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第四十三話 見慣れぬ天井


気が付くとそこは見慣れない天井であった。

体を起してふと周囲を観察してみると小さな部屋のようだ。


置かれてある物の数は少なく、僅かにある物も高級な感じではなく、いかにも安物のような感じだが、それなりに掃除が行き届いているのか小奇麗な部屋だ。


首を横に向けると窓があり、そこからの景色を眺めて、今自分がいるのが二階である事がわかる。


そこまで考えて自分がベッドの上にいる事に気が付く。

ようやく自分に今置かれた環境を思い出す。


「そういや俺・・・あの後・・・」


そのまま司祭に連れられて、てっきり質問攻めにでも合うのかと多少警戒していたのだが、まずあまりに汚れていたためか、井戸から水を桶に汲んできてくれて体を先に拭いて、その後服も着替えを用意されて?


そうそう、それが終わったら腹が減っているかと問われたが、ここに来る前に多少腹は満たしてから来た事もあったので減っていないと返すと、この部屋に案内されて、『まずは一休みして下さい。詳しいお話はその後にでも』とか言われて、しばらくは警戒していたんだが、あまりに久しぶりのベッドの感触についつい寝てしまった・・・ってところだろうか。


「あ~、流石に無警戒過ぎたか?でもまぁ見たところ何ともないし大丈夫だったってところか?ん?あの形の模様はどこかで?」


(全く・・・何が大丈夫なものか)


お?壁に掛けてあった品の模様を見ていると、いきなり横から声が聞こえてきた。

ふと横を見るとひと振りの剣が柄にある宝石部分を光らせて、俺の頭の中に声を直接届けてくる。


「お、ようネームレス。おはよう。俺が寝てる間に何かあったか?」


軽い。この男、結界に入る前までは司祭を殺すか逃げるか、殺るか殺られるかの瀬戸際に立たされていたのを忘れているかのような軽さである。


(この男は・・・やはり寝ている間にその体を奪ってしまうべきだったか?)


恐ろしい事を言い出す。

まぁ本気で思っている訳ではない事はすぐにわかる。


こいつとの付き合いはそれほど長い訳ではないが、伊達に体を共有している訳ではない。


「んな事言うなよ。で?何か問題でもあったのか?」


(あの司祭の事に関しても、この施設に関しても特に問題は出てはおらぬ)


そんな事を言うくらいだから何か問題でもあったのかと思い、そう聞いてみるが特に問題がないという。


「なら一体何が『大丈夫なものか』(ネームレスの声真似)なんだ?」


お、今の結構似てたんじゃね?こいつっぽい陰湿な感じが。


(お主・・・まさか今のは我の真似をしたのではなかろうな?我の声はそんな下品で子供のような声では・・・)


「あ~、その辺のクレームはまた今度聞くから、俺が寝てる間に何があった?」


(特に何もなかったな)


んだよ!!何もないのかよ!!なら何であんな意味深な言葉吐くんだよ!!嫌がらせか!とちょっと不満げな表情でネームレスを見やる。


(お主が三日も眠り続けていた事を除けば何もなかったな)


衝撃の言葉が出来てきた。

は!?三日!?え!?三日!?三時間とかじゃなくて!?そりゃこいつ寝ないもんな。

もしほんとに三日も寝てたんだとしたらこいつはずっと暇だった訳だ。


どおりで機嫌が悪い訳だ。ただでさえ森の中にいた時も、道がわからない時にさっさと自分の分体を探せだのなんだのと言ってたからな。


しかし三日か・・・なるほど、腹が減っている訳だ。

流石に三日分も飯食い溜めしてないしな。


というか飯って食い溜め出来るのかどうか知らないけど。

クマとかは冬眠前に食い溜めするって言うし出来るのかも知れんな。


まぁ俺はクマじゃないし、というかそれを言えば多分もう人間ですらないだろうしな。

普通の人間は一週間近くもあまり眠らずに殆どまともに飲まず食わずで森の中をさまようなんて出来ないしな。


それに関してはもう諦めてるからいいんだが。

いや、諦めが早いとか皆さん思うかもしれませんけどねぇ、こちとらもう何ヶ月とかは知らないけど、俺にとっちゃもう一生分ってくらいに痛めつけられ~の、実験され~ので希望なんざとっくの昔に捨ててますよ。


丸めてポイですよ。

神とかに祈ることすらもうとっくに諦めてますよ。


そしてそんな中で助けてくれたオフィーリアを女神と崇めて何が悪い!

あ、後アグスティナさんも天使くらいなら。


オフィーリアのためなら火の中、水の中、森の中、結界の中って感じですよ。

あ、後アグスティナさんも森の中くらいなら。


(下らん事を考えている暇があるならば、さっさと動け)


下らんと!?オフィーリアの事を下らんと今そうおっしゃいましたね!?貴方!?オフィーリアほど素晴らしい人間は過去現在きっと未来においても存在しませんよ!ええ!そうですとも!あ、後アグスティナさん(ry・・・


「まぁとりあえず俺が三日寝ていたってのは間違いないのか。その間に司祭とかって様子を見に来たりしたの?」


いい加減真面目な会話をしないと話が進まないこともあったので、そろそろ真面目な雰囲気を持って話し出す。

ネームレスも俺の雰囲気を察してか、先ほどまでの軽い感じではなく真剣な声音になる。


(うむ、何度か来ていたがお主が寝ているのを確認してはすぐに出て行ったな。)


「ちなみにお前は何か調べられたりとかはされなかったのか?」


こいつ見た目は普通だけど、あの司祭ならこいつの事を何か感づいていてもおかしくはなさそうな雰囲気というか強さというかを持ってそうだし。


(特にそういった事はなかったが、我に視線を何度かは向けていたな)


やっぱり。という事は違和感を抱いているけど、その違和感が何かは分からないといったところか。


「確かこの世界って聖剣ってのがあるんだよな?お前がそれと思われてるかもな」


(聖剣か・・・そうであればよいのだがな)


なんですかその意味深なセリフは・・・どういう事か聞こうと思ったら急に扉が開いた。

ガチャっと扉が開かれる。


それと同時にこれまでのんびり話してはいたが、ほぼ反射的にジュナスはネームレスを手にする。

そして入ってきたのは十歳になるかどうかというくらいの少女であった。


というか一緒にこの修道院までやってきた少女の内の一人のソフィであった。

入ってきたのがソフィとわかると警戒を解いて力を抜く。

ネームレスからは迂闊だという苦情の声が聞こえてきたが。


ソフィと目が合うと、ソフィの方もこちらの緊張が伝わっていたのか何も言葉を発する事が出来ずにいたが、こちらが警戒を解いた後に「ふぅ」と息を吐いてから語りかけてきた。


「やっと目を覚まされたのですね、良かった。随分とお疲れのようでしたけれど、お体の方は大丈夫ですか?」


この子は何というか・・・どんだけ礼儀正しいんだ?修道院の子って事だし、多少そういった躾け的なのもあるかも知れんがそれにしても丁寧な。


ここの子は皆そうなのかね?・・・・・いやそれはないか。(脳裏にシロエが浮かんだため)


「ああ、自分でも思った以上に疲れていたみたいだな。体は問題ない、が少し長居し過ぎたようだ」


そういうや否や立ち上がろうとするジュナスに慌ててソフィが言葉を発する。


「あ!ま、待って下さい!今司祭様をお呼びしますので!それにご飯も用意しますのでもう少しそのままでお待ちください!!」


ジュナスが長居し過ぎたと言い、立ち上がろうとしたところからどうやら今すぐにこの場所を立ち去ろうとしていると思ったのか慌てて止めに入る。


いや、まだフィーリッツ王国の場所とか関所があるんだっけ?

その辺の紹介状とか貰ってないから出て行くつもりはないんだけど。


まぁ司祭に会ってその辺りだけ貰ったら出て行くつもりではあったんだが、向こうから呼んで来てくれるんなら手間は省けるな。


しかしこの子は多少周りが見えているように感じた気がしたけど、そうでもなかったのか?


そういや、三日も食ってないらしいから腹も減ってはいるし、用意してくれるってんなら貰うけど、金はないんだけどな!


「まぁそういう事ならもう少しここで待っていようかね。」


その言葉を聞いてホッとしたかのような表情になり、後ろを振り返る。

ん?良く見るとソフィの後ろからあのシロエって子がこっちを覗いているな。


「じゃあシロちゃんは司祭様を呼んで来て。私はご飯の用意をしてくるから。」


「・・・・・ん・・・(コクコク)」


一言発するだけでパタパタと足音を立てて走り去っていく。しかしほんとに喋らないな。

それを確認し、ソフィは一度こちらを見てお辞儀をした後に同じように歩いて行った。


「いや、ドアは閉めようぜ・・・」


俺が抜け出さないかどうかわかる為とか?いやいや、それならむしろちゃんと閉めた方が抜け出そうとした時にわかるだろうから、単純に閉め忘れただけか?


「礼儀正しくはあるが、しっかりしているようでどこか抜けてるな・・・天然か?」


(天然?天然とは一体何だ?)


ネームレスは聞いた事のない言葉に反応してきた。いや普通の天然の意味は知ってるんだろうけど、このタイミングで言う事じゃないだろうから聞いてきたんだろう。


しかし・・・天然って言葉にして伝えるのは意外と難しいな・・・えっと・・・・


「あ~、まぁ要は意図しないで変な事・・・変な事ではないか?まぁ意図せずに変わった事やら抜けたりズレた行動をしたりするってこと・・・かな?」


かなり俺的見解だから実際には違うような気もするけど・・・まぁネームレスは言葉の意味も知らないレベルだし適当でもいいだろ。


全く見当違いって程でもないと思うし。


(ふむ?良くは分からぬがつまりはポンコツということか)


ちょ!おま!人がわざわざ遠回しの言い方したのにそんな直線的に!?


いや、天然の人全てがポンコツなんて言うつもりないけど、あくまでもごくごく一部の話しであって、しかも行動全部がおかしいわけでもないからね!たまにだからね!?


というか天然を知らないのにポンコツを知ってるってのもどうなの!?こいつの知識偏り過ぎじゃね!?


(まぁあの娘が此処を出るなと言って、頭は下げた割に扉を開けたままという良く分からぬ行動をしたのには間違いあるまい。ポンコツであろう)


・・・・・ネームレスの中でソフィはポンコツ扱いが確定してしまった。

まぁこいつの言葉がわかる訳でもないだろうし、その辺はいいか。

どうせソフィとかとはこの場所にいるまでだけの間柄だしな。


となると司祭が先か、飯が先か、司祭が用事でもしていれば飯だろうけど、どっちにしろ少しは時間がとれるか?それならひとまず今後の予定をちょっと確認しておくか。


おっと、先に開いたままの扉は閉めておこう。


他の小説と違って無駄に説明文が多くてすみません。


いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。


楽しんでいただけましたら、感想や誤字訂正、ブックマークや評価などして頂けますと大変うれしく思います。これからもどうぞよろしくお願い致します。


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