第12話 またお前か
受付が終わり少し暇してた頃にキュナクから念話が届く。
(ナギー)
「ん? どしたキュナク」
(ちょっと優しすぎない? さっきのやつナギなら一瞬でしょ?)
さっきの……? あぁ、聞こえてたのか。
「一般人だぞ? それにここだとあいつが普通なのかもしれないから変に動けないんだよ」
(でもナギがバカにされた感じがしてやだ)
「心配してくれてるのか、でも気にしてないから大丈夫だよ」
(ナギがそう言うならいいけど……)
「それより試験までちょっと時間あるからどこか広いところで遊ばない?」
(いいね、広いところ……ペインフォレストにちょうどいい場所があった気がする)
「じゃあそこで待ち合わせ」
その後、待ち合わせの場所でキュナクと森で遊び(模擬戦)をして時間を潰した。
「ふぅ、試験前にいい汗かけたな。ん?」
そろそろ試験を受けに行こうと思い、中に入ろうとしたがヴァーミリの門の前で人だかりができていて入ろうにも入れなかった。
「何があったんだろ……すみません」
たまたま近くにいた学生らしき人物に声をかける。
「ん? あ、お前ガウェインと喧嘩してたやつじゃん」
「あれ喧嘩じゃないんだけど……それよりなんか事件でも起こったの?」
「え、気づかなかったのか? ペインフォレストの方で災害級の【穢れ】が発生してたからヴァーミリの先輩方や教師が総員で調査に向かってるんだ」
ちなみにだが、この世界では脅威レベルは次のように表される。
害獣級、魔獣級、剛魔級、災害級、魔人級、魔王級。
ちなみに今現在で発令された最大の脅威レベルは魔人級である。
それよりなるほど、【穢れ】か……あー、森で災害級の【穢れ】ね……ふーん、そっかぁ……
(僕達だね)
僕達だね。
「へ、へぇ災害級ね……ちょっと言い過ぎなんじゃない?」
「いや、バルバトスの消失が確認されて2年、あのサイズの【穢れ】は初めてだからな。災害級とまでは行かなくても警戒はして損は無いぜ」
(まぁ僕の【穢れ】だしね)
少しは加減しろよ……
(その【穢れ】をずっと避けたり流転したりしてたのは誰かな? あれやられると少し自信なくすんだよね)
「はい……すみません」
「何が?」
「あ、いや、なんでもない」
なんか申し訳ない事をしたな……次からは場所を選ぼう。
「そういえば自己紹介が遅れたな、俺はユム・クルーグ」
「ナギ・ロード。よろしくなユム」
「ナギもここ受けるのか?」
「受けようとしたらガウェインってやつにちょっかい出されて困ったけどね」
「あれがちょっかいね……そういえばナギの異能とかってもう発現したのか?」
「まだだけどユムはもう発現してるのか?」
「なるほどね、基本は教会に行って神父さんにお願いして異能発現させてもらうんだ、異能って【神託】を持ってる神父さんにしか発現出来ないんだよ。でもヴァーミリには【神託】持ちの教師がいるらしいからあとで行きな。ちなみに俺の異能は鉄を自在に操れる【鉄ノ処女】だったぜ」
そういうシステムなのか。てか異能強すぎるだろ。
「わかった、筆記試験が終わったら聞いてみるよ」
「生徒諸君! たった今ペインフォレストの調査が終わったため、これより王立ヴァーミリオン学園の試験を開始する! 受験生は順に中へ入れ!」
お、調査終わったらしいな。
「じゃあ俺こっち試験会場だから」
「おっけ、落ちんなよユム?」
「縁起でもないこと言うなよ……」
しばしの別れを告げ、それぞれの会場へ進む。
§ 第12話 またお前か §
筆記試験では特に目立ったことはなかったかな。
ただ、同じ会場にガウェインがいたのは本当に嫌だったかな。まぁ、向こうから特に手出しはされなかったから良かった。
────────
(くそっ……なんで私の【魅了】が効かないの……!)
(なにきみ? ナギの邪魔しようとしてる? そんなの僕がさせる訳ないでしょ? 邪魔だからお前は寝てろよ)
(うっ……急に眠気が……)
────────
あ、ガウェインの取り巻きの女は開始10分で居眠りし初めたんだよね、よっぽど簡単だったのかな。
そんなことがあり実技試験へ移る。
「あの試験官、俺まだ異能発現してないんですけど」
実技会場へ向かう途中で試験官に話しかける。
「了解した、今この場で異能発現していない者は挙手をしろ!」
「「「はい!」」」
俺を入れた数名が手を挙げる。声でっか。元気だねー。
「ここから東に異能研究所という場所がある、その者たちはそこへ向かい異能発現を済ませてこい!」
「「「はい!」」」
声でっか。
◇
ここか……異能研究所。
「貴様、異能発現していなかったのか」
「またお前か、えっと……ガウェインとか言ってたな」
「そう嫌な顔をするな。すまなかったな、あの時は冷やかしだと思ったが、一度拳を交わした今では貴様は只者では無いことがわかる」
「ほう」
実力を測れるのはいい事だな。
「だが、俺の方がまだ上だな」
測れてないらしい。
「はいはい、ありがとさん早く入るぞ」
「ふん、言われずとも」
ガチャリと研究所の扉を開ける。
「ん? おやおや〜見ない顔だね〜、新入生……大方、異能発現ってとこかな〜」
扉の向こうに居たのは白衣に身を包み、眼鏡をかけた理的な女性だった。
「はい、異能発現をお願いしに来ました」
「早く俺の異能を教えろ」
「おいアホ、言葉遣いには気をつけようとか思わないの?」
「あっはっは、いいよそれくらい。ここにいる全員異能発現ってことでいいんだね? じゃあ順番に並んでよ」
「ふん、なら俺が先、ぐえっ」
危ない、こいつよくこれで生きてきたな。
「お前ちょっとは自粛しろ……俺と後ろ来い」
「なぜ貴様と……!」
「【死の拳】躱した技、知りたくないのか?」
「………………知りたいな」
素直かよ。
「じゃあ後ろ行こうな」
「くっ、姑息な真似を……」
愚痴愚痴言いながらちゃんと後ろに回る辺り多分まっすぐなやつなんだろうな。
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