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第三十八話 薄れる警戒

ゲロゲロした後にひとまずは先程の場所に戻ったジュナス。


ビクッとされたが現れたのがジュナスだったことに若干の安堵の表情を浮かべた二人が、再度不審な視線をしてみてきたが、その視線を受けつつも、一つの提案をする。


「色々聞きたい事があるんだろうが、今はひとまず場所を移動したい。それほど離れる必要はないが、さっきみたいな奴が他にもいると厄介だからな。俺は移動するがお前達はどうする?付いてくるか?それとも別行動をとるか?俺はそれでも構わないが・・」


ジュナスはそう言葉にしたが相手からの答えはほぼわかっていた。


「ま、待って下さい!私達も付いていきます!」


そういってシロエの方を見るソフィ。

それに対してシロエもコクッと首を縦に振った。


まぁ当然だろう、つい今し方、目の前で明らかな暴力の塊とも言えるような事態を目の当たりにして、更に他にもいるかもと遠回しに脅かしたようなものだ。


さっきの彼女達の様子を見るからに、戦いに慣れているようには見えない。

そんな状態で俺までいなくなれば、自分達の未来はもはや見えているも同然だ。


それくらいの頭が回るという事は、先程までのやり取りである程度、予測できていた為、彼女達はどうあろうと俺に付いてくるしかない。


そこまでわかっていながらこんな発言をするんだから・・・俺も大層悪者になったものだ。


「良し、ならすぐに移動を開始する。俺の後ろにいろ。ただしあまり離れない様に、周りは暗いからな。見失おうものなら置いて行かざるをえんぞ」


更に念の為そう言っておく。

これで多少無茶をして移動しても付いてきてくれるだろう。


俺がここまで慌てて移動を開始するのは勿論それなりの理由がある。

理由は当然、あの触手マンを通じて俺の居場所がバレた事だ。


奴自身は完全に潰したが、あれだけの改造を出来るような奴が、よもや俺を捕まえるだけの力しか持たせていないわけがない。


当然俺を見つけると同時に、自分達の元にその情報が手に入るようにしていると、考えるべきだ。

そのパターンって小説やらゲームじゃ定石だよな。


となれば次にいつ追っ手がやってくるかわからない。

その為、即座に移動をしたかったのだ。


だからと言ってあまりに動き過ぎるのも、今の段階ではあまりいいとも言えない。

動くという事は気配を大きくするも同然、そうなればこちらの移動がバレる。


まだ完全に目的地までの進行方向がわかっていないのだ。

それがわかっているのであれば、いっそ無茶をしてでもそちらに突っ切るが、今はそれが出来ない。


この二人を失えば、いよいよ適当に移動するしかなくなる。

そうなれば間違いなく、迷っている間に奴らの追っ手に捕まるのは目に見えている。


さっきまでは彼女達が、目的地を知っていれば聞こうかな、程度の気持ちだったが、完全に状況が変わってしまった。


これは何が何でも彼女達、あるいは彼女達の保護者にフィーリッツ王国への道、もしくはそれを知る者の場所を聞かない事には俺は詰んでしまうな。


「・・・・良し、この辺りでいいだろう。それほど離れてはいないが、あまり移動しすぎて逆に他のやつらと出会ってしまっても意味がないからな」


俺は二十分ほど移動をした後、後ろを振り返り二人にそう告げる。

二人は息を切らしながらも必死に付いてきていた。


何とか焚き火を起こして、適当に丸太を探してきてそこに座る。

ソフィとシロエの二人は俺とは対面に、先程と同じように座るのでその二人に向かって水を渡す。


「少し飲むといい。落ち着いたら質問を受け付けるから今は少し休め」


俺がそういうと多少は動揺していたが、先程よりは警戒の色も薄く、水を受け取って飲んでいく。

おや?何で警戒が薄れたんだろう。


ソフィの方は元々ある程度、警戒を解いていたけどシロエって子の方まで警戒の色が薄れたな。

その原因が良く分からん。


しばらく無言のまま時が過ぎる。

少しするとソフィの方から声がかけられる。


「あ・・・あの・・・」


「ん?あぁ、少し落ち着いたか?そっちの子も、もう大丈夫か?」


俺はそういうと、シロエと言う子にも声をかける。先程警戒が薄れつつあると感じた感覚が、事実かどうか確認のためだ。


「・・・ん」


そういうと首を縦に振る。

どうやらこの子は、元々あんまり喋る子じゃないみたいだな。

だがさっきほど目つきがきつくないな。


「え、えっと・・」


俺がシロエと言う子を見ていると、ソフィと言う子が喋りかけてきた。


「あぁ、済まないな。で、何を聞きたいんだ?」


「あ、いえ・・・その・・二度も命を救っていただいてありがとうございます!」


そういうとソフィが、凄い勢いで立ちあがって頭を下げた。

ん?二度?俺が助けたのってあのハゲとデブから以外にはないけど?


もしかして、あの場所に置き去りにせずに俺が付いてきていいって言った事か?

でもそれにしては一回目はまだしも二回目のは命を救うというほどではないと思うけど・・・。


「二度?」


俺が素直にそういうと、今度はシロエと言う子がこっちを見て喋る。


「ん・・・デブとハゲ・・あと変な蔦の魔物・・・」


あぁ、もしかしてこの子たち、さっきの触手マンが俺に対しての追っ手って事に気が付いていないのか?


そりゃそうか、この子たちはあの場所から動いていなかったから、そもそもあいつが改造されたであろう触手人間であることにも気が付いていないだろうし、実験体云々の会話も聞いていないだろうしな。


と言う事は、あの変な魔物から俺がこの子たちを救ったと思っている訳か。

まぁ、魔物なら知性が殆どないから当然自分達も狙われていたと思って当然だしな。


ふむ・・・使えるな。

嘘をつくのはあまり気が進まないが、正直今の俺は目的の為に手段を選んでいる余裕はない。


今こうしている間にも、いつ奴らの追っ手が来るかわかったものじゃないからな。

少しでも有利に使える状況があれば使わざるを得ないな。


この子たちには悪いが、このまま勘違いしておいてもらうか。

その分まぁ・・・ちゃんと家には帰してやるかな。

それくらいはしてやってもいいだろう。


「あぁ、その事か。別に気にするな。ただの気まぐれだといっただろ。俺に対しても害があったから排除しただけだしな」


「それでも!私達が命を救われたことに変わりはありません!ありがとうございます!」


そう言って下げた頭をなかなか上げようとしない。

悪いが俺はこんな少女にいつまでも頭を下げさせて、いい気になるような趣味はない。


「わかった。わかったから少し落ち着け。俺はいつまでも人に頭を下げて貰っても嬉しく感じるような性格はしていない。礼を言ってもらえたならそれでいい。まぁそれでも恩を感じてくれるなら俺の頼みを聞いてほしいところだが」


俺がそういうとようやく頭をあげてこちらに顔を向けてくる。


「はい!そういえば先程も、私達に何かお伺いしようとしておられたかと思います。私にわかる事でしたら何でもお答えします!」


そういうソフィに対して隣のシロエも「ん」と同じように、こちらに向かって首を縦に振っている。


しかしさっきから気になっていたんだが、二人とも移動の時からなんかやたら俺の顔を見てきているけど・・・俺の顔なんか変なのか?


そういやこの世界に来てから鏡なんて一切見ていないからどれだけ痩せこけているかわからないけど。

しかし何これ?なんか一気に態度変わり過ぎじゃない?


と思ったけど、よくよく考えれば、あのデブとハゲの時はこの子たち気を失っていたから本当に俺が助けたかどうかわからなかった訳だ。


故に疑っていたのだろうが、今回に関しては目の前で助けたわけだから、俺が言っていた事も信じたってことか?


可能性としては無くは無い。

しかしそれだけでここまで変わるとも思えんのだが・・・。

まぁこっちに都合が悪いわけではない、むしろ好都合と言えよう。


それならそれでさっさと目的の場所を聞いてしまって、この子たちも家に帰して、早々にフィーリッツ王国に行ってしまおう。


「じゃあ聞くが、フィーリッツ王国ってところの場所は知っているか?」


サブタイトルがちょっと安直ですかね?


いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。


楽しんでいただけましたら、感想や誤字訂正、ブックマークや評価などして頂けますと大変うれしく思います。これからもどうぞよろしくお願い致します。


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