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そのいち 異世界に煙草って売ってますか?

 どこかここじゃない場所で仕事もしないで一日中煙草でも吸いながらぐだぐだと生きられたらなぁ、と最近いつも思う。それこそラノベでよくある異世界転移で俺TUEEEEでも出来たら最高じゃないか?いや、よく考えたらアイツらも結構魔物狩って働いてるし結構嫌かもしれない。通りすがりの石油王にでも養ってもらってホノルルとかで暮らしたい。そういえば煙草が切れそうだからそろそろ買わないといけない、昨日給料日だったし自分へのご褒美で1000円するやつでも買おうかな、とか思いながら帰る俺なのだがおいそこ自分語り長いとか言うな。そんなことを考えながら帰路に着くいつもの残業終わりの夜、それはそれはいつも通りにアパートの扉を開けるとそこはいつもと違う謎の白い部屋だった。


 オッスオラ南雲 柊煙(なぐも しゅうえん)!残業終わりに愛しの我が家に帰ったら散らかったゴミ屋敷が真っ白い部屋になっていたぞい!なんで?

「……あ、すんません部屋間違えました。」

パタンと扉を閉じて部屋番号を見直すがどう考えても自分の部屋だ。鍵も自分ので開けたしどこからどう見てもいつものアパートだ。意を決してもう一度扉を開く。

「あっえっと……お邪魔します?」

白い部屋の中には何も無く立方体のような内装にとてもシンメトリーを感じる、てか白くて立方体ってマジモンの豆腐建築だな。扉を閉じると部屋の奥の方に白いワンピースみたいなものを着た女が寝転びながら煎餅を食べていた。

「……なんで煎餅食べてんだこいつ。」

そう言うとやっと気づいたのか慌てて食べていた煎餅を飲み込み、女は如何にも女神みたいなポーズをとった。

「ようこそ、お待ち申しておりま……ごほっごほっ!喉に煎餅の粉が詰まった……!」

ぐだぐだすぎる、というかなんだこれは何を見せられているのだろう俺は。女は慌てて空中からペットボトルの水を取り出してごくごくと飲み干した。いやペットボトルにコンビニの売上シールが貼られてるし。

「ようこそ、お待ち申しておりました。貴方にはこれからトルトトル・トラリ……トライグル王国へ行っていただきます。」

いやこいつ噛んだな。てか威厳もくそもないぞ、噛んだし煎餅喉につっかえてるし。

「あのー……えっと女の方?国の名前もう一度言って頂けます?」

「トルトル……トルトトル・トラ……えー、トライグル王国です。」

酷すぎないか?いきなりここに行けって言っておきながら名前言えてないし、なんだっけ?トルトトル……トラなんちゃら?

「まぁえっとタルタルソースでもトルトトルなんちゃらでもいいんですけどどこですかそこ。てかここがまずどこですか?」

俺はとりあえず今持つありきたりな疑問を投げかけてみた。ある日家に帰ると家が豆腐建築で変な人が煎餅食べててトルトルなんちゃらに行けとか本気で意味がわからない。行けと言われるならドバイに行きたい。

「某王国は今から行っていただく別世界の辺境のちっちゃい王国の名前です。世界規模でいうと琉球王国ぐらいの国です。あとここは私の家です。」

 こいつ国の名前省略しやがった。てかそれよりここがこの人の家?まじで?

「俺の家は?」

謎の女の言葉に俺は間髪入れずに疑問符を投げかけた。すると女はにっこりと笑ったまま元気よくこう答えた。

「跡形もなく消しました。」

「は?」

何も言えねぇ……え?まじで消えたの?俺のラスボス直前まで進めたプレイ時間50時間越えの難易度ぶっ壊れクソゲーは?てか備蓄の煙草も消えたの?

「さっきからソワソワしてますけどもしかしてあなたも異世界転移楽しみな方ですか?それなら話は早いですね。」

にこにこして足早に話を進めようとする謎の女にとうとう俺はブチ切れた。

「違うわ!!!はやく煙草吸いたいんだよ!!ライターで燻るぞ!!」

そう言ってキレるとさっきまでにっこにこだった女が何故か逆ギレをかましてきた。

「知るかこのヤニカスが!!私女神ぞ!?!?なんつー口聞いとんじゃ神の奇跡で■■■(ピーーー)■■■(ピーーー)して消し去んぞ!!!」


 〜小一時間後〜


「ハァ……んで俺が抽選にあたって……異世界転移することになったと……そういうことっすね。」

そう言いながら俺はやっとありつけた煙を吸い込み、この空間で唯一の癒しに身を休めた。

「そういうこと、ってか貴方体力無さすぎない?」

俺は女神にまぁなと返して深く煙を吸い込んだ。至福過ぎる。とりあえず状況を整理すると神様の会議みたいなもので俺の異世界転移が決まりそれを俺に告げるために俺の部屋が消滅してクソゲーも備蓄の煙草もついでに消滅したという訳らしい。

「そんでやっぱり異世界転移とくればチートアイテムとかチートスキルみたいなもんくれるんすか?」

俺は女神に向かって唯一の希望とも言える質問を投げかけた。この状況で一発逆転異世界スローライフが築ければまだマシだと言うものだ。

「ンフッ……ラノベの読み過ぎじゃない?そんなもんあげるわけないじゃない。」

なんだこいつ笑い方気持ち悪いな、煙草を額にでも押し付けてやろうかな。

「んじゃなんも貰えないんすかね?異世界乞食冒険譚ですか?」

この問いかけに女神はまたげへげへと笑いだした。笑い方どうにかならないのかなこの人ほんとマジで。

「私達から貴方にさずけるのは二つの加護と二つの固有魔法、更にはRPGではお決まりのちょっとしたお小遣いみたいなものと服です。」

「なんで二個ずつなんすか。」

「異世界冒険ニッコニコで二個ずつです。」

クソこいつしばきてぇ、てかもしかして神様ってみんなこんなのなの?マジで?

「さて、貴方はどんなものが欲しいですか?他に分からないことがあれば今質問して頂いても構いませんよ。」

そういえばずっと気になっていたことがひとつだけあった。これは俺の生死にも関わることだ。今のうちにしっかり聞いておかないと本当に今後の人生に関わる。

「あー……すみません。質問なんですけど向こうの世界に煙草って」

「ありません。」

嘘だろ、死ぬしかない。いや、まだだ。煙草が無いなら煙草を作り出せる魔法かなんかをこの女神様に頼んでしまえばいいのでは?

「言っておきますが貴重な固有魔法枠に煙草作れる魔法とかダメですよ。まじでそんなの付与しちゃったら私最高神様にどちゃくそ怒られるので。」

「すみません、第二の人生キャンセルで。」

最後まで言う前にスパーンと頭を叩かれた。虫歯を削られた時ぐらい痛い。にしても煙草がない世界なんて酸素がない世界ぐらい生きていけない。異世界転移したところで1時間そこらでイライラし始めて冒険とかそれどころではない。

「はぁ……じゃあ特別に煙草が無限に出てくる鞄でもあげますからお願いします。」

女神様本当に大好きです、一生信仰します。出来れば無限に思い描いた種類の煙草が出てくる鞄でお願いします。そう思いながら俺は跪き手を組み天を仰ぎみた。

「はやく基本ステ決めてください。」


「ほんとにそれでいいんですね。」

究極最高マジLOVE女神様が再三決めたステータスの確認をしてくる。俺は大丈夫っすよと軽く返事を決めると世界へと通じる穴の前に立った。準備が出来たらその穴から飛んでくださいと究極以下略が言う。とりあえずもう一本吸ってから……

「はよ行け!」

ガンッと後ろから蹴られて真っ逆さまに落ちた。この後もしかして炎のように燃えるのかな。




 [name]南雲 柊煙

 [age]28

 [Profession]異世界転移者

 [divine protection]《????》《????》

 [Unique magic]《????》《????》

 [Remarks]ニコチン中毒


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