そのよん 異世界
『混ざりて交わる、我ら神の子。』
するりと声が俺の頭を通り去ってゆく。
『交わりて混ざる、我ら鬼の子。』
濾過した純粋な水のように綺麗なその声はどんどんと近くなってゆく。
『山を駈け、海を泳ぎて空を翔ぶ。
我ら虚世の子。』
その声はまるで煙のようにすぅっと消えていく。それはまるで陽炎のように。
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「おぇー……飲みすぎた。」
綺麗な夢とは裏腹に気持ち悪い感覚で目が覚めた。お腹の中がぐるぐるとして口が酸っぱい。
「なんだ二日酔いか?見かけ通り弱いんだな。」
こいつ……お前が強すぎるんだよ!推定20度くらいある酒ロックでバカバカ飲みやがって!俺も4~5杯それ飲めてるからそこそこは強いはずなのに!しかし最高に腹立たしい気分だが耐える。だってアルトの父親だから。そんなことを心の中で叫んでいるとまた父親が話しかけてきた。
「そういえばあんた、行く先とかあるのか?この村で過ごすなら仕事してもらわにゃあいかんのだが……」
真っ当な質問だ。確かトルトル何とかだか王国に行けって話だったはずだが……場所を聞いとくのが吉か。
「あー……行かなきゃ行けねぇ場所はあるんだが土地勘が無くてな、ここはどの辺なんだ?」
そう聞くと父親は地図があると書斎へ案内してくれた。
「手製で悪いがこれがこの辺の地図だ、ところでどこに行くんだ?」
地域毎に分けた地図か……何を書いてるかはやっぱさっぱりだな。ここの丸が今いる土地なんだろう。とりあえず……
「確か名前はトルト……なんとかみたいな」
目の前のオヤジがぎょっとした。何かまずい事でもあるのだろうか。
「そいつは多分トルトトル王国だな、今は隣のアナイ王国と戦争中だが、トルトトル王国はこの辺でも類を見ない大国だからな。まぁ……着く頃には終わってるだろう、ここだ。」
そう言うとオヤジは地図の左端を指さした。場所的にその下の小さな線で区切られてるのがアナイ王国だろう。だがふと気になる。
「この行ったり来たりしてる線はなんだ?」
俺はアナイ王国らしきものと隣の大陸を繋ぐ線を指さした。オヤジはん?と声を漏らして直ぐに定期連絡船だよと答えた。定期連絡船、文明レベルは一定ありそうだが整地なんかがされていない……ここが田舎なのか?
「そういえば王国ってのはどんなんなんだ?王国ってことは君主制なんだろうけど街とか全くわかんねぇからな。」
そう言うとオヤジはふむと考え込んだ。幾許か経って口を開くと信じられないレベルの話が出てくるもんだ。王国は警備が厳しいが最近は電気で動く恐ろしく高精度な機械兵が検問なんかを担当していて魔法由来の物質は一切使われていないから魔法で操ることが出来ないだとか、本人の魔力をチャージしたり大気中の魔素だかと言われるもんをチャージしたりで動く四輪駆動車があるだとか、嗜好品も多く売られて居て飯はうまい、しかもピリ辛料理がうまいって言うことは調味料なんかもだいぶ発達してる。下手したら元の世界の日本やアメリカよりも発達してる。しかし元の国では当然改善されるべきな部分が全くの手付かずだったり色々おかしな部分もあるらしい。戦争もやってるってんだから本当に色々おかしすぎる。
どうやら思っていた異世界とは全く違うようなもんだ。