第六十六話 戦い、闇の光
「てめぇ!!ギルバートさんから離れろ!!!!」
気が付くと走っていた。
いや、すでにギルバートさんと魔物の目の前まで到着していて、ネームレスを使って剣の腹で魔物を吹き飛ばすように薙ぎ払った。
「ブゥッ!ルルゥゥォ!」
魔物は俺の力が予想外に強かったことに驚いているのか、吹き飛びながら何やら叫んでいる。
だが無事にギルバートさんから奴を引き離すことに成功した。
(む!これは・・ジュナスよ、初めて自分の意思で我が魔力を使って体を動かしたな)
ネームレスのそんな少し嬉しそうな声を聞き流しながら、俺はギルバートさんを見る。
「ジュ・・・ジュナス殿、よく・・・ぞ・・ごほっ!戻って・・きて」
「ギルバートさん!喋らないで!おいネームレス!何とかならないか!?」
慌てているのかいつもは頭の中で話しかけていたが、この時は完全に声に出してネームレスに問いかける。
しかしその回答は嬉しくない内容だった。
(圧倒的に魔力が足りぬ、しかもこの男、何やら奇妙な魔力が体内に入り込んでいるのか・・・魔力が常に漏れ出てしまっておる、これではいくら治癒を施しても効果があるまい・・)
「ん・・・司祭、起きる・・・起きる・・」
その声に気が付くとシロエがギルバートの近くにいて涙を流しながら必死に抱き着いている。
状況からしてシロエをかばったのだろうか、そのすぐ近くにあのハゲ・・・ケーガナイらしき死体もあることからその線が濃厚だろうか。このハゲのせいで・・・このハゲー!
「ブルルルゥゥゥォォォォ!!!!」
突如叫び声がしてそちらを見やると、先ほどの魔物が吹き飛ばされたことの苛立ちからか、何やら雄たけびを上げながら足を地団駄させていた。
「(この野郎がギルバートさんを!)」
そう思ってそちらに体を傾けて集中する。
だがキレそうになりながらも頭の一部が冷静になる。
『心は熱くなろうとも頭は冷静に』だったな、この数週間の間ギルバートさんから常々言われていたことだ。
ふぅ、そういえばネームレスに変わらずに戦うのって初めてだが大丈夫だろうか?
まぁ無理そうならすぐに変わってもらえばいいか。
そんなことを考えていたのだが、魔物が予想外の行動に出た。
こちらに苛立ちの視線を送っていたので襲い掛かってくると思っていたのに、何故か別の場所に向かって走り出した。
「な!?どこに?」
そんな疑問は一瞬で消えた。
何故なら奴が向かう先にあるのは修道院であったからだ。
勿論そこにはまだ多くの人が避難している。
「っ!ネームレス!!」
それだけ言うと即座にネームレスと入れ替わる。
ネームレスもすぐに察してくれてその身を入れ替わり、魔物と修道院の間に自身の体を割り込むことに成功する。
ガキン!!
魔物の爪とネームレス(剣)がぶつかり合う。
魔物はそのことに驚きつつも表情をニタリと笑うように口元を歪ませた。
気色悪い顔が一層キモ顔になったな、とジュナスは思うが何故そんな表情をするのかがよくわからなかった。
だがネームレスにはわかったようで
「ほう、成程な、貴様、我から魔力を奪おうとしおったな。だが残念だったな、魔力を奪うのは何も貴様だけが出来ることではない」
そういうとネームレス(に体を貸している俺)も表情をニヤリと笑う。
流石に自分の顔は見れないからキモメンになってないか不安になったが、魔物は途端に驚きと戸惑いの混ざった表情をして後ろに飛びのいた。
「ブルウゥゥゥゥゥ・・・」
魔物はそう唸ると警戒するように周囲に視線を這わせる。
そしてある一点で視線が止まると、またもやニタリとした表情をして、更には舌まで出して涎を垂らすという、キモさが限界突破して嫌悪感しか沸かないレベルに達した状態で今度は体を上下に揺らしだした。
(なにこいつキモ!ゴブリンよりキモイじゃん。よくこんな気持ち悪い生物が世界に存在することを認められたな)
等とジュナスは考えていたがそれと同時に何を見ているんだ?と思案する。
ネームレスも同じことを思ったのか、視線のみを相手の向ける先へ向けて、その狙いに気が付いた。
「ブルゥ!」
が、その視線を向けた一瞬の隙にキモ魔物が動き出していた。
向かった先はそう、ギルバートさんとシロエがいるところだ。
このキモ魔物、先ほどギルバートさんに負けそうになった際に気付いたのだ。
目の前の生き物は弱った奴や弱い奴を何故か庇う、だからそいつを狙えば勝てるのだと。
「チッ!」
ネームレスも狙いに気が付きすぐに動き出す、微妙に出遅れはしたが何とか間に合う!
そう思っていたのだが、ここでキモ魔物が予想外の行動に出た。
足を止めて口を開けて集中しだした。
顔は勿論ギルバートさんやシロエの方向を向いているのだが、口元に魔力の集まりが感じられて、ネームレスが焦った声を出す!
「こやつ!あの奇妙な魔力を直接発射するつもりか!?」
二人の元には何とか間に合うが、果たして防御するだけの準備ができるかどうか。
「ウボアァァァァァァ!!!!」
直後に先ほどギルバートの体を使っていた天使ミカエルが放った極光の光とは真逆の黒い闇が、ギルバートとシロエに向けて放たれる。
いきなりですが、現在の第三章が終わったら、しばらく更新が止まるかもしれません。
いつもご閲覧いただいている方々には大変申し訳ないですが、出来る限り早めに復帰に戻るよう努力します。
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