百四話 立場
王様達に見送られた私は、城を後にする。馬車に案内されて、ほんの少しの距離を走らせる。御者さんが馬車を操作をして、メイドさんは私の目の前に座る。無言であったが、一瞬で目的地に着く。
「さあ、着きました。イヴ様」
「あ、ありがとう」
そして目の当たりにする、私の家らしき邸宅。
なにこれ??おっきい。
これが私の家?嘘でしょ?どれだけ贅沢してんの?て言うか、サラッと流したけれど、メイドさんて何よ!?
いや、メイドが何かは、知ってるよ!?お世話してくれる人でしょ?
ほえーお金持ちなんだなあ。
私は、思考を停止してから、メイドさんの後ろを歩く。
邸内へと入れば、お年寄りの男性と、初々しい若い女性が、通り道に沿う様に並んでいる。
まるで、奥の椅子に座れと言われている様。いや、座って欲しそう。
察したので、椅子に向かって進む。
どうやら間違えていないらしい。私が座る椅子よりも、一段低い所で3人は待ち、老人が口を開く。
「イヴ公爵様!よくぞお戻り頂きました。私達家人一同、心よりお待ちしておりました。そして、改めまして私、エルードと申します」
「メイド長の、オルトワです」
「め、メイド見習い、リスタです」
「以上3名。貴女様の家人として、国王陛下より、仕える事を命として受けております」
わー、凄い。私の部下?いや、気を遣うわ。でもまあ、凄い真剣そうだし、返事しなきゃ。
「そ、そうなんだ?」
「はい!身の回りのお世話は、メイド2人が担当します。私の仕事は、この邸宅のあらゆる雑事であります。命令は私へ、小さな事は、メイド長にお願いします」
「う、うん」
「さて、金銭面については、国王陛下からの援助で成り立っています。しかし、当家はいつまでも、王家に頼るわけにはいきません」
まじですか。国王様にお世話になりっきりらしい。色々と返さないといけないんだね?
「私からの提案としましては、何かしらの仕事を頂く事をお勧めします。なので、3つの中から方針を選んで下さい」
そう言われたので、私は耳を傾ける。
まず、1つ目。軍事。
次に、2つ目。政治。
最後に、3つ目が、民事。
つまりは、どれかの役職に従事し、恩を返していく事。
例えば、軍事なら騎士関係で、何かをする事らしい。
ちなみに竜巫女様は、民事関係と言う区分らしい。
兎に角、国の為に何かをしろと言う事らしい。国に尽くしながら、お金を稼ぐのも目標らしい。
何故なら、3人の給与も援助金から支払われているらしいから、収支改善も急ぎである。
悩んでいると、1つ閃いた。それは
「そもそもこんな贅沢な暮らしをしなければ良いのではないだろうか?」
そう思い提案する。
「お金が掛かるのなら、この家を解体すれば良くない?」
「そうですね。しかし、国王陛下から賜った言葉があります。お聞かせします」
曰く、リベリオン家は国の英雄である。
広く知られてはいないが、王家には語り継がれており、この国を支える根幹である。
例え、どの様な理由があろうとも、王家は公爵家に付き添う事は変わらない。
それで、滅びることになっても。
らしい。なにをしたのだろうか?我が家は。
取り敢えず、この家の過去を調べる様に命じよう。
「この家の、過去を調べたいんだけど」
私がそう言えば、難しい顔をする、エルードさん。
「勝手ながら、調べせて頂きました。そしてお答えします。王家は、調べる事を許可してくれませんでした。さらに、この家の中には情報はありませんでした」
え!?どう言う事?それよりも、王家が協力してくれないと言うのが気になる。
つまり、調べて欲しく無いけど、私の家は恩を与えていると言う事かな?
パッと思いつくならば、軍事もしくは、政治系かな?大穴狙いで民事とか?
それも恐らく、王様ですらどうにもならない程の大きい恩。
でも、それは昔の話だろうね。今は私は無職だもん。
‥‥‥もしくは、忘れる前の私が何かしたのかもしれないね。
でも、エルードさんの口振ならば、なにもしていなかった気がするね。
暗に仕事しろ、と言われてるし。被害妄想かもだけど。
何はともあれ、出来そうな事から触らないとね。
あとは少し、気になる事があるから、訊いてみよう。
「ねえ?これらの事を王様に相談して良いかな?」
「は!どの様に尋ねるつもりですか?」
「何か、仕事無いですか?って感じで」
「う、もう少し、陛下に対しては、丁寧にお願いします」
「あ、そ、そうだね。陛下だよね」
「私達の前では気にしませんので。それよりも、貴女様はとてもお世話になっております。御礼含めて面会をするのは、良い考えだと思います」
「そっか」
じゃあ、また日を改めて行くことにしよう。
面会の手続きとか要るかな?やってて貰おう。
「じゃあさ、明後日とか面会したいんだけど」
「承知しました。では、お伺いの予約をしておきます」
「お願い」
「はい。それと、貴女様を何とお呼びしましょうか?お好み頂けないのであれば、イヴ公爵様とお呼びしますが」
うーん。呼び方か。普通に、イヴでも良いけどね。任せるかな?面倒だし。そう思い
「適当に呼んで」
「では、イヴ様でも良いですか?」
「じゃあ、それで」
「畏まりました。それよりも、イヴ様はお着替えをした方が良いかと」
そう言われて服を見れば、彼方此方に切った様な傷がある。成る程、着替えるか。
そう考えれば、メイドさん達が目を輝かせて、私を見ている。
これってアレだよね。頼めって事だよね?
‥‥‥間違い無さそうだね。今か今かと待ってるよ。
「着替えさせてくれますか?」
私がそう言えば、メイドさん達は元気な声で応じる。
そして、玩具にされる私なのであった。