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第五十五話 修道院の生活2


しかしだ。ギルバートさんは凄い人でしたよ。

司祭としての仕事は勿論、歴史や常識などの知識、狩りの技術、果ては剣や魔法すら使うって言うね。


まさに完璧超人って感じで思わず初日に同行した日以降、最初はあんたとか司祭とかで呼んでいたのに気が付いたらギルバートさんと呼んでいたよ。


ギルバートさんは呼び捨てで言いといってくれたがこの世界のことを知るための師匠のような存在になってしまってとてもじゃないが呼び捨てなんて出来なくなったよ。


様付けで呼んだら流石にそれは止めてくれと結構本気で言われたので、さん付けで落ち着いたんだけどね。


(しかしお主もずいぶんと慣れて来たではないか)


突如として頭に声が響く、これは俺の持つ剣、ネームレスの声だ。


「慣れたって、何にだ?ここの生活にか?」

(この世界に、だな。まだ数週間しか経ってはいないが随分と逞しくなったではないか)


ネームレスの少し小バカにしたかのような声にムッとしつつもこの数日を思い出すと、確かにあちらの世界との違いを考えると随分とこちらの世界に染まっているように感じる。


「そういうお前もアレだな。最初の頃はしょっちゅうさっさと自分の分体を探せだの何だの言っていたくせに、最近は随分と静かになったじゃないか。もう諦めたのか?」


などと思ってもいないことを口にしてみる。

さっき小バカにされた意趣返しってほどでもないが、なんとなくこいつに言われたい放題なのは性に合わなくて軽口を叩いて見ただけだ。


(無論諦めるなどありえぬ。だがそう慌てる必要もなくなった、いやそれよりも優先すべきことが出来たと言った方が正しいか)

「優先すべきこと?」


え?お前この数週間の間に何かやってたっけ?などとなかなかに失礼なことを考えてみる。


(お主・・今何か失礼なことを考えていなかったか?)


相変わらず無駄に勘の鋭い。


「ないない、そんなことない、んで、優先すべきことって何よ?それをやってたの?」

(相変わらず我の扱いが軽い男だ、この数百年の間我にそのような軽口を聞くような者などいなかったというのに・・・)


などのなにやらぶつぶつ言っているが会話が進まない、さっさと話してほしい。


「それはわかったから早く優先すべきことって話してよ」


わかったわかったとまったくわかっていない発言をしつつも会話を進めろと発言する。


(まったくお主は・・・優先すべきことはお主自身の強化にあるな)


強化?何?俺の強化ってこいつは俺に何かしていたの?寝ている間に人体改造とか?ナニソレコワイ。

あ、俺もう人体改造された後だったわ。


「どういうことだ?お前が俺に何かしていたのか?」


少し警戒心を持ってネームレスに声をかける。それに対してネームレスはなんでもないような声で答えてくる。


(強化といっても肉体的にではない、精神的なものだ、いや、慣れると言う意味では肉体的にも強化されているかもしれんが、重要なのはお主自身の意識の強化だ)


意識の強化?何いってんのこいつ?と一瞬考えたがよくよく考えると確かに、戦闘の度にゲロリンになっていたら体力消耗するよな。


後は考え方というかこの世界の価値観というのかね?概念的なものを理解しろということだろうか?


まぁその辺りはこの数週間ギルバートさんとかこの修道院の人達とかにかなり教えてもらっているから確かにこちらの世界に染まったけど。


つまりこの世界のルールを覚えることが俺の優先すべきことですか。

それってこいつにどういうメリットがあるんだ?


(無論、この世界でスムーズに事を運ぶには必要なことであろう、我の分体の情報を集めるにしても常識が無ければどうしようもあるまい)


確かにその通りなんだけど、それってネームレスの情報が骨董品過ぎて使えないから、俺がギルバートさんから教わっているってことだよね?


つまり自分の不都合をうまいこと隠して俺に勉強をさせているとそういうことになりませんかね?


えぇ、ついでに言うと俺が勉強していたらいいわけだからやっぱりこいつはこの数週間何もしてないんじゃね?


(お主・・・また失礼なことを考えておらぬか?)


考えていましたとも。

そして俺はKYだから、いや、ここはあえて空気を読んだ上で問おうじゃないか!


「なるほど、俺の勉強が急務だったとしよう、んでこの数週間お前は結局何してたんだ?」


と、明らかに「お前何もしてないよね」という表情で問いかけてみる。


(お主、本当に我が何もしていないと思っているのか)


おや?予想外にも随分と自信満々に言い張りますな。

ということは何かしていたのか?その割りにはずっと俺といたはずだけど?


というか俺はネームレスが近くにないとこの世界の言語わからなくなるから、こいつを手放して遠くに行くことが出来ないんだけど。


(どういう訳かはわからぬがこの場所は我と魔力の波長がよく合う、我の魔力の回復に大きく役立っているようだ)


ん?なんかよくわからんがとりあえず魔力が回復しているらしい。

でもそれってこの場所の効果なだけであってやっぱりこいつは何もしていない気が・・・まぁいいか。

などとネームレスト会話していると不意にドアがノックされる。


「はい、どうぞ」


という声をかけるとほぼ同時くらいにドアが開かれる。

どう見ても返事をしなくてもドアを開け放ったんじゃないかと思われるほどのタイミング。


「あ、だ、駄目だよ、シロちゃん。お返事聞いてから入らないと」

「ん・・・開けたと同時くらいに聞こえた」

「それ、お返事の前に開けちゃっているよぉ~」


そんなやり取りが聞こえつつドアから二人の少女が入ってくる。これもいつものことだ。

そしてその二人の後ろからもう一人、女性が入ってくる。


「こんばんわ、すみませんジュナスさん、この子達ったら毎日毎日」


そう言ってこちらに謝りつつ部屋に入ってくる若い女性、彼女はエリーという名でギルバートさんの娘さんだ。


「あー、いえ、流石に毎回で慣れましたので気にしないで下さい。寧ろ此方の方が毎日お願いしてしまい申し訳ないです」

「いえいえ、ジュナスさんも記憶を失っておられるとの事でしたので困ったときはお互い様ですよ。それにジュナスさんは覚えも早いですし、教える方としては楽です」


そう言って笑いかけてくれるエリーさん。

何をしているのかというと、実は毎日文字の読み方や書き方を教わっていたりする。


最初にギルバートさんから提案してもらって、流石に解らないままと言う訳にもいかないと思い、お言葉に甘えて教えて貰っている訳だ。


ちなみにエリーさんは俺が覚えるのが早いと言っていたがこれにはちゃんと理由がある。

実はこの世界の言語は古代の文字を元にされている。


そして古代の文字といえばネームレスのお陰で解る、つまり古代の文字を現代風に変えているだけなのでそれほど苦労なく覚えられていると言う訳だ。


言葉を喋れるようになった以外にネームレスが役に立つとは驚きだ。(戦闘もだけど)


そんなこんなでこのところ毎日夜は勉強をしている訳なのだが、この二人、シロエとソフィがあの助け出した一件以降随分と懐いてしまったらしく、エリーさんと一緒に毎日俺の部屋に来て一緒に勉強をしていると言う訳だ。


なんでもこの二人は他の子達と違って非常に警戒心が強いらしく、外から来た人でここまで懐かれる人は俺が初めてだとか何とか。


今ではこのエリーさんとギルバートさんとシスターマザーと同じくらいに懐いているらしい。


正直言って俺はロリコンじゃないから嬉しくもないのだが、何せこの世界に来てから碌な事がなかった事もあってか、多少気を許してしまっている面もあったりする。


何だかんだでオフィーリアに会って以降、誰ともまともに会話できていなかったからな。

寂しかったということだろうか(ネームレスは除く)


ああ、ついでにいうと俺がここに来て自分の過去の話をしてこの体を見せた時に、俺の体を見て必死に癒しの魔法らしきものをかけてくれていたのも実はこのエリーさんだ。


流石はギルバートさんの娘さん、親が完璧超人なら娘も完璧超人なのだろうか。

それはともかくとして今日も勉強の時間が過ぎる。


エリーさんが言うにはもう一般的な言葉はほぼ会得できたといっているのでこれで外に出ても書いてある文字がわからないということはあまりないだろう。


まぁシロエやソフィがそうであったように実際にはこの世界には文字が読めない人も数多くいるらしいからそんなに恥じることではないのだが、やっぱり元現代社会に生きた人間としては文字が読めないというのはどうにも恥ずかしいというかなんというか。


あれはなんて読むのでしょうか?なんて知らない人にいきなり聞けるほどのコミュ力もあるとも思えない。特にこの世界では・・・。


勉強して休憩してをしばらくの間繰り返す。

今日もそれなりに勉強が終わって三人が部屋から出ていく。


俺はそれを見送った後に一人部屋で寝る準備をしていたのだが、ふと先ほどの休憩の時に話していた内容を思い出していた。


休憩の時にエリーさんとちょっとした世間話をしていたのだがその時に少し気になることを言っていた。

何でも最近一部の村で何人かの人が消えたとかなんとか・・・。


人さらいとかあるいは魔物にやられたんだろうとかそんな風に噂が立っているらしいが、そのせいでギルバートさんは今日この修道院にはおらず、その行方不明になった集落に滞在していろいろと調べたり警戒しているらしい。


俺が危ないんじゃないかと聞いたところギルバートさんはどうやら戦闘力も高いとかなんとか・・・もう何でもありだな・・と思いつつもやはり恩人ではあるので、俺も付いていこうかと話したところ寧ろ俺にこの修道院を守ってくれと言われた。


なんというか、この修道院自体女神さまの結界があるからそもそも安全なんだろうことはわかるけど、それでも嬉しくて仕方がなかった。


なにせこの場所に来てからまだ数週間程度しか経っていないのに、それでも俺を信用してくれていると感じることができたからだ。


思わず俺も気合を入れて任せてください!なんて言ってしまったしな。


そうだな。せっかく任されたんだし寝る前に軽く見回りでもするか。どうせ女神さまの結界で何もないんだろうけど何となく・・ね。


執筆のペースが落ちていますので今後はさらに遅くなるかもしれません・・・。


いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。


楽しんでいただけましたら、感想や誤字訂正、ブックマークや評価などして頂けますとモチベーションアップにつながり、更新のペースも上がるかと思います。

これからもどうぞよろしくお願い致します。


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