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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
五章 対なる者
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百十四話 世界の違い②

平原を1人で歩く者が居た。銀嶺の乙女である。

ある依頼を受けて、ここにいる。

目的である、ヒートウルフの群れを探しながら、周囲を探索している。


変化が乏しい景色を眺める乙女。

退屈そうに記憶を読み返している。




筋肉が凄い肉屋の店主が、乙女に仕事を教えている。

殆ど教える事は終わったので、店主が質問をする。


「そうそう。お嬢ちゃんの名前はなんて言うんだ?」

「私?」

「おう。ここに嬢ちゃんは君しか居ないだろう?」

「名前‥‥‥名前か」


問われた乙女は思考している。



私の名前か。なんて名乗ろうか。メイでもいいかな?でもまあ、折角生まれ変わったんだし。あの子の名前を貰おうかな。

そしたらまあ、その、これで話が弾むかもだし。

私の能力的にも良い名前だし、私は冬に生まれたし、他意は無い。



誰に、と言う訳でも無い、言い訳をする乙女。

乙女の前世は秋生まれである。確かにこの世界では冬生まれみたいな物だろう。

まあ、転移者なので厳密には違うが、容姿が変わってしまったので、間違いとも言えない曖昧なところである。


名前は決まったので、乙女は店主に名前を伝える。


「フユって言います」

「そうか。改めて宜しくな」

「店主さんは?」

「俺か?まあ、店主って呼んでくれれば良いさ」


どうやら、名前を教えてくれないらしい。

まあ、必要ないと言えば必要ないので、乙女は「どうでも良いか」とすぐに思考を放棄してしまう。






回想は終わって、何気無く視線を走らせると、目的の獲物を発見する。

依頼の魔物。ヒートウルフである。数は7匹。

リーダーらしき体の大きな個体も居る。


敵を認識した乙女は念の為、障壁を発動する。

当然魔物には気付かれているので、魔物は威嚇をしている。



睨み合っていたが、戦闘が開始する。



複数の狼が囲み込もうと走り出す。

そして、咄嗟に乙女は氷魔法を使用する。


乙女には守りの盾があるとは言え、攻撃を受ける理由が無い。

だから、近付かれる前に氷魔法で遠距離攻撃を実行する。


原理はよく解っていないが、中々使い易く、強いので使っている。

他には、敵を凍らしたりも出来るのだが、敵を凍らす為には、かなり近付かなくてはならない。一応触れなくても問題無いが、触れた方が強い。

だが、そもそも遠距離からの攻撃が可能なので、待つ理由が無い。

相手を凍らす魔法は出番が無いだけである。


氷の塊は敵に向かって飛んで行く。

しかし的は小さく、動くので躱される。真っ直ぐ飛ぶだけなので、避けるのは造作もない。それが例え、知能の低い魔物であってもだ。

当然そんな事は百も承知の乙女は、数撃てば当たる戦法である。



かなりの魔力を消耗して、全てを討伐した。

依頼を完了したので、素材を回収する為に、一箇所に纏める。

7匹もの魔物を持って帰るのは、大半の者は不可能だと思うだろう。

しかし、乙女は獲物を障壁で包み浮かせる。

かなり不思議な光景だが、ある日の乙女が閃いて、習得した技である。





その経緯だが



乙女が魔法を発動する為宣言する。脳内で独り言を話しながら。


「障壁発動!」


あれ?空中にも出せるんだね。

しかも乗れるじゃん!マジかよ。

て事は、サンドイッチして物を浮かせる的な事が可能かも。


‥‥‥マジかよ。出来るんかい。



と言った感じである。





頷きながら、乙女は独り言を始める。



「うんうん。いいね。楽ちんだし。代わりに魔力を使うけど、このくらいなら許容範囲かな?」


素材を持って(障壁に持たせて)帰還する乙女。何かと便利な障壁である。こんな使い方をしたのは乙女が初なのだが。



町に到着して、依頼報告をしてから肉屋に帰る。店主さんは居ないが、取り敢えず自室に入る。


最近は冒険者としての仕事をこなしているお陰か、かなり儲かっている。なので、遂にアレを買いに行く予定だ。


そう、アレ。下着。



現代日本人として生きた私に、肌着が無いのは耐えられない。だから買いに行く。幸い、お出掛け途中に衣服屋を見掛けたので、アレが存在しているかは確認済みだ。


そして、その見掛けたお店に直行する。




さて、辿り着いた。例のお店に。だがしかし、私はその目的の商品を眺めている。

いや、正確には値札を見つめている。


お値段なんと!金貨20枚である。

それはもう、高級品である。

実際これ程高い物でなくても良い。だが、試着可能なレベルの物でも、金貨数枚であり、非常にゴワゴワする。


つまり、乙女には優しく無い。

なので、店内でも1番高い商品を眺めていると言う訳だ。

触る事は駄目だが、素材は何を使っているかは書かれているので、これが最も理想に近いのを知っている。



うぐぐ。全財産出せば買える。でも、1枚だけ。お金の問題だけじゃ無い。物が無いんだもん。せめて3枚は欲しい。



すごく悩む乙女。脳内で格闘中である。

そして、悩む乙女に話し掛ける店員さん。


「お客様?そちらをお買い上げになりますか?」

「あ、どうも。悩み中です」

「失礼ですが、そちらは貴族様向けです。見たところ、違いますよね?」


どうやら付き人が居ないから、貴族では無いと判断されたらしい。

まあ、貴族では無いが、容姿だけなら貴族をも圧倒する乙女。

少し、失礼な店員だが、特に怒る事なく応答する乙女。


「お金はあるから悩み中なんですよ」

「そ、そうでしたか。失礼致しました」

「それよりさ?コレと同じの作れない?もう2、3枚買いたいんだけど」


お金は足りないが、生産依頼が出来るかを確認する。そして、乙女の問いに驚く店員さん。


「え!?こちらの商品をですか?その、失礼ですが、大変高いですよ?」

「うん。なんとかお金は貯めるから。どうしても欲しいの。駄目?」

「オーダーメイドは可能です。ほ、本当に買って下さるのですか?」

「うん。取り敢えず、この展示されてるのは買いたい」


私はそう言って、殆ど全財産を取り出して手渡す。

すると、震えながら受け取る店員さん。大急ぎで商品を持って、奥へと戻ってしまう。



正直、衝動買いみたいな物だ。

だが、後悔はしてない。見るからに柔らかそうで、申し分無いであろう気がする。



それ程時間の経たぬ内に、店員さんが出て来て、立派な箱を受け取る。

箱詰めされる程の、仰々しい物でも無い気がするが。


こうして、乙女は高級品を持ってから、借り部屋へと帰るのだった。

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