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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
五章 対なる者
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百九話 信頼

ある日の朝。


大きなテーブルを囲み、1つの家族が会話をしながら、食事をしている。

皆、綺麗な金髪で、見るからに偉い人だと分かる。

その根拠とは、立派な格好をしており、非常に丁寧な様相で食事をしている。

そして、娘が父に向かって質問をする。


「陛下。イヴ、いえ、黒龍様について質問があります」

「ん?どうした?ラーナ」

「黒龍様に依頼した内容を、お聞きしたいのです」


その言葉を聞き、思い当たる記憶を浮かべて訊ねる。


「少し前の話かな?」

「はい」


そう言って、説明を開始する王様。



数日前。




黒髪の小さな少女が、大人に向かって話し掛ける。


「で?頼みたい事って?」


それに応じる王様。


「はい。西方の国境で、小競り合いが発生しているのです」

「叩いて来いって事?」

「ま、間違いではありませんが、手段はお任せします。但し、竜聖国に黒龍ありと、知らしめて頂きたいのです」


王様がそう言えば、少し悩む少女。


「情報は?それだけ?」

「国境の情報伝達には時間が掛かるので、そうですね。現場指揮官には、貴女様の情報を隠しますので、必要とあらば接触して下さい」

「ん。理解した。どうやってやるの?」

「王家の印を押した手紙を用意します。指揮官にこれを出せば、融通してくれる様にしておきます」

「わかった。アレだね?脅せば良いんだね」

「ま、まあ、そうですな」



王様は会話の内容を包み隠さず説明する。

そして、それを黙って聴く娘達。

話を聞いた王妃様が、娘に質問をする。


「ラーナちゃん?何故その様な事を訊くのかしら?」

「はい。先日、イヴ様にお会いしてきました。元気そうでした」

「まあ?無事で何よりですわね」

「ですが、記憶が無いみたいでした」


娘がそう言えば、驚く王様と王妃様。


「え!?」

「な、なんだと!?」


そして、娘は追い討ちを掛ける。


「自身のことも、理解が出来ておりませんでした。黒龍の自覚を失っていました」


冷静に告げる娘と、とても狼狽える大人の2人。


「な、何という事だ」

「良くないですね」

「はい、お母様。黒龍様を戦わせる訳にはいきません。原因だと断定は出来ませんが、少なくとも今のイヴ様は、年相応の少女です」

「そうですね。様子をしっかり見た方が良いでしょうね」


王様そっちのけで、話を進める女性陣。

色々な対策法を練り上げて行く。

非常事態ではあるが、頼れる物が無いからこその、成長の兆しとも言える。

自力で歩む事を選べば、後は踏みだすだけ。

幸か不幸かは分からないが。




その日の昼。


お城の敷地の前に立っている少女が居た。

後ろにはメイドが控えており、不安そうな表情でお城を見つめている。


黒髪の少女である。


今日は面会の約束を取り付け、仕事を貰えないかを聞きに来た。

王様にお世話になっており、日に日に恩、もとい負債が貯まっている。


何とかしなくてはと、意気込んでも出来る事が少ない。

なので、命令を受けに来た。

精神的にも、何もやってないよりも、小さな仕事をしていた方が、マシだと思う。


面倒くさがりの癖に、変なとこ生真面目な少女である。

かくして、トントン拍子で王様との面会になる。


しかし、




「どういう事ですか!?」


大きな声で、王様に質問をする少女。

そして、それに答える王様。


「あー、いや、十分だと思っている」


王様が申し訳無さそうに、少女に告げる。

納得いかない、と言うよりは、罪悪感とも言うべき感情に、突き動かされる少女は反論する。


「で、ですが!私は何もしていません。せめて何かお仕事を下さい!」


つい、礼儀を忘れる少女。しかし、その事を咎めないどころか、渋々折れる様に宣言する。


「わ、わかった。ラーナと共に、竜巫女の仕事を与える。細かい事は竜巫女に質問してください。お願いします」


口調がおかしくなってしまう王様。そしてどさくさに紛れて、娘へと匙投げをする。


何ともまあ、王様である。


仕事を与えられて、途端に明るい表情になる少女。

その様とは反対に、胃を痛める王様。


そして、少女は竜巫女様の元へと向かう。

余談だが、少女の去った後、王様がとある女性に叱られてしまうのだが、少女には関係のない事だ。




金の巫女の元へと、辿り着いた黒髪の少女は話し掛ける。


「ラーナちゃん」

「こ、イヴ様!?」


急な来客に、慌てふためく金の巫女。しかし、慌てたのは一瞬で、すぐに落ち着く。


「ごきげんよう。イヴ様」

「ラーナちゃんにお願いがあって」


挨拶を省略して、話し掛ける黒髪の少女。

だが、それに怒る事は無く、むしろ嬉しそうに訊ねる金の巫女。


「私に、ですか!?な、何なりと言って下さいな」

「うん。竜巫女様の仕事をやりたいんだけど」

「え!?そ、それは、イヴ様と一緒にと言う事ですか!?」

「え、あ、はい。嫌、ですか?」


おずおずと、黒髪の少女が問えば、悩む金の巫女。悩みながら、ブツブツと独り言を喋っている。


「巫女としての仕事を、黒龍様直々に見て頂けるのは嬉しいのですが。あーでも、恥ずかしいですわね。かと言ってイヴ様のお願いを断るのも。うーん」


完全に1人の世界に入る金の巫女。

そして、不安そうに再度訊ねる、黒髪の少女。


「あの?」


声を聞いて正気?に戻る。そして返事をする。


「は!?あ、その。こ、こちらこそ、不束者ですが、宜しくお願い致します」


返事を聞いて、喜ぶ黒髪の少女。

真っ赤になってしまった金の巫女。返答にも色々と、突っ込み処がある。


すれ違いながらも、お互いへの信頼なのか、歪んだ道は良い方向へと進む。

何はともあれ、少女は仕事を得るのだった。

さて、これから暫くは銀嶺の乙女の話に移ります。

時折黒龍、と言った感じになります。



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