第七十一話 幕間:ランドグルーム国の過去
更新が遅くなりました。申し訳ありません。
ここからは幕間にてジュナスとは別の物語になります。
更に次回からは過去の話になります。
元ランドグルーム国最果ての町 ジュドにて
「一体どうやってあの二人から逃げて来たんだ?」
そう問いかけるのは元ランドグルーム国に所属していた騎士のシュナイドという男だ。
一方問いかけられているのはリカという小柄な女性である。
「方法に関しては言うことはできません。私を保護していただいた事には感謝しておりますが」
それだけ言うとこれ以上その話をするつもりがないのか口を閉ざしてしまう。
二人の間に少しピリピリとした空気が流れていくがそれを遮るように声が聞こえた。
「ま、まぁまぁ!みんな無事だったんだからよかったじゃない!リカもありがとう」
「しかし実際大したもんだぜ。あいつら帝国の将軍だろ?それを二人相手にして傷一つないなんて、一度手合わせ願いたいくらいだぜ」
そう言うのは同じく元ランドグルーム国所属の騎士であったジャーグスとその幼馴染であるマリアンネだ。
何とかこの空気を変えようと必死なマリアンネと特に何も考えずに思いついたことをいうジャーグス。
その二人の反応にシュナイドは一度ため息を吐き出すと「まぁいい」とそれだけ言って話を進めようとする。
「とにかくしばらくはここで潜伏してイース殿下を旗印に同志を集める。それと同時に周囲の他国にも協力を要請するように手を打たねばならん」
「だが、殿下はまだ幼い。齢十程度の子供を担ぎ上げて果たして集まってくれるのかどうか」
仲間の一人が疑問を言うがそれでもそれ以上やれることもないため、その先の発言は行わなかった。
「そもそもなぜあの場所がバレたのか、いやなぜあの場所に帝国の将軍ほどの者たちが現れた?」
バレたのは解らないでもない。何せライールの拠点が全て潰されたのだ。
こちらの情報が漏れたことには特に不思議に思うようなこともない。
ライールの拠点がバレたことは疑問ではあるが。
不可解なのは、何故将軍クラスの人間が二人も現れたのかという事だ。
確かに俺達はランドグルーム国の生き残りの中心となっているメンバーだが、レジスタンスなんて言われてもいるが、その規模は帝国の比じゃないくらいに弱小だ。
何せあの戦争、いや侵略によって戦える人間のほとんどが死んでしまったのだから。
それも僅か数時間程度で・・・。
将軍でもないあんな化け物までいるのに将軍クラスが出向く理由がどうにもわからない。
「何か奴らがやらねばならないことでもあったのか?俺たちの排除以外に目的でも?そもそも本当に俺たちの排除が目的だったのか?」
それにしてはあまりにも追撃がなさ過ぎた。
確かにあの女が時間を稼いでくれたがそれこそ町を出たところで『一振の悪魔』でも待機させておけば俺達は壊滅したはずだ。
「まぁあの『一振の悪魔』に出会わなかっただけでも儲けものだ。もしあれが来てたら流石にどうしようもなかったぜ」
ジャーグスが俺と同じくあの悪魔の事を考えていたようだ。
その一言に反応する者がいた。
「『一振の悪魔』?何ですかそれは?」
将軍クラスを足止めしてくれた女リカだ。
「化け物・・・いやあれは本当に悪魔だよ。あいつ一人で俺たちの国は・・・」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」
その一言で誰も言葉を発することが出来なくなる。
だが誇張するわけでも脅している訳でもない。
俺たちの国はたった一人の悪魔によって滅びたも同然なのだ。
「何があったのか、聞いても?」
リカは俺たちの反応が明らかにおかしいと感じたのかそれとも興味が出たのか少し遠慮しながらも聞いてくる。
「・・・・自分主体でしか話せんが、それでもいいなら話そう。俺たちの国が滅びる原因となったあの戦争、いや虐殺を・・・」
その頃ウルベの研究所には珍しい客が現れていた。
「これはエレクトラ様、シルフ様。このような場所においでとは珍しい。何かご用件がおありでしょうか?」
アミーラが突如訪問してきたエレクトラとシルフに向かってそう問いかける。
「あらアミーラ、こんにちわ。ウルベはいるかしら?少し聞きたいことがあるのだけれど」
「ウルベ様でしたら現在は実験室に御座います。今お呼びしてまいりますのでしばらくお待ちください」
アミーラがそう言い、二人を一室に案内して飲み物の用意を済ませると部屋を出ていく。
どうやらウルベにエレクトラ達の訪問を報告しに向かったようだ。
「ねぇエレクトラ。なんでわざわざウルベなんかの所に来たの?僕少し休んだらまたさっきの奴ら追いかけたいんだけどなぁ」
「あらシルフ。私たちの命令は奴らをあの町から追い出せよ。追いかける必要はないわ」
「それはそうなんだけどさぁ、あの変な女の人とまた遊びたいんだけどなぁ」
そう言うと若干不満そうな表情でほほを膨らませている。
こうしてみると本当に年相応の少年にしか見えない。
「それは残念ね。でもそういう命令が出ていない以上、迂闊に動くことは出来ないわ。貴方は少し休息しておきなさい。しばらく休んでなかったせいで魔力が減っているでしょう?」
「はぁーい。ちぇっ、つまんないの」
そんな会話をしつつ出された飲み物を飲んでいるとドアが開いた。
そこからはいつもの不敵な笑みを零し、白衣に身を包んだウルベが現れた。
「これはこれはぁ、帝国の将軍であられるエレクトラ様とシルフ様じゃぁないですかぁ。このような場所に来られるなど珍しぃ、何か御用でもありましたかねぇ?」
そう言いつつ目の前のソファーに腰を下ろすウルベ。
相変わらず変な男だと思いながらもエレクトラは単刀直入に要件を訪ねる。
「ねぇウルベ。豚の護衛のタイタンとかいう男がここにいるって聞いたから一度話してみたいと思ったんだけど、どこにいるのかしら?」
「・・・ほぅ!タイタンと!それはそれは!ですが残念ですねぇ、タイタンは現在調整中でしてねぇ。まだしばらくは会うことは出来ませんねぇ」
「調整中・・ねぇ。ねぇウルベ。率直に聞くけど、あれは一体・・・何?噂ではアレが一国を滅ぼしたとか聞いたけど」
「おやぁ?帝国の将軍エレクトラ様ともあろうお方がぁ、そんな噂を信じておられるとはぁ。アレがやったのはあくまでも砦を制圧しただけにすぎませんともえぇ。くっくっく」
片方の眉を上げて笑いながらアミーラの入れた飲み物を飲むウルベ。
「そう。で、実際にあれは何なのかしら?単体で砦を制圧っていうだけでも十分にとんでもないことだと思うのだけれど?」
「いやいやぁ、あれはまだまだですよぉ。それだけならば我が国の将軍度の達ならどなたでも出来るでしょう」
そこにこれまで話だけ聞いていたシルフが言葉を挟む。
「へぇ!そんなに強いの!?なら今度ぼくと遊んでよ!」
「いえいぇ、シルフ様と戦おうものなら今のタイタンではあっという間に死んでしまいますよぉ。まだまだ調整もいりますのでぇ、まぁいずれ機会があればといったところですかねぇ」
それだけ言うとウルベは立ち上がり扉に向かっていく。
「そういうわけでぇ、私はまだ色々と実験がございますので、多少の事はアミーラに聞いていただければと思いますよぉ。後はよろしく頼みますよアミーラ」
「かしこまりました。ウルベ様。後はお任せください」
ウルベの姿が見えなくなるとアミーラがこちらに向かい話しかけてくる。
「申し訳ございません。ウルベ様はまだ実験の最中ですので以後は私がお伺いいたします」
その状態でもエレクトラは特に気にすることもなくアミーラに問いかける。
「そ。まぁ相変わらずって感じね、あの男も。貴方も大変ねぇアミーラ」
「私自身特に現状に不満を持っている訳では御座いません。何か他にご用件はございますか?」
そう言われてエレクトラは少しの間考えを纏めてから問いかける。
「そうねぇ、それならその砦を制圧したって話、貴方は知っているのかしら?知っているならその時の事を聞かせて貰えるかしら?」
そんな質問をされて少し疑問が浮かんだ様だが、それも僅かですぐに話し出す。
「かしこまりました。ですがあくまでも主観でしかお話しすることは出来かねますが、それでもよろしければ」
「ええ、構わないわ。聞かせて頂戴」
「はい、あれは帝国が宣戦布告をして一月ほどが経った時の事でした」
アミーラはそういうと視線を中空に向けて語り出した。
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