

「得心しました。ではもう一つ良いですか?」

「ん?なんだ?」


王様が問えば、老人は願いを言う。


「イヴお嬢様を軍議に参加させて頂きたいのです」

「むう」

「難しいでしょうか」

「そうだな」

「お嬢様は非常に頭が良いです。経験を積ませれば、必ずや国家の繁栄に貢献出来るでしょう」

「しかし」

「お願い致します」

「わかった。わかった。検討しておこう」


深々と頭を下げる老人。老人が退場すれば、裏から女性が出て来る。


「聞いていたか?リアーナ」

「ええ、陛下。宜しいのではないでしょうか?」

「そうか?だが、これ以上の負担は」

「イヴ様が望むならば、良いと思いますが」

「うむ」


王と王妃様は会話を続ける。1人の少女の話題を延々と。




魔法の勉強をしている少女は、亜人と言う項目を見つける。

そこには、獣人族の事とか、エルフやドワーフ等。

人間とは違う種族についても書かれていた。

そして、多様な種族の得意とする、魔法の名前が載っていた。

そして、獣人族の得意とする魔法が書かれていたので、思わず言葉にしてしまう。


「肉体強化?」


少女がそう言えば、右腕に黒い六角形の模様が、複数浮かび上がる。


「え!?何?」


状況が飲み込めず、慌てる少女。


「まさか?」


疑問を述べて、近くのコップを握ってみる。

軽く握ったつもりだが、コップは大きな音を立てて破片が飛び散る。

破片が肌に刺さる事は無かった。

しかし、そんなことよりも、魔法が気になってページを捲る。

そこには、様々な魔法の名前がある。まさかと思い、片っ端から宣言する。


「治癒」


幾つか言葉を言った後の事。一つの単語に反応して、少女のペンダントが光り輝く。

室内が青く照らされ、非常に眩しい。

そして間が悪く、メイドが入室してしまった。


「お嬢様!今の音は‥‥‥え!?」

「あ!?リスタさん?」


部屋に入って来たメイドは慌てている。

そしてそれが伝播して、少女も慌ててしまう。

輝きを消す方法も分からず、ついでに破片が飛び散っている状況。てんてこ舞いの2人。

結局この状況は、老人が戻るまで解決しないのだった。

どの国にもギルドは存在します。


しかし、竜聖国にギルドが出来たのは、ここ数年の話です。

他国の文化を受け入れ、設立されましたが、そもそも黒龍は魔物だと言われていました。

なので、ギルドの存在意義は疑問視されています。

外国との連携を取る為に存在しますが、竜聖国のそれは、思考がかなり偏った施設です。


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