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第五話 未知との同化

ふと意識が戻ったかと思うと、そこは暗くまさに何もない真っ暗な世界であった。


まるで夜に目を瞑った時のように瞼に光すら感じる事がない様に、暗闇で思わず自分が目を開けているのか閉じているのかわからなくなるくらいに真っ暗闇だった。


「はっ!?なんだ、熱く・・ない?痛くない、真っ暗で何も見えないが、誰か!誰かいないのか!?あれ?そういや声が出る、喉も焼けるくらいになって声なんてまともに出せるはずが」


思わず先程までの状況を思い出してゾクリと背筋に悪寒が走ったかのように震えたが、今の状況があまりにも先程までの光景とかけ離れ過ぎていて逆に不安になってくる。


「・・・・死んじまったとか?ハハッ、まさか!そんな・・・・・・・・嘘・・だよな?おい!マジでどうなっているんだ!?どこだよここ!!誰かいないのか!?おい!!おい!!!」


あまりにも何の反応もない世界にどんどん不安の感情が大きくなっていく。


とにかく自分が生きている事を証明したくて大きな声で叫んで世界に変化をもたらそうとする。

だがそんな男の気持ちも虚しく世界は何の反応も見せない。


「嘘だろ?そんな、死んだら元の世界に戻るとか、夢オチとか?頼むから!何とかならないのか!?どうする!?どうしたらいい!?自分の体すら暗過ぎて見えないし、くそっ!誰か!?マジで誰もいないのかよ!!!!」


あまりの変化のなさに、どれくらい時間が立ったのかもわからずおろおろとして、それでも諦めきれずに必死に誰かに向かって呼びかける。

するとかすかに何かが聞こえたような気がした。


・・・・ぇ・・・・ゃ・・・・ぅ・・・・・・・・・・


「!?(なんだ!?何か・・・聞こえた?)誰か、いる・・・のか?」


あれほど誰かに向かって語りかけていたのにいざその声が聞こえると今度は逆にその事に怯えてしまう。


この様な暗闇であっても聞こえてくる声に、そしてここに来るまでにされていた仕打ちを思うと、この声の主も自分の味方とは思えずつい警戒してしまう。


・・・・ぇて・・・・ろぅ・・・・・・・・・・・・・・・


小さな声だがその声が少しずつ、少しずつ近づいてきているように感じる。

そして声が聞こえたという事実に、少なくとも自分はまだ生きていると感じて多少冷静に慣れた。


「(いる、誰かいる。いや、声だけが聞こえた?待て、落ち着け俺。とりあえずなんか聞こえるってことは多分死んでない・・・と思う。となると、この手の展開。思い出せ!この手の展開、ゲーム・・小説)」


この世界に来る前の男は自身をごく普通の一般人として考えていた。


普通と言っても人によって普通の解釈は大きく変わるため、何を持って普通と感じるかは人それぞれだが、男はよくゲームをして小説を読む、特に異世界モノの小説やゲームなどを好んでしていた為、自分が同じような展開にある事を理解すると、今の状態をゲームや小説に準えて考える。


そして一つの回答が出た。


・・・えて・・・やろう・・・・・・・を・・・・る・・・


「(ヤバい、ヤバいヤバい!!ヤバい気しかしない!!この手の展開はイマイチ思い出せないが、記憶によく出てくるのは二択!神に近い存在とかか悪魔的な存在!?ただこれまでの展開から神が来るなんて考えられる訳がない!いたらもっと前から現れて助けてくれているだろ!つまりは・・・)」


実際にはもっと多くの選択肢があったかもしれないが、男がとっさに思いついたのはこの二択であり、そしてこれまでの男の環境下を考えると、もう男の中での選択肢など無いに等しいものだった。


・・・・・与えてやろう・・・・・・・・


先程までは誰かに声をかけて貰いたくて何度も叫んでいたというのに、いざ自分に未知の存在が声をかけてくると思わず怯えて、逆にパニックになってしまう。


だが声はそんな男の意思など感じることはなく、むしろよりはっきりとその内容を聞き取れてくるようになっていく。


「(どんどん声が近付いてくる!どうする!どうすればいい!?)」


全てが暗闇の世界において、自分の体すらまともに見えない男には結局なにも出来ず、ただあわあわと慌てふためき、怯える事しか出来ない。


ついに自身の目の前に急に何かの気配がきた。


暗闇であり何も見えないはずのそれを凌駕するかのようにその何かの存在は自分の目の前に悠然と現れたのである。


「ひっ!!??」


あまりに自分の常識の範疇にはない存在に、ただただ息をのむ事しか出来ない男。

その存在は自分の目の前で止まったのではなく、自分を超えて自分とまったく同じ位置に立った。


肉体があればぶつかるはずのそれは、だがぶつかるような感触はなく、自分の中に何かが入ってくるような見妙な感覚を覚えて気持ち悪くなる。


そしてその何かが自分の中をどんどんと塗り替えて行くのだ。

塗り替えられまいと必死に意識して自分の体を丸めて耐えようとしていた男の耳にひときわ大きな声を聞いた。


与えてやろう・・・・・・全てを・・・破壊する力を!!!!


そこで男の意識は途切れた。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。


自分で気になった点などは、随時ちょこちょこ訂正しております。


楽しんでいただけましたら、感想や誤字訂正、ブックマークや評価などして頂けますと大変うれしく思います。これからもどうぞよろしくお願い致します。

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