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第三十五話 不意打ち

戦闘とかなさ過ぎて退屈かもしれません。


ジュナスは二人が目を覚ますのを待ってからまず食事をさせた。


その理由はまず一つ目にかなり時間が経っている事で彼女たちが弱ってしまっても面倒だと思った為。

そして二つ目の理由は勿論、彼女達に警戒心をある程度、解いて欲しかったからだ。


ジュナスの今の一番の目的は当然ながらフィーリッツ王国へ行く事にある。

だがそのためにはまず道がわからない。


道を知るためには誰かに聞かなくてはならないのだが、今の彼の現状では適当に近くにいる人に道を尋ねるというわけにはいかない。


何故なら彼はおそらくは今いるこの大陸の国から脱走してきたのだ。

当然指名手配的な事をされていてもおかしくはない。


まして近くにいる人に手当たり次第に聞こうとしようものなら、その人物が追っ手であった場合、間違いなく戦闘になる。


見たところ普通の兵士っぽい奴ら一人二人相手ならネームレスに任せれば何とかなると思うがそれもあくまで予想に過ぎない。


アグスティナさんみたいな力を持った奴がいないとは言えない。

むしろアグスティナさんだけが特別だと考えるのはあまりに楽観過ぎる。


決して多くはないのであろうが、ああいった力を持った奴が少なくともいる事を考えれば、うかつに人に道を尋ねるなんていうのは自殺行為に等しかった。


そうなると俺自身に取れる方法など限られてくる。


明らかに兵士でないものに聞くこともいいが、それ以上に悪さをしているものなどは、自分自身にも弱みがあるため、自分の事がそう簡単にばれる事はないだろう。


それならさっきの男二人に聞けばよかったんじゃないかという選択肢が出てきたのだが、どうにもあの時は頭に血か昇っていたのか、ついカッとなってやってしまった。


後悔はしてない。が、少し早まったかとも思った。

しかし自分と同じような境遇に晒されつつあった人間を助けないほど、ジュナスは人間を捨ててはいないのだ。


とにかくそんなわけで今のジュナスの頼みの綱はこの少女達と言うわけだ。

それならばある程度はご機嫌をとるのもいた仕方ないというもの。


最悪フィーリッツ王国がわからなくても彼女達の住んでいるであろう修道院にさえ行ければ大人がいるだろう。


大人がいれば彼女たちを救った恩を感じてフィーリッツ王国の場所くらい教えてくれるであろうという打算があったからこそ彼はここまでやったのだ。


決して彼女達を見捨てるつもりはないが、彼女達の望む事をすべてやる義理はない。

あくまでも彼女達は自分の目的の為に救ったのだと、そう自分に言い訳しているジュナスであった。

食事を終えた二人に向かってジュナスは語り出す。


「さて、まず自己紹介しておく方がいいか?俺はジュナスだ。成り行きとしてはお前達二人が、変な男どもに連れ去られようとしていたみたいだから、まぁちょっと気まぐれで助けたってところだ」


ジュナスは自身の名前と告げるとすぐに何が起こったのかを話した。

勿論、自分が脱走しただのと言った括りは話してはいない。


場合によってはこの二人からどこに漏れるかわからないからだ。

それを聞いた二人の内の一人の少女が話し出す。


「そうだったんですね。助けていただいてありがとうございます。私はソフィと言います。こっちの子はシロちゃん・・・シロエって言う名前です」


「・・・ソフィ・・・」


「シロちゃん、名前くらいはいいじゃない。それに助けてもらったみたいだし」


「・・・ほんとか・・・・・・わからない・・・・・」


「シ、シロちゃん・・・」


それを聞いたジュナスはなるほどと思う。

どうやらこのソフィと言う子は俗に言う良い子なのだろうな。


いきなり気絶して気が付いたら目の前に知らない男がいたのにその男の言う事を信じるとは・・・いや、実際に信じたのかはわからないが少なくとも完全に否定しているというわけでもないのだろう。

やはり良い子ということか。


こちらに向けてくる笑顔がかなり違和感があるが・・・な。

現実世界ではよく見た笑顔だ、あまりにも見事な営業スマイルといったところだろう。


もう一人のシロエって子はむしろ逆だな。

ほぼこちらの事を信用してはいない。


だがこっちの反応が普通だろう。

両極端すぎる気もするが俺としてはこのシロエって子の方が逆に理解できるな。


「正直それに関してはどうとも言えない。信じてくれと言ったところでそれを証明する方法はないからな。だが別に俺を信じなくてもいい。一つだけ教えてほしい事があるだけだからな。それさえ教えてもらえれば君たちは好きにして構わないさ」


俺は一気に手札を切る。

正直目的さえ達成できればこっちとしてはあまり他の事には関わっていたくないというのも本音だ。

なにせ、いつ奴らの追っ手が来るかわからない状態だからな。


「教える?何か尋ねられたいのですか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


ソフィと言う子は首を横に傾けて、おそらく頭の上に?が浮かんでいるような感じか。

シロエって子は相変わらず懐疑的な目でこちらを見ている。


「ああ。君達は・・・・・・・っ!!?」


フィーリッツ王国と言う場所を知っているか?という問いかけは途中で中断された。

突如として向けられた自身への殺気が、ジュナスの言葉を遮ったのであった。


それは唐突であった。

ジュナスの座っていた木の丸太に向かって襲いかかってくる鞭のような物。


それを咄嗟にネームレスが気付き、ジュナスと無理やり体を入れ替えることによって何とか回避に成功する。


同時に即座にネームレスが自身の本体である腰の剣を抜き、攻撃の飛んできた方向へと視線を向け、剣を構える。


二人の少女達は何が起きたのかわかってはいない様子であるが、危険な状態であることに気が付いたのか、シロエがソフィを庇うように前に出ている。


だが二人とも足は少し震えていることから、あまりこの手の展開には慣れていないようだ。


そんな彼女たちの気持ちを知ってか知らずか、関係なしにネームレスに向かって再び鞭のようなものが振り下ろされる。


それをネームレスはたやすくはじき返して語りかける。


「貴様、一体何者だ?何故我らを狙う?」


突如先程までと話し方も雰囲気も違うジュナスの様子に戸惑う二人であったが、ネームレスは特に気にすることなく正面を見据える。


(すまんネームレス、助かった)


自分では全く反応できなかったことで心臓は凄いドキドキしているが、ネームレスは何の問題もないというように反応して見せた。


「よい。しかし何者だ?お主に予測はついておるのか?」


(あぁ、大体の可能性はな。あの子たちを狙うことなくこっちを狙ってきた。と言う事は狙いは俺だ。つまりは・・・・・)


「奴らの追っ手・・・という事かの?」


ネームレスが俺の予想の答えを言う。


(だろうな。もし相手が魔物なら俺たちじゃなくむしろあの子たちを狙うだろ?俺があの子たちより弱いとみられることなどありえんだろ。さっきの盗賊共も同じ理由だな)


それに対して自分がそう思う根拠を考えてネームレスに伝える。


魔物は基本的に弱い人間を狙って餌にするらしく、知性はあまりないものが多いが相手の強さを測るという部分だけで言えば、本能的なものがあるのか、ある意味人間よりも敏感だという事だそうだ。


この辺りの知識はネームレスから聞いていたが、ネームレスは知識としては知っていてもそれがイコール今の状況に繋ぐことをあまりしない。


襲ってくる奴は返り討ち、という考え方と実際にその力を持っているからだろう。


(しかしまさかお前の危険感知を抜けてくるなんてな。ヤバい相手なのか?)


ここでそれこそさっき考えていたアグスティナさんクラスのような力を持った相手が来てしまった場合は非常に不味い。


場合によってはあの二人を見捨ててでも逃げなければいけないレベルだろう。

・・・俺にその覚悟があるのかどうかはまだ分からないが・・・


不安になりつつ、自分はいざという時にこの子達を見捨てることが出来るだろうかと不安になる。


「いや、少々気配が妙だ。どうも野生の獣というか植物というか、そういった程度の気配しか感じぬ。故に我も気が付かなかったというよりは捨ておいたといったところであった」


しかしネームレスからは強敵というよりは変わった気配だとだけ言われる。


(野生の獣はいいが、植物?野生の獣にしてはこっちを狙いすぎじゃね?植物に至っては意味不明だが。しかし確かに攻撃はほぼさっきから変わらず鞭っぽいので狙ってくるだけだな、知性があるようには感じられんがその割にこっちしか狙わない・・・わからん!!)


「ふむ、まぁわからぬなら一気に仕掛けて消してしまえばよかろう!」


ネームレスがそういうや否や一気に敵の方へと駆け出す。

こいつがこういうのならおそらく勝算があるのだろう。


こっちの事情だし少女二人は完全に蚊帳の外に置いといて、さっさと終わらせてもらおう。


ネームレスが周囲から襲いかかってくる鞭のようなものを弾きながら一気に敵本体の方へと駆けて行く。

今更ですが、()内は心の声になり、ネームレスが裏にいるときはこちらに

ジュナスの体を扱って表にいるときはジュナスが()内のセリフになります。



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