第八十話 検問所2
「・・・・・・・・・・・・・」
「おい!どういうことだ!?なんであんな勝手な真似を!?」
それから少し経って男と子供たちの後ろ姿が見えなくなるのを待ってから、周囲の兵士たちが一斉に手紙を受け取った兵士に向かって怒鳴った。
もしこんな勝手なことをしたことが上にバレでもしたら、いやそれ以上にもしもあの男が手配者だった場合を考えると兵士という立場にある以上、いくら戦時中とはいえ、いや戦時中だからこそ国同士のデリケートな関係がある以上、国としての責任問題に発展しかねないのだ。
だが怒鳴られた兵士はそれにもかかわらず怯える様子もなく、むしろお前たちこそ何を言っているのだと言わんばかりの剣幕で言葉を返した。
「馬鹿野郎!あの手紙の差出人はあの『シスターマザー』だぞ!!!しかも連名で『ギルバート』の名前まであった!!」
その名前が出た途端に周囲にいた兵士全員の表情が急に変わった。
それまでは顔を真っ赤にして怒鳴ったり怒ったりしていたのに、急に青ざめた様に目を見開いて少し震え出した。
「うえ!?『シスターマザー』!?『祭司ギルバート』!?マジかよ!?」
「そうだ!こんなところで引き留めでもしたらどうなることか!!」
ただその名前を告げるだけで全員があの手紙の意味を共有したかのように、男を通した兵士の行動に理解を示しだした。
「・・・こ、今回は大丈夫だよな?ちゃんと俺達の村に癒しに行って下さるよな?」
「す、すぐにお通ししたから大丈夫・・・だと思う」
「もしこれで俺達を始めとした周囲の村に癒しに来てもらえなくなったら・・・」
「俺達も家族も村の人間から村八分にされるぞ!」
「クソッ!本来なら国がちゃんと教会の人間を派遣してくれるはずなのに!」
「おいやめろ!どこで誰がきいているかわからないんだぞ!」
「うっ!と、とりあえず仕事に戻ろう!・・・あとで村に確認に行かないと・・・」
そういうと兵士たちは不安になりつつも仕事に戻っていった。
兵士達のそんなやり取りを通り過ぎてからちらっと聞こえて来たので聞いてたジュナス。
「いや、この手紙効果あり過ぎじゃない?というかマザーとギルバートさん一体何してたんだよ・・・」
この辺りの耳の良さも人間離れしているなぁと思いながらもその話を連れの子供、ソフィとシロエに話したところ二人から返事があった。
「わ、わかりませんけど、マザーも司祭様もよくいろんな村に行っていたので・・」
「ん・・・よくいなかった・・」
二人の話す内容に何となく場面が思い浮かんでそういえばとジュナスも心当たりを思い出していた。
「あー、前にいろんな所について行っていたあれか?確かに何件か村とか周ってたけど」
あの時はただ村に付いて行って、そこからしばらくは村の外で警戒をしていただけだったから何をしているのかは知らなかったけど、成程、医者っぽいことをしてたってことか。
それにしても凄い効果だな。
まぁ小さな村とかだと教会とかないって言ってたしな。
この世界の技術レベルだと多分病院とかも普通にはなさそうだしな。
いやしらんけど、等と考えつつ移動しながら話している内に今度はフィーリッツ王国側の検問所にやってきた。
「止まれ。我が国に何の用でやってきた?見たところ商人の類ではなさそうだが?訪問の目的を伺おう」
あちらの兵士と同じような内容を告げながら女性の兵士がこちらに近づいてきた。
「すみません、ちょっと人に会いに来たんですけど・・あ、これ、お世話になってた人から検問所の方に手紙です」
「人に会いに・・・ねぇ。手紙?私たちにか?推薦状と言う訳か・・・・これは・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「お前たち。そっちの詰め所まで来てもらおうか」
手紙を読み終えた女兵士の人が少し表情を変えてからこちらを見てそう告げる。
「えっ!?あれ?あっちと対応が違う?」
あまりに帝国側の検問所との違いに戸惑うジュナスが思わずといった様子で声を出してしまう。
だがそれには気にせず女兵士はジュナス達を連れていくべく詰め所の方へと向かう。
「さぁ、付いてこい。そっちの子たちもだ。心配するな。別に問題があってと言う訳ではない。だがこの推薦状についていくつか伺いたい」
そう言われて別に問題があったわけじゃないことに安堵の息をつく。
「あ、そういう・・・了解です。じゃあ行くか」
そう言いシロエとソフィを促しながら詰め所へと付いて行った。
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