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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
五章 対なる者
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百十話 世界の違い①

森の中を歩く乙女。

溜息を吐いて、独り言を始める。


「はぁ、取り敢えず水と食料だっけ?生き返って早々、狼に襲われサバイバルって、中々ハードだよね」


自身の不幸を嘆く乙女。思考へと移る。



てか、私白髪じゃん。艶々の髪で文句は無いけどさ。

後、この服装は何?この世界の標準なのだろうか。だとしたら最悪だよ。膨らみを抑える物は無いし、何より穿いてない。下着は無いのかな?

ひょっとして、この世界は乙女に優しく無いのでは?

まあ、何にせよ情報収集だね。

‥‥‥森を抜けてから、だけどね。


なんだかんだで歩けば、森の出口に着いて、平原がある。しかし、人の気配は無い。



うへぇ。こりゃ歩き続けるしか無いかな?

しかし思ったけど、人に会えたからと言っても、言葉が通じるかどうかだよね。

女神様は異世界みたいな事言ってたし。

まぁ、ここが地球の可能性もあるけど、多分その可能性は薄い。

あんな狼、見た事ないもんね。まあ、普通の狼も見た事ないけど。


乙女も気付かぬ小声で、ブツブツと溢しながら考え事をしていると、遠くから馬車が近づいて来る。

そしてそれに気付く乙女。



ん!?なんか近付いて来る。馬車?かな。

取り敢えず、手を振ってみよう。

‥‥‥文化や言語の問題は、置いておこう。



どうやら気付いてくれたのか、馬車が乙女に近付いて、御者が乙女に話し掛ける。


「おや?旅人かい?」


言葉を聞いた乙女は驚く。そう、馴染みのある言語だ。しかし、単語と口の動きが合っていない。その事に、正体不明の違和感を感じる乙女。

実際には、女神の加護的な何かで言葉が通じるのだが、言葉が通じれば、違和感は些細な物として、それを無視する乙女。


そして、助けを求める乙女。嘘も混ぜながら。


「すいません。旅人なんですが、実は迷子で」

「へえ?そりゃ災難だな。うーん。良かったら付いて来るか?」


なんと、藪から棒に助けてくれるらしい。

親切な男性だ。


乙女の好感度が上がった。


乙女は調子に乗った。


「出来れば飲み物とか、食べ物も頂けたら」

「そうか、迷子と言うか遭難だな。構わないけどな」

「ありがとうございます!街に着いたら必ず返します!」


お礼を言いながら、頭を下げる。すると馬が乙女の髪を嗅いでいる。そして、それがむず痒かったのか、くしゃみをした。

それはもう、盛大に。


「ギャー」

「おお!?すまねえな。うちの馬が」

「い、いえ?そんな、あはは」


命が懸かっているのだ。怒れない。が、汚れてしまった。

乙女の気持ちを知ってかなのか、凄く馬が懐いている。


「お?懐かれてるな。珍しいぞ。動物に懐かれる人は、優しい子だって言われてるからな」

「そ、そうなんですか?」



正直、文句を言いたい。

しかし、そんな事出来ない乙女は、感情を消して馬車に乗せてもらう。

馬車は速く、歩きの何倍も速い。



数時間掛けて、目的地の町へと着く。

有難い事に、食べ物と水を少し貰ったので、飲食しながら探索をする。



言語は通じる。当面の問題は、衣食住をどうするかだね。特に、食の問題。

貰って食べた物は、美味しくない。

感謝はしているが、正直こんな物で腹を満たしたくないよ。


まあ、仕事をしないとね。お金も何も無いから。

紹介してくれるとことか、無いのかな?

バイト募集!的な感じの。


そんな事を考えていれば、1つの看板が目に入る。


お肉屋さん。そう、肉屋らしい。


そして、乙女は閃く。



こ、これは!?肉屋で働く。すると美味しい肉が食べられる。野菜?そんな物は知らん。

それに、お金も貰える。一石二鳥だ。

まあ、鳥は捌くけどね。うん。良い考えだと思う。うへ、うへへへ。



きみの悪い表情で笑い出す乙女。周りの人々は、若干引き気味である。

なまじ、美しい容姿なので余計に目立っているが、乙女はお肉の世界に行っているので、その事に気付かない。



そして乙女は突撃する。野望の為に。


音を立てながら店内へと入れば、筋骨隆々の男性が、応じてくれる。


「おう、いらっしゃい。別嬪さんだな。お肉を買いに来たのかい?」

「は、はい!」


大男に焦る乙女。体は大きく、それはもう凄い筋肉である。若干怖い。

しかし、乙女の野望は大きく、筋肉にも負けない。引かない。美味しいご飯の為に。


「あ、間違えました。私を雇って欲しいです」

「ん!?その細‥‥‥結構汚れる仕事だぞ?」


男性は濁しながら、暗に断る。しかし、引き下がれない乙女。お肉の為に!

つまり、食い意地が張っている。


「なんでもします!お願いします。駄目ですか?」


乙女は駄目元でお願いをする。攻撃力の高い、最強の上目遣いで。

そして、効果はばつぐんなのか、それとも防御力が低いのか、男性は折れる。

そもそも、この男性は女性に弱い。それを差し引いても、乙女のお願いを断れる男は、居ないかもしれないが。


「わ、わかった。だが、仕事だぞ。厳しくいくからな!」

「は、はい!」


出来もしない覚悟を述べる男性。

覚悟も無く、ただの欲だけでこの場に居る乙女。

似た物同士かもしれない。


何はともあれ、仕事を得る乙女。

しかし、スーパーでしかお肉を見た事の無い乙女は苦労する事になる。

そう、黒髪の少女の様に、記憶が無ければ良かったかもしれない。


笑顔で乙女は努力を誓うのだった。希望を抱く笑顔で。

作者は割と筋肉好きです。


「筋肉は全てを解決する!」


うーん。至言ですね。

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