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第七十四話 チュトラリー城壁の戦い3


「悪魔?何があったのだ?悪魔が現れたとでもいうのか!?」


指揮官は意味は解らなかったが、とにかく詳しく聞くために根気よく問いかける。


「違います!あの男!あの男は悪魔なんです!!」

「あの男?あの使者か!?」


指揮官がそう問いかけると、バッと兵士が指揮官の方に顔を向けて語り出した。


「そうです!何が起こったのか・・あの悪魔が腕を振りかぶって構えていた状態から一振りしただけなんです!なのに急に物凄い風が巻き起こったかと思うとその時にはもう城門が吹き飛んでいたんです!!」

「な!?あの男が一人でこの惨状を生み出したというのか!?」


指揮官が驚いたようにそう声に出すと、将校が怒りで顔を赤くして怒鳴り散らす。


「貴様!!馬鹿も休み休み言え!!たった一人でこのチュトラリー城壁の中でも最硬の城門を砕けるはずがなかろうが!!!下らん戯言をほざくならば切り捨てるぞ!!」

「う!嘘じゃありません!確かにあの男以外に動いたものなんていなかった!!!悪魔だ!悪魔なんですよ!あれは!!」

「貴様ー!!まだ言うか!!」


そう言って将校が腰から剣を抜こうとするがそれを現場指揮官が抑える。


「将校殿、今はそのようなことをしている場合ではありません。将校殿も会議室へお戻りください。他の将校、司令官殿もお待ちでしょう」

「ぐぬぬ!いいだろう!だがこの責任は現場の指揮官たる貴様にとって貰うからな!覚悟しておけ!!!どけ!邪魔だ!!!」


それだけ言うと他の兵士を突き飛ばし、ノシノシと足音を立てて歩き去っていった。


「あんな愚かな男が将校とは。我が国の質も落ちたものだ」


現場指揮官はそう口にするもすぐに対処法を考える。


「この惨状をあの男一人が行ったなどと、にわかには信じられんが、兵に嘘を付く理由がない。もしかすると兵が見えないようなところで別の部隊が動いたのかもしれんし、もしくはその男が古代のアイテムを使用したのかもしれんな。いずれにしてもあの男はすぐに潰す必要がある!」


口に出して自身の中で方針を決めると、すぐに城壁の上へと向かう。


件の男が今でも同じようにいるかの確認と、城壁の上からの方が全体を確認できて、指揮を行いやすいからだ。


「あの男は・・まだいるな。相変わらずたった一人で奇妙なポーズを取っているようだが、今となってはあの格好すらも不気味にしか見えん」


そう考えていると先ほど工兵隊に伝言を伝えに向かった兵士が戻ってきた。


「指揮官殿!工兵隊にはお伝えいたしました!工兵隊もあの轟音で既に準備はしていたようでこちらに向かっております」

「うむ、よくやってくれた。では引き続き中央城門前に集った部隊を城門前に出す!部隊長たちにそう指示を出してくれ!また、他の城門前の部隊も予備の人員を除いて全て城門前へ!更に魔術師部隊にも大規模魔術の用意を!」


そう指示を出すと伝令の男が驚きの声を発する。


「だ!!大規模魔術ですか!?ですが敵部隊が見当たりませんが?標的は一体どこに?」

「一部始終を見た兵士がこの惨事は目の前の一人の男が行ったと言っていた」


その発言に流石に伝令の男も驚きの表情で戸惑ってしまう。


「ば!馬鹿な!!!あ!いえ!失礼しました!!ですが!!あり得ません!!!」

「私もそう思う。だが仮に本当にあの男がそれを行ったのだとすれば、生かしておくわけにはいかん!それにもしかすると見えない別の部隊がいるのかもしれん。それらが現れてから準備したのでは遅すぎるのだ!」

「な・・なるほど。見えない別部隊が・・・それならばあり得るかもしれません・・とはいえ一体どのような手段で・・・」


別の部隊がいる。そう言われた方が古代のアイテムなどと噂の域程度でしか聞いたこともないものを信じるよりもよほど説得力が持てた。


「今はそれを論じている暇はない!・・・いけ!!!」

「はっ!!!」


そういうと伝令の男は自身の部下を捕まえて各所に散った。

恐らく各北南の各城門と魔術師部隊の方にも伝令に向かったのであろう。


「どうだ?何かわかったか?」


突然背後から声がかけられる。

現場指揮官がそちらを振り返ると、最高司令官を始めとした将校たちが勢ぞろいしていた。


「これは司令官、それに将校の皆々様。お騒がせしてしまい誠に申し訳ございません」

「全くだ!貴様が付いていながらこのような!」

「待たれよ。その話はあとにしましょう。今は現状を打開するのが最優先。そうでありましょう?」


現場指揮官に苦情を入れようとしていた将校が何名もいたが、司令官の言葉で静かになる。


「寛大なお心遣い痛み入ります。ひとまず現状をご説明いたします」


現場指揮官がそういうと先ほどと同じように説明をする。


当然将校の誰一人としてたった一人の男がこの惨事を起こしたという情報を信じるようなことはなかったが、司令官は何か考えているのか一言も喋らずに話を聞いていた。


「ですので、今は予備兵を除く全ての部隊を城門前に展開させ、また魔術師部隊に大規模魔術の準備をさせているところです。また正面の城門は見ての通り工兵部隊に修繕を、医療兵に怪我人を後方へと下げさせ治療させています」

「なんと愚かな!たった一人でこの惨事だと!!あり得るか!!そんな一兵士の戯言を信じたというのか!貴様のこれまでの戦果を期待されて今回も指揮官に推薦されたにもかかわらず・・・落ちたものだな!!!」


このほかにも大なり小なりはあれどどの将校も現場指揮官の行動に「正気を失ったのでは?」というような嫌味や苦言を叫ばれる。


「ふむ、お前がそう判断した理由を聞こう」


だが司令官だけは冷静にこちらに意見を言う機会をくれる。


「はっ!まず可能性として二つ。第一にかの男が本当に一人でこの惨事を成し遂げたというのであれば方法はおそらくただ一つ。救世の戦いの頃の発掘品、古代のアイテムを使用したのではないかと」


その言葉を聞き、先ほどまで騒がしかった将校たちが一斉に静まり返り周囲の者たちとひそひそと話し出した。


「古代のアイテム・・・ありえるのか?」

「解りません。ですがもしそうであるのならば敵の部隊がたったの千人しかいなかったこともある程度納得が出来ます」


現場指揮官の言葉に周囲の者はどういうことかわからないのか疑問の表情をしている。


「どういうことだ?」

「あの部隊はもしかするとその古代のアイテムの実験をする為の部隊だった可能性があるという事か?」


最高司令官がもしやと思い至ったことを口にすると、それを確認した現場指揮官は一つ頷いてから語る。


「その通りです司令官殿。初めから実験用に、何かトラブルによって失ってもそれほど被害が大きくならないように千人だけを動かしたという可能性です」

「ふむ、帝国もこのチュトラリー城壁の事は当然知っていよう。にも拘らず千人で来たのはそういう事情か」

「はっ!その通りであります!」


成程、一様わからなくはない内容だ、と一つ頷いてから更に話を促す。


「それで?もう一つの可能性というのは?」

「敵の姿が見えない可能性です」

「なに?見えない?」


こちらもすぐには理解が及ばず疑問符を発してしまう。


「はい、どうやってかは解りかねますが、これほどの大規模な破壊を行えるとすれば目に見えない別の部隊が相当数いてそれらがこの城壁を吹き飛ばしたという可能性です」

「そんなことが実際にあり得るのか!?」


あまりに突拍子もない事を言われて流石に疑いの眼差しが向けられる。


「解りません。ですが一人の男が古代のアイテムを使って行ったというよりはよほど信ぴょう性が高いかと思われます」

「・・・・・・・・・・・・・・」


そこまで話すと将校たちを始めとしたランドグルーム国上位の存在達は黙り込んだ。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。


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