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第三話:出会った途端にケンカする

 昨日の約束通り、早朝からレオとオーケは連れ立って、城の周辺をウロウロと歩いていた。

「確かこの辺りにあったはずだが」とオーケがキョロキョロしている。 

 城はかなり高い壁で囲まれており、城壁は真っ平らで手をかけるところは無く、とても素手では登れそうにはない。


「この前、城に忍び込みやすい場所を偶然見つけたんだよ。人目につかない建物の陰になっているところに木が生えていて、その上のほうの枝の先端が城の壁を越えて中に届いていたんだ」

「大丈夫かよ、やめたほうがいいんじゃないのか」とレオが心配そうな顔をするが、オーケは、「いいから、お前は俺が木を登るのをちょっと手伝うのと、あと、見張りをしていればいいんだよ」と横柄な態度をとる。

 レオは、オーケの奴いつも偉そうなんだからと呆れた。

 出来れば、その木の枝がすでに伐採されてればいいなあとも考えながら仕方なくオーケに付いて行く。

 

 レオたちが城の周囲をうろついている頃、アストリッドは正門から通行証をかざして入ろうとした。

 城の正門は兵士たちや武器の積まれた荷車の往来でごった返している。


 するとアストリッドは城の門番に止められた。

「お前の通行証は停止された。そういうわけで城の中に入れるわけにはいかない」

 どうやら、ドラゴンに敗北した責任を全てスヴァンテ・アベニウスに押し付けるらしい。

 自分はスヴァンテの孫だから同罪のようだ。

 すっかり罪人扱いされているのに、アストリッドは内心立腹したが、ここは低姿勢で行くしかないと考え直した。


「この城にベルーダドラゴンを倒せるドラゴンキラーという剣があるんです。中に入れて下さい。よろしくお願いいたします」とアストリッドは頭を下げるが、

「うるさい! わけのわからないことを言うな」と背の高い門番に服の後ろの襟を引っ張りあげられて、アストリッドは空中で足をバタバタさせている。そのまま門の外まで運ばれて城から追い出された。


「痛た!」

 門番にひょいと放られて、地面をゴロゴロと転がるアストリッド。

 昨日降った雨のせいで、まだ地面の土が濡れているので着ている服が泥だらけになってしまった。

 やれやれ、後でヨハンナさんにあやまらないと。

 アストリッドは服をはたきながら、「全く融通の利かない門番ね」と独り言つ。これでは何度頼んでも同じ対応だろう。

 仕方が無く、一旦、アストリッドは引き下がることにした。


 魔法で城の中に入る手もあるけど、それじゃあ泥棒だ。

 それに、実はアストリッドは魔法を使うのに自信が無い。

 政府にコネを持っている人を探すしかないのかなあ、他に門はないのか、どうしようかなあと考えながら歩いていると、いつの間にか人通りの少ない場所に来てしまった。すると城壁の横の大木に少年が二人登っているのに出くわしてしまった。


 背の高い少年がいる。端正な顔立ちで、髪は金髪だ。

 大木の枝に乗っている小柄な赤毛の少年が、金髪の少年に手伝ってもらって、壁の上に乗り移ろうとしている。

 何だか怪しいぞとアストリッドは思った。

「ちょっと、あんた達、何やってんの! お城に忍びこむつもりなの」と二人に声をかけた。

 

 いきなり声をかけられて、

「ち、違うよ、えーと、剪伐業者だよ」とレオはしどろもどろにごまかしたが、

「うそつくな! 泥棒ね」とアストリッドに言い返される。


 うまく城壁の上に飛び移れそうなところを妨げられて、

「邪魔すんな! そうだよ、泥棒に入るんだよ!」と逆切れするオーケ。

「な、何言ってんだよ、オーケ」とレオが慌てていると、アストリッドが意外なことを言いだした。

「あたしも連れてって!」


 何を突然言いだすんだ、この顔面そばかすだらけの女はとオーケがびっくりしている。

「どうしてお前を連れて行かなきゃいけないんだ、お前も泥棒かよ!」

「泥棒なんかじゃない。だけど、お城に用があるの!」とアストリッドが木の根元に走り寄ってきて、なおも二人に頼み込む。


「あっち行け!」

 人目についてしまうのがまずいのでオーケが追い払おうとするが、

「じゃあ、大声を上げて邪魔してやる!」とアストリッドが怒鳴る。


 もう大声出してんじゃねーか、この馬鹿女は。

 頭に来たオーケは、「ふざけんなよ! このそばかす女!」と思わずアストリッドを罵った。

 一番気にしている事を言われて、アストリッドは激怒。

「何だと、このチビ!」と言い返す。

 チビと言われてますます逆上するオーケ。

「このそばかすブスが! そこで待ってろよ!」

 その怒りの様に、オーケの奴、やっぱり背の低い事を気にしていたんだなあとレオは思った。


 オーケは塀に乗り移るのを止めて木を伝って地上に飛び降りる。

 アストリッドの胸倉を片手で掴んで、もう一方の手でナイフをちらつかせながら、「てめえ、殺されたいのか」とアストリッドを脅す。

「オーケ、やめなよ、ナイフは危ないよ」とレオがなだめようとするが、

「やってみなさいよ、そんな勇気ないでしょ、この赤毛チビ!」と自分より背の低いオーケに対して、傲然とした態度をアストリッドは取る。

「チビの上に赤毛だとー!」

 髪の毛の色のことも気にしてたんだなとレオは思った。


「お前なんかにナイフなんかいらねーぜ!」

 オーケはアストリッドに掴みかかるが、アストリッドも負けじとオーケの首をしめる。

「このそばかすブス!」

「うるさい、赤毛チビ!」

 両者が顔面を互いに掴みあって、ついには地面に転がって泥だらけで、ドタバタとケンカになってしまった。


「やめろよ、二人とも」とレオがオロオロしていると、

「おい、ガキども! そこで何をやっているんだ」と城の衛兵らしき者がやって来る。

 ハッと冷静になる三人。

「すみませーん、遊んでただけでーす」と足早にその場を去った。

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