第9話 今度こそ修行
洞窟を出て夕焼けより少し暗い森の中を進みジオウの家に戻る。途中何体か魔獣と遭遇したがキュナクがほとんどの魔獣を殲滅したため2人は無事に家につく。
「お、戻ったか」
「ただいま」
「キュオ!」
「道中大丈夫だったか?」
「うん、キュナクが守ってくれたよ」
「そうか、今日はもう暗いから休んどけ。明日こそ修行するからな」
「はーい」
「キュナクも修行だからな」
「ギュ!?」
「そんな驚くことか? ナギはどんどん強くなるのにお前が弱かったらナギは別の魔獣に乗り換えるぞ」
「キュン……」
他の魔獣に取られるのを想像したのか露骨に落ち込む。
「え? なんか普通に会話してるけど……」
「会話って言えんのかこれ……キュナクの種族は心を読み取りコミュニケーションを取るんだ、だから今までもある程度ならやり取り出来てたろ?」
「言われてみれば確かに」
「ただキュナクの言ってることは分からないから、キュナクの反応から読み取るしかないんだ。成長して念話が出来れば別だがな」
「へぇ〜、でもキュナクから他のやつに行くのはないかな」
「キュアァ!」
「でも弱いままってのもな」
「キュアァ……」
感情の起伏が凄まじい。
「ま、その点は明日だ、とりあえず寝ろ寝ろ」
「はーい」
「キューイ」
キュアラインを食べた後、ナギとジオウはそれぞれの寝室、キュナクは今はとりあえずナギのベッドの傍で寝てもらって朝を迎える。
キュアラインは美味しかった。
§ 第9話 今度こそ修行 §
時刻は朝の5時。忍び足でナギの寝室に侵入してあのモーニングコールをやろうとしていた。
「スゥゥゥ…………ナ──」
「ばああああかああ! 起きてるよボケがぁ!」
同じ手は食らわないと少し早めに起きていたナギ。
「ちっ」
「ぐぁ……寝起きで叫んだから頭が……毎回こんな起こし方じゃないとダメなのかよ……」
「前のリアクションが面白くてつい……ま、起きてたらなんでもいいわ、飯だから早く降りてこいよ」
「ギュア……」
「お、キュナクも起きたか」
「あんな叫んだんだ、起きない訳ないだろ……」
「ほら、下で待ってるからな」
バタンと扉が閉まる。
「……先行ってる」
「……キュン」
扉を開けて、重い瞼をこじ開けながら1階に降りる。
「うぅ……寝起きで叫ぶもんじゃないな……頭がガンガンする……」
「安心しろ。俺が鍛えればそんなことも無くなる」
「まず寝起きで叫ぶなんてこと二度としないから心配してないよ……」
「キュァア……」
遅れてキュナクも欠伸をしながら降りてくる。
「時間が惜しい。早く食って外出ろ」
「忙しいな、なんか理由でもあんのか?」
「ラゴウが復活してる可能性があるから……喋りすぎたな、お前が知るにはまだ早いからまだ教えない」
「無理難題を押し付けやがって……」
「キュ……」
「読み取らせると思うか?」
キュナクの念をはじき返す。
「ギュア!?」
「ほら、さっさと食え」
「ちっ……絶対倒す」
「キュン……」
2人の覚悟が決まり朝食を済ませる。
◇
「ん、終わったか」
「それで? 修行って何するんだよ」
「それは良かった。修行の前にナギ、お前に足りないものってなんだと思う?」
「確か攻撃力」
「その通り、だけどフィジカル面も足りない。もし身体が出来てたら剛魔に体当たりしても腕なんか折れなかったし、長時間戦闘も疲れないだろ?」
「じゃあ俺の修行は基礎作りってこと?」
「そういうこと、これから2年間やるトレーニング内容を後で書いて渡しとくからそれまでここ走ってろ」
「おっけー」
ジオウに言われるまま家の外周を走る。
「で、キュナクだ」
「ギュ!?」
まだ少し警戒してるのか数メートル距離をとる。
「この距離でいい、思考くらいなら読み取れるだろ? お前にやって欲しいことはとにかく念話の習得だ、最優先で習得して欲しい」
「キュ」
キュナクも少し気になってはいた事だ。
「こちらの思考は読み取れても自分の意思が伝えられないのはすごくもどかしいだろ? ナギにもなにか言いたい事だってあるはず。
それにお前はナギの相棒なんだから、お互い意思疎通出来ないとこの先必ず不自由が起こる。だから念話は必須なんだ」
「……」
ジオウの言葉をしっかり受け止め自分が何をするべきなのかを考える。
「こんだけ偉そうに言ってるけど、俺はバルバトスじゃないしキュナクでもないから、どうやって念話するか分からない、だからお前なりにやり方を見つけてくれ。そのためなら俺もできる限りのことはする」
「……キュ」
なにか心当たりがあるのか自信を持って答える。
「よし、俺はナギを終わらせるから好きにやりたいことやっていい」
「キュアン!」
そう言って1人森の中へ駆ける。
「……俺より仲良さそうじゃん」
「お前は走っとれ」
「はーい」
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