第五話:セシリア姫と出会う
三人が振り向くと、真っ白で高級そうなドレスを着た、スラリとした凄い美人が立っていた。
「ちぇ! もう見つかっちまった」とオーケがあきらめ顔をしている。
「あ、セシリア姫だ」とアストリッドが気づいた。
王室の第一王女だ。
第一と言っても一人娘だけど。
確か、他に兄弟姉妹はいなかったはずだ。
遠くからしか見たことなかったけど、間近で見るとさらに美人だ。
肌が透けるように白い。
ストレートで長いきれいな金髪。
顔にそばかすなんか全然ない。
あーあ、うらやましいなあとアストリッドは思った。
「あの、もしかして、あなたたちは泥棒さんでしょうか」とセシリア姫がたずねると、
「はい、泥棒さんですよ。それがどうかしましたか?」とオーケがぶっきらぼうに返事をする。
そのオーケをさえぎって、
「泥棒じゃありません。この城のどこかにあるドラゴンキラーという剣を探しに来たんです。それがあればベルーダドラゴンを倒せるんです。そのことを王様にお伝えしたくて、魔法で入り込んでしまいました」とアストリッドが答えた。
「はあ、えーと、つまりベルーダドラゴンを倒せる泥棒さんなのでしょうか?」とセシリアが問い直すと、
「そうですよ」とまたぶっきらぼうにオーケが答える。
「違います!」とアストリッドがオーケを睨みつけながら言った。
アストリッドたちとセシリアが話していると、気絶から目が覚めたのか、さっき三人で押しつぶした正門の門番がやって来た。
「このガキども! ぶっ殺してやる」ともの凄い形相で走って来る。
その門番の迫力に思わず、「やばい逃げろ!」とオーケが逃げ出すが、その時逆方向からも男が現れた。
黒っぽい服装をして体がでかい。
オーケを捕まえようとする。
「クソ!」と近くの塀を登ろうとしたオーケが、大男に服を掴まれ、乱暴に地上にひきずり倒された。
「イテテ!」オーケは庭園の石に向う脛を当てて、地面に這いつくばる。
その大男はさらにオーケに殴りかかろうとするが、「ヨアキム、やめなさい」とセシリアが大男に近づいて、なにやら手を動かしている。
ヨアキムと呼ばれた大男は、あっさりと大人しくなった。
「今のは魔法ですか」とセシリアにアストリッドは聞いた。
すると、セシリアは少し笑って答えた。
「私には魔法なんて使えません。今のは手話です。ヨアキムは口が使えないんです。耳も少し不自由です。普段はアンドレアン宰相が城外を視察するときなどの警護役です」
レオは側で見ていて、アストリッドが思わず聞いてしまったような質問にちゃんと答えるなんて、セシリア姫は貴族なのにけっこう気さくな人なのかなあと感じた。
そうこうしているうちに他にも衛兵たちが駆けつけて来て、結局、三人とも逮捕されてしまった。