第14話 ナギの対戦相手
「初め！」
試験官の合図によりガウェインの試験が始まった。
開始と同時に距離を詰める試験官、それに対して逃げではなく接近を選択するガウェイン。鋭い金属音が鳴り響き鍔迫り合いとなる。
「はあっ！」
「くっ！」
体格差で少し分があるのは試験官、そのせいで鍔迫り合いに負けて体勢を崩してしまう。その隙を逃すほど優しい試験官ではない、絶えず連撃を打ち込みにかかる。
試験官の武器は刀に近い形状をしていて、手数こそ両手剣には劣るものの刀とは思えないその速さで両手剣の防御を崩していく。
何回かの防御漏れが起こり腕や顔に少しずつ傷が増えていく。
「クソっ！」
なんとか身体を転がし連撃から抜け出すが試験官も追いかける。
(まだ……もっと……)
ある程度距離が取れたから即座に身体を起こして反撃を行う。
慣れない武器なりに連撃を繰り出しそれなりの事は出来てるがやはり付け焼き刃、手数で上回り傷はつけれるが有効打とまではいかない。
(仕込みは上々……)
「……異能解放」
「だいたい君の剣の腕はわかったよ」
長期戦になると勝ち目が薄くなると判断したのか試験官も状況を打破しようと異能を使用する。
「異能解放、【土ノ意志】」
「なにっ！？」
異能によりガウェインの足場を操作し体勢が前かがみに崩れ、それに合わせるかのように顔に膝をお見舞する。
「がっ……」
大きく吹っ飛ぶガウェイン、だが──
「……やるな」
ガウェインもタダで蹴られた訳ではなくその足に剣を合わせていたためその足には切り傷がついてる。
(そろそろだな……)
(おかしい、なんだこの疲労感は……異能か？ なら早く決着を……)
「【土ノ意志】……」
また同じように足場を操作。
「ここっ！」
だが、ガウェインも同じような手は喰らわない。前に倒れるのを利用し、少し盛り上がった足場を踏み試験官の居る前へ跳ぶ。
「しまっ！？」
虚を衝かれた試験管は焦って防御に移るがそれよりも速くガウェインの二連撃が入り左足を負傷、返す刀で左腕も斬りつける。
「くっ……そ……」
あまりのダメージに膝から崩れ落ちる試験官、ガウェインは後ろから首筋に剣を当てる。
「……終わりだ、降参しろ」
深いため息をついて上から試験官を見下ろす形で忠告する。
「……いいや、まだ終わっていない」
辛うじて上がる右腕で剣を握りしめ立ち上がる。
「縛れ【鮮血王】」
異能を使用し、試験官の傷口から流れる血が鎖に変化し地面へ伸びて試験官を拘束する。更には地面に散らばった血は地面から生えるツララのようになりそれが試験官へと向かれる。
「なら最期までやり続けるか？」
差は歴然、完全に勝負は決まった。
「……降参だ」
試験官の降参により試験終了、それと同時に堂々とした姿で闘技場を後にする。
◇
「うーん、勝ちはしたけどそこまで最強！ って感じじゃなかったね」
試合を見たユムがそうつぶやく。
「いや、戦闘中に試験官の動きがどんどん鈍くなってたの気づいてたか？ 多分戦闘中に【鮮血王】で試験官の血を少しづつ抜いてたんだろ。あんなことされた側はたまったもんじゃないぞ」
「うわぁ……ガウェインとは絶対にやりたくないな……」
「さすがに貴様は気づいていたか」
後ろからガウェインが声をかける。
「おー、おつかれ」
「おつかれさんっす」
「む、貴様はさっきの、いい異能を持ってるな」
「ありがとさん。あれ、残ったのってあとはナギだけじゃなかったっけ」
「まじ？」
周りを見回すと友達と喋り始めてる人達がちらほらと見られる。
「貴様で最後らしいな」
「だね、行ってくるよ」
俺の相手強くないといいな……
§ 第14話 ナギの対戦相手 §
「あれ、試験官が居ないな……」
さっきまでの流れだと居てもおかしくないんだけどな。
────
「そういえばガウェインはナギの異能知ってる？」
「知らんな、ユムもか」
「うん、ここで初披露だね。やっぱり強い異能なのかな」
「奴ならどんな異能でも上手く使える気がするがな」
「間違いないね。あ、来たねナギの対戦相……手……」
「どうしたんだ急に黙っ……て……おい」
「さすがにナギでもこれは……さすがに相手が悪すぎる」
「あまり言いたくはないがこれは……あまりにも……」
────
「お、来たか」
「いや〜ごめんごめん、遅くなった」
「いえ、自分も今来たので」
どうよ？ これがモテる男のテクニックよ。
(ナギまだ彼女どころか女性とまともに話してないじゃん)
……うるせ。というか観客席ざわついてるな、俺そんな注目されてんの？
「えっと、ナギ・ロード君だね？ ごめんね、担当の試験官が急に体調崩してさ、代わりに僕が出たんだ。あぁ、緊張しないで良いよ、今はただの試験官だから」
「大丈夫です、特に緊張しないタイプなので」
「それは良かった。じゃあ武器を選んで」
武器ね……お父さんから暗殺者なら環境にある物で戦えって言われたから武器はもちろん、日用品でも戦えるんだけど……使い慣れてるこれにしよう。
そう言って手に取ったのはガウェインが使っていたものより少し短い逆手で持つタイプの短剣2本。
「ダガーね、では構えて」
男は構える、赤い鎧に掛けてある赤い剣ではなく、箱に入ってあった片手剣を。
「はじめ！！！」
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