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第七話 実験結果(前編)

「うるさいですねぇ、待ちに待った成果です、じっくり見たいのですから少し静かにしていただきたいのですがねぇ」


自身の部下を軽く見下ろして後、もはやそんなものはどうでも良いと言わんばかりに視線をドラゴンへと戻す。


その一言に対して隣にいたアミーラも同じく部下に対して一瞥だけした後に、ウルベが静かにできるように対策を提案する。


「申し訳ありません、あちらからの音声は届かないように致します」


「それにしても、まだ随分と小さいですねぇ、ま、最初の変異ならあんなものでしょうかねぇ。くっくっく、もう少し調整しておけばよかったですかねぇ」


「・・・・・・・・・・・・・・」


ウルベは変異した男を見て、口の端を歪ませてくっくっくと笑いをこらえるかのように興味深くドラゴンに見入っていた。


ウルベを隣で見ていたアミーラは苦虫を噛み潰したような表情でウルベを、そしてドラゴンとなった男を見ていた。


その頃、ドラゴンとなった男のいる部屋でも男達が混乱していた。


「ウルベ様!くそっ!おい!どうする!?」

「どうするって、殺るしかないだろ!」

「殺るって、ウルベ様になんていうつもりだ!?」

「じゃあこのまま大人しく死ぬのか!?俺はまだ死にたくない!殺ってやる!」


一人の男が腰から剣を抜き放つ。

それを見て他の男たちは必死にウルベがいる部屋を扉を見るが変化はない。


「畜生!!ただこの部屋でつっ立ってりゃいいだけじゃなかったのかよ!」

「今更言っても仕方ないだろ!こうなったらこいつを殺して国から逃げるしか!」


そういうと残りの男たちも覚悟を決めたかのように腰から獲物を抜き放つ。

そしてドラゴンに向かって対峙していると、背後の扉付近から声が聞こえてきた。


「ご慈悲を~!!ウルベ様ぁぁぁぁぁぁ!!ウルベ様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「うるさいやつだ!あんな奴はほっといてやるぞ!!」

「おう!」「畜生!ヤケクソだ!!」


そう叫ぶと男たちはドラゴンに向かって間合いを詰めていくのであった。


研究所の内部の方ではアミーラとウルベは彼らがドラゴンに向かって戦いに行く様を悠々と見物していた。


「ウルベ様、あの者達はどうやら「アレ」を殺すつもりのようです」


彼らの様子を見たアミーラは自身の上司にそう報告する。


「おやおやぁ、それはそれは「アレ」の強さがどんなものか見てみたかったのでちょうどいいですねぇ、くっくっくっくっく」


研究対象であるドラゴンが殺されそうになっているにもかかわらずウルベは特に慌てる様子もなくそう返す。


それだけあのドラゴンに自信があるということなのだろうか。

ふとここでアミーラは気が付いたかのように、ウルベへと視線を向けて声を出す。


「ウルベ様、もしや最初からあの者達を?」

「くっくっく、まさかまさかぁ!彼らにはきちんと伝えていたでしょう?仕事の内容を『私の実験を見届けてくれればそれでいい』と。私の実験が何であろうとも、くっくっくっくっく」


そう、彼ら鎧の男たちはただ依頼されただけではなく、最初からウルベは彼らを実験体として、ドラゴンの研究のために呼んでいたのである。


「なるほど。確かにそのようにご説明いたしました。ご無礼をお許しください」


「いえいえ、いいんですよぉ。あなたはよくやってくれていますからねぇ。

それよりもデータだけはしーっかり取っておいてくださいねぇ、大事な大事な記録ですからぁ、彼らの仕事ぶりもしっかりと・・・ね。くっくっく、くひゃっはっはっはっは!!」


「お任せ下さい」


二人はそう話すと再度研究所内のドラゴンと、それに立ち向かう男達へと視線を向けるのであった。


「おい!来るぞ!!」


鎧の男がドラゴンの動きを見て仲間に声をかける。

そちらを見ているドラゴンが、一番近くの男に向かって腕を振り下ろしていく。


「うお!?」


鎧の男が思わず手に持っていた剣でドラゴンに振り下ろされた腕を受け止めると重い衝撃が襲ったが、よく見ると何故かドラゴンの腕の一部が千切れ落ちそうになっていた。


「な、なんだ?衝撃は強かったが、受け止めただけで逆に腕が千切れかけているぞ?」


ただ受け止めただけで千切れそうになったその姿に思わず驚く。


「もしやこいつ弱いんじゃ?」


ここで攻めれば本当に勝てるかもしれないと考えたのか、鎧の男達は一気に攻めに出る。


「良し!お前はそのまま注意を引きつけてくれ!!俺とこいつで今落ちかけた腕の付け根に狙いを定めて斬ってみる!!」


「了解だ!さぁこい!化け物めが!!」

「こうなりゃやぶれかぶれだ!!!」


一人の男が前に出るとドラゴンに対してそう叫び注意を引き付ける。

するとその声に反応したのか、ドラゴンが今度は逆の腕を鎧の男へ振り上げる。

その瞬間を狙いすましたかのように、残りの二人が攻撃の準備をしていた。


「振り下ろすと同時に斬り込むぞ・・・・今だ!」

「うおおおぉぉぉぉ!!」「どあああああぁぁぁぁぁ!!!」


ギキン!!ザシュ!!


二人の狙い通りドラゴンが振り下ろした腕とは逆、先ほど千切れかけていたドラゴンの腕が地面に落ちる。そこでドラゴンは低い声で唸る。


「ぐる・・・・るるるるるるぉぉぉぉぉ・・・・・」


「や!やったぞ!こいつ脆いぞ!!殺れる!!生き残れるぞ!!」

「油断するな!!このまま残りの腕も斬ってしまうぞ!!」

「おう!!!!!」「よっしゃあ俺に任せろや!!!!」


片腕を切り落とし、自分たちに生き残る道が見えたからなのか男たちのテンションは上がる。本当に生き残れるという希望が見え始めたようだ。


「ウルベ様ぁぁぁぁ・・・・ウルベ様ぁぁぁぁぁ・・・・・」


だが男をドラゴンに変化させた部下は、未だ開くことのない扉へと向かって、自身の上司に救いの声を送っていた。

初の前中後編に分かれます。中途半端になるので本日は三話上げる予定です。


いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。


楽しんでいただけましたら、感想や誤字訂正、ブックマークや評価などして頂けますと大変うれしく思います。これからもどうぞよろしくお願い致します。


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