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第10話 2年後

「ナギ〜決まったぞ〜」

 

「いや遅せぇよ! ゼェゼェ……何時間走ったと……ゼェ……思ってんだよ……」

 

 玄関からナギを呼ぶと、上半身裸その上汗だくのナギが現れた。

 

「え、まじでずっと走ってたの? ウケる」

 

「お前が言ったんだろ……まあ、いいや……それで? 肝心のメニューは?」

 

「ほい」

 

 約8時間ほどかけて作ったナギの修行メニューが書いてある紙を渡す。

 

「えっと…………あー…………ふっ………………えっ…………は?…………え、これまじでやんの?」

 

「まじよ」

 

 目で追うように読んでいた紙。そこに書かれてたのは口に出すことすら億劫になる地獄のようなメニューだった。簡単に要約すると、とても重い重りをつけて毎日生活しましょう。とてもきつい筋トレをしましょう。余裕があればさらにきつくしましょう。ということ。

 

「あ、そう…………ちなみに聞くけどなんでこんな修羅みたいな修行メニューができたの?」

 

「俺が若いころやってたメニューを元にフィジカルを最大効率で蓄えれるのはこれしかないなって」

 

「軍人でも投げ出すレベル」

 

「ぐんじん? 騎士団のことだったらたしかにそれやらせたら2日で死人が出るな」

 

「それを可愛い愛弟子にやらせるの?」

 

 などと疑問を投げかけたら何を言ってるの? と言いたげな顔が帰ってきた。

 

「寝ぼけてんのか? こっちにはキュアラインがあるじゃん」

 

「え、あれはもう無いって……」

 

「バルバトスの所にはないけど、他のところ探したらあったわ」

 

「え、それ探してたからあんな時間かかったの?」

 

「…………」

 

「せめて否定してくれよ」

 

「俺は正直に生きていたい」

 

「沈黙は嘘じゃないってか! クソが!」

 

「それはそうとなんでここまでして強くなりたいんだ? 今のお前の強さなら不自由無く暮らせる筈だろ、14のガキが守りたいほど大切な人がいるなんて言い出すんじゃないだろうな?」

 

 人のこと言えないけどジオウ話逸らすの下手すぎるだろ……それより確かになんでなんだろうな。

 

「んー、強くなりたい理由ね…………ムカつくじゃん?」

 

「ほう?」

 

「負けっぱなしってのは単純にムカつくし、やり返してやろうって気持ちの方がでかくてさ」

 

 前世ではそれなりに実績残したからか、殺れない相手ってのは無性に腹が立つようになってるんだよな……

 

「ムカつく、悔しい……か、十分だと思うよ俺は」

 

「あ、あとは魔王を倒すことかな」

 

「は? いまなんつった?」

 

「え、魔王を倒すって……」

 

「もし本気で言ってるなら眼を覚ませ、死ぬぞ」

 

 いきなり大声で怒鳴られる。

 

「なにが?」

 

「あっ……いや、すまない。魔王なんてのは御伽噺だろ?」

 

 俺が転生した理由って魔王を倒すためなんですよね……

 

「詳しくは言えないが魔王は確かに居る。そしてそいつを倒すために俺は生まれてきた」

 

「……気は確かか?」

 

「自分でも何言ってるか分からないけどね」


「……わかった。とりあえずこのメニューを毎日こなせばラゴ……魔王討伐も夢じゃないかもな」

 

 ラゴ? 噛んだだけか。

 

「あとは異能がどんなのになるかだよなぁ」

 

 しょうもない能力じゃなかったらなんでも良いけどね。

 

「お前のことだからとんでもない異能を発現するだろうよ」

 

「そりゃ嬉しいね」

 

 

 

 

 ◇

 


 

 

 生まれて一番最初に見たのは血まみれのお母さんだった。そのお母さんが私にこう言った。

 

「もうすぐお母さんは居なくなっちゃうからお母さんの分まで生きて」

 

 僕は言った。

 

「ひとりじゃむりだよ」

 

 お母さんは笑ってこう言った。

 

「ひとりじゃない。お母さんと同じように人間の友達が、あなたを大切に想う人間の友達が必ず現れる」

 

 その時の僕はわからなかったけど、ナギが僕にとってのその人なんだってすぐにわかった。

 あのジオウって人は最初見た時すごく怖かったけどナギは違った、僕が痛くしてもナギは笑って許してくれた、だから僕はナギとずっと一緒に居たいって思った。

 そのためにはナギとお話できる様に''ネンワ''ってやつを覚えなきゃいけないらしい、だから森中の魔獣全員に聞いて回ろう。ひとりくらい知ってる魔獣はいるはずだよね。

 

 それからキュナクは森中を駆け巡った。

 その結果、念話を知りうる魔獣の情報を手に入れた。

 

 色んな人に聞いたけど、アナスタシアって魔獣が念話出来るらしいから早速聞いてみよう。

 

 

 

 

 

 

「ここがアナスタシアのいる洞窟かー。おーいアナスタシアさーん!」

 

 バルバトスの住処の様に草木が生い茂る豊かな洞窟とは違い、鍾乳洞のようなじめじめした洞窟だった。

 

「誰だ? 我を呼ぶ者は……」

 

 奥の暗闇から出てきたのは洞窟の半分を埋める程の太い体の大蛇だった。

 

「あ、あなたがアナスタシアさんですか?」


「お主……バルバトスに似てるな」 

 

「それお母さんです。お母さんはもう……」

 

「そうか……何をしにここへ?」

 

「念話を教えて欲しくて来ました」

 

「念話? 人間と会話したいのか?」

 

「はい」

 

「そうか……」

 

(バルバトスの子だから余計な心配はいらんだろうが、念の為いつもやってる修行をやらせよう)

 

「いいだろう。しかし、我の修行に耐えれればの話だがな」

 

「その修行って何するの?」

 

「我が用意した魔獣と手合わせをするだけだ」


「どのくらいかかるの?」

 

「そうだな……我が認めるまでだからなんとも言えんな」

 

「わかったよ、じゃあまた明日来るね」

 

「待っておるぞ」

 

 洞窟を後にするキュナク。

 

「……珍しいじゃねえか、タシャが稽古つけるだなんて」

 

「黙れ、我が稽古をつけるのではない」

 

 暗い洞窟でそんな思念が飛び交う。

 

「同じようなもんだろ? で、誰にやらせるんだよ」

 

「適当にやらせるさ、そうだな……お前やってみるか?」

 

「別にいいぜ、兄弟と代わり代わりでやらせてもらうか」

 

 キュナクの相手が決まったところで思念が止んだ。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「アナスタシアさんいるー?」

 

「おうおう、何言ってんのかわかんねぇが俺はいるぜ!」

 

 現れたのは三体の全身が真っ白な毛で覆われたゴリラのような魔獣。

 

「あなたがアナスタシアさんの言ってた相手ってこと?」

 

「聞こえねぇけど、タシアに任されて今日からこの俺キカザと兄弟のミザとイワザが当番制で相手するから覚悟しとけ!」

 

「見えないけどここに例の子がいるのかな、自己紹介遅れたね、僕はミザ、目が見えない。こいつはキカザ、魔獣同士の思念すらも読み取れない。最後にイワザ、思念を発せない」

 

「…………」

 

 コクリと頷くイワザ。

 

「大きい……」

 

「最初はこの俺キカザが相手するぜ!」

 

「おっけー、じゃあよろしくお願いします!」

 

「んん! 聞こえねぇけどお願いされた気がするぜ!」

 

 

 

 

 

 

 ──そして、ナギとキュナクのお互い違う修行が始まってからもうすぐ2年が経とうとしていた。

 

 

 

 

 § 第10話 2年後 §

 

 

  

 

 

 

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