そのご 偉大でちっぽけな旅
少し前までグダグダとやっていたものだがそろそろ自分にも出立の時が来た。聞くところこの島は前の世界で言うところ、マダガスカルくらいの大きさと気候をしているらしい。日本でいえば北海道の三倍程度だろうか(知らんけど)。歩くのは相当骨になると言われたが煙を上手い事操ればまぁなんとか千夜一夜物語の絨毯程度の機動力は示すだろう。という訳でいまは1ヶ月くらいは持つかという程の物資を村人に乞食している。なんたって俺には金がない、飯はない、仕事がない、あるのは煙草と元気だけなのだから。そんなことをしているところに遠くの方から元気で明るい声が聞こえてきた。
「もう行っちゃうんですねナグモさん。」
アルトはとても寂しそうな顔をした。まぁこの2日間程、懐いたのか仔犬のように俺をついて回っていたのだからそんな風になっても仕方はないだろう。
「大丈夫だよ、しばらくしたらまた帰ってくると思うし。」
そう言うとアルトは少し考え込んでちょっと待っててくださいとどこかへ走っていってしまった。
しばらく経って帰ってきたかと思ったら今度は父親を連れてきた。当然のごとく父親はアルトに急にどうしたんだと問いただす。すると思ってもみない言葉が飛び出してきた。
「お父さん、僕ナグモさんと一緒に旅に出るよ!」
……え?
「は?」
「あんだって?」
「僕だってもう20になるしいいでしょ!お願いお父さん!」
…………は?
待て待て待て、一旦整理させてくれ。ただでさえ危なくて辛い旅について来るって?てか20?え?二進法か?いや二進法だったら繰り上がって100になるか。じゃなくてだな、どう見ても見た目年齢12~3歳なんだがなにが20なんだ?
「そうか、もうお前も生まれて20年になるか。」
はいおかしい、20年はおかしい。もしかして一年の日数が違うのかな?聞いてみようか?
「え、1年って365日だよな?違う?20歳なの?アルトが?」
俺が困惑の表情を向けると父親があっと声を上げた。やっぱり日数が違うんだよね?
「そうだな、説明してなかった。我々の一族は人間にしちゃ長寿でな、平均寿命が220歳なんだまぁ普通の人間の2倍に色をつけたような程だ。俺も今年で72だ。2分の1くらいの計算でいい。1年は365日であっている、4年に1度366日にはなるが。」
困惑でしかない。つまりこいつらの年齢がバグってるという感じか、なるほど。外の人間は別に普通に俺と変わらん寿命で生きてると考えればいいか。なるほどわからん。つまり8つ下の子について回られてたわけか、可愛いから許す。
「とにかく、いいよねお父さん。」
アルトはキッと決意を決めた目で父親を真っ直ぐ見つめた。しばらく2人で向かい合ったあとはぁとため息をついて父親がわかった用意をすると折れた。アルトは満面の笑みでこっちに向かってGoodのハンドサインを送った。
「んじゃあ行ってきます。アルトはしっかり守るんで安心しといてください。」
そう言うと父親は深く頷き頼んだぞと告げた。これから旅が始まる。偉大でちっぽけな2人の男の旅が……
「ナグモさん、どうしたんですか。道の最中で止まって。」
「……いやね、地図見て行先は見たんだけどさ。どっちが北なのか聞くの忘れてました。ここどこ?」
偉大でちっぽけな2人の男の旅は……唐突に詰んだ。
[name]アルト・ロフキュタ
[age]20
[Profession]辺境の子
[divine protection]《超越言語(水)》《長寿の勇敢》
[Unique magic]《導きの海風》
[Remarks]見た目と頭脳は子供、年齢は大人