表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
五章 対なる者
118/292

百十七話 大切な存在

少しだけ時系列がごちゃごちゃします。

ややこしくて申し訳ないです。

未だ寒さの抜けぬ頃。

少しずつ暖かくなっており、もう冬も終わるだろう。

そんな季節の変わり目の朝。

ふと目が覚め、体を起こす黒髪の少女。

外を眺めれば、恐らく今季最後の雪が降っている。

何かの既視感を覚え、首を傾げる少女。


記憶を無くして、およそ一月。

この1ヶ月で、沢山のそんな感覚を抱いた。

しかし、この雪だけは特別な気がする。

今までのそれらの感覚とは違う。いつもあと少し、と言ったところで思い出せない。

なんとも、もやもやする。


外の雪を眺めていれば、いつも通りリスタさんが私を起こしに来る。


「おはようございます!お嬢様」

「おはよう。リスタさん」

「お召し物をお持ちしました。さあ、着替えましょう」

「うん」


私は布団から出て着替えさせて貰う。

この時間はいつも雑談をする。リスタさんなりのコミュニケーションと言うやつだ。


「しかし、お嬢様は凄いですね」

「何が?」

「いえ。私はお布団から中々出られませんから」

「なんで?」

「寒く無いですか?冬の朝は苦手です」

「そう?」

「昔の私は、布団から出たく無い!と駄々を捏ねて、お母さんによく怒られていました」

「成る程」


リスタさんが言うには、冬の朝は辛いらしい。私は特に、そうは思わないけどね。人それぞれなのだろう。


「さあ、終わりましたよ。それでは、お嬢様。お食事にしましょう」

「うん」


着替えの退屈を紛らわしてくれるリスタさん。リスタさんは良い人だ。メイド長にはよく怒られているけどね。



食事を終えた黒髪の少女は、仕事に行く。

この前、国王様に任命されたやつである。

それは、竜巫女補佐の仕事である。ラーナちゃんと一緒に仕事をする。


私よりも早く来て準備をしている、竜巫女様ことラーナちゃん。

金髪の華やかなお姉さんだ。とても優しく、まさに天使様である。

少し慌てん坊だけど、時に凛としており、そのギャップがまた格好良い。


私がそう考えていると、こちらに気が付いたのか手を振っている。

私は手を振り返して、話し掛ける。


「おはようございます。ラーナ王女様」

「むー、イヴ様?ここには私達しか居ません」

「えっと、ラーナちゃん」

「ええ。おはようございます。イヴ様」


頬を膨らませて訂正を求める王女様。

人前では王女様と呼んでも怒らないが、2人だけの時は、ラーナちゃんと呼ばなければ怒られてしまう。

普通逆では?と思ったが、頬を膨らませてしまうラーナちゃんに負けてしまった。

逆にラーナちゃんと呼べば、ものすごく笑顔になるので、仕方ない。


挨拶を済ませれば、早速仕事が始まる。

ラーナちゃんの護衛が、教会の扉を開けば、悩みを聞いて貰いたい人達が並び始める。

順番に悩みを聞いていくラーナちゃん。

その後ろに私が居る。

一応、補佐として私はここに居るが、実はやることが無い。

とは言え、王様に与えられた仕事をサボる訳にもいかない。

暇ではあるが、姿勢を正して、私も話を聞く。

そして、ある人が竜巫女様に質問を投げかける。


「竜巫女様!黒龍様がこの国を護ってくれたのは本当ですか!?」


その質問を聞いたラーナちゃんは、何故かこちらをチラリと見た。

思わず私は、首を傾げてしまう。


話をちゃんと聞いているのかどうかを疑われたのだろうか。

確かに暇だけど、この仕事は王様直々に与えられた仕事である。

恐らく、ラーナちゃんにしっかり監視する様に言い含めている筈。

まあ、よくわからないけれど、一応笑顔を浮かべておく。


すると、ラーナちゃんは笑顔で応じてくれて、正面に向き直る。

疑われては無い様だ。多分誤魔化せた。

そして、ラーナちゃんは、この場に居る全員に宣言する様に言葉を話す。


「事実です。確かに黒龍様はこの国に居ます。会う事は叶いませんが、今もなお、この国を見守って下さっております」

「で、では?」

「いつでも黒龍様は見ていますから、悪い事はしない様にして下さいね」

「おお!」

「もし、お願いがありましたら、何なりと言って下さい。私が伝えておきますから」



流石は竜巫女様だと思う。どうやら黒龍様と会った事があるらしい。

最近調べた情報で、黒龍様は王族しか面会が出来ないらしい。例外で竜巫女の仕事に就いている者だけは、除くのだが。

しかし、現在の竜巫女様はラーナちゃんなので、実質王族だけになっている。


私も会ってみたいな。まあ、無理だろうけど。この国の伝説みたいな物だから。

そもそも、存在するかどうかすら、あやふやだったらしいのだから。


先程の質問した人は満足したのか、帰っていった。

その後も何人かの質問を受け、それをしっかり聞いて捌いていく。

実に、竜巫女様は頼りになる存在だ。



悩み相談を聞いて思ったのは、殆どの人は国家への不満を言う事は無かった。

皆は希望に溢れ、この悩み相談も実は、必要無いかもしれない。

それ程までに、皆んな明るい表情だ。


相談の時間は終わり、私は自分の家に帰る。

私は帰ってから昼頃まで、オルトワさんとの格闘訓練がある。なので急いで帰る。



屋敷へと帰れば、オルトワさんが出迎えてくれる。

早速引き連れて、部屋に戻る。

運動をするので、動き易い服に着替えてから、屋敷の裏庭で訓練を開始する。


初めて訓練をした時は、軽くあしらわれてしまい、手も足も出なかった。

今もなお、手加減はされているのだろうが、前ほど簡単に投げられたりはしない。

王家の元、護衛と言うのは伊達では無いらしい。


結局は一撃も与えられなかったが、少しずつ手応えを感じ始めている。

これからも、ちょっとずつでも頑張ると、心に誓う。

大切な人との約束なのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ