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第三十話  詰問 心の変化


一つの闇が二つの影に向かって疾走している。

その闇は腰に鈍い光を放つ剣を携えている、と闇が腰の剣に手をかける。


普通の人間ではありえないほどの速度で駆けてくる闇。

二つの影まであっという間に距離を詰めていく。

と、ここで二つの影に動きがあった。


一つは左手に抱えていた袋をもう一つの影へ渡すと、両手に斧を持って闇に向かって対峙する。

だが闇のスピードは速く、対峙する影の男、スキンヘッドの男は僅かに動揺を見せている。


その隙を逃さないかのように闇は一直線に駆けていく。

スキンヘッドの男と闇の距離がほとんどなくなるとスキンヘッドの男の両手の斧が闇に向かって振り下ろされる。


普通の獣やモンスターであったならばこの一撃で絶命、あるいは致命的な傷を負ってまともに動くことなど出来はしなかったであろう。


だが闇はその振り下ろされた斧をギリギリのタイミングで左に抜けて行く。

何があったのかわからない、と言わんばかりにもう一つの影、太った体型で醜悪な容姿の醜悪デブは唖然とした表情をしている。


きっと相手は野生の獣かあるいはモンスターだと思っていたのだろう。

故にスキンヘッドの男の一撃で、闇は地面に沈むと信じて疑ってはいなかったのだ。

だがそれも仕方ないことだったかもしれない。


一体誰が野生の獣やモンスターと同じか、あるいはそれ以上の速度で人間が迫ってくると考えるだろうか。

いや、はたして闇は人間であったのか、それすら醜悪デブの彼にはわからない。


そう、彼には何があったのか、闇の正体はいったい何だったのか、それは永遠にわかることはないだろう。

何故なら彼の体と頭は既に一つの場所に存在してはいないのだから。


何が起こったのかわからないという表情だったが、自身の両手に手ごたえを感じていなかったスキンヘッドの男は警戒するかのように体を屈めて周囲を見渡した。


何かが起きている、今自分の周囲に、自身が死を体感するほどの何かが起きているのだと感じて身震いするが、そんな自分に叱咤して即座にもう一人の仲間に向かって声をかけた。


「な!?なんだ!?野生の獣じゃねぇ!モンスターか!?おい!!ガキ共は一旦地面に置いて、てめぇも手ぇ貸しやがれ!」


そう声をかけるが返ってきたのは静寂であった。

否、ボトッと小さな何かが落ちる音とドサッと今度は大きな何かが落ちる音であった。


それを聞いたスキンヘッドの男は、てっきり仲間の醜悪デブが自分の指示に従って、二つの袋を地面に置いたのだと思い、そちらに視線を向けた。


そして見たのだ。

そこにあったのはかつての仲間だった男の頭と体、そして自身を見下ろす一つの闇を。


「び!びゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


おそらく身長190を超える大の大男が、腰を抜かして地面に尻もちをつきながら必死に後ずさりしようとしている。


その表情は世界の絶望とでもいうかのように怯えており、目から涙が流れて鼻水も垂れてそして口からはとても厳つい見た目からは考えられないような悲鳴が上がっている。


「ひ・・・・ひぃぃぃぃ!た・・たす・・・たす・・け・・・たす・・・」


そんな男を見下ろしているのは身長170程の男。

強そうな体格ではなく、どうみてもスキンヘッドの男の方が強そうではあるが、その男の目が赤く、手にはひと振りの剣が握られており、その剣は魔力で鈍く光っている。


そして足元には一つの体とその体と永久に離れてしまった首が転がっていた。

見下ろしている男はそんなスキンヘッドの男に対して右手の剣を振り上げて・・・男の頭上ギリギリで剣が止まった。


「ひ・・・ひぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!・・・・・あ・・・あ・・?」


どうやらギリギリで斬られなかったことに、何が起こったかわからないといった風の表情で見下ろしている男に視線を向ける。


見下ろしている男ジュナスは動きを止めている。


(待てネームレス!その男はまだ殺さないでくれ)


否、ジュナスが動きを止めたのだ。

当然ネームレスからは非難の声が上がる。


「何故だ?この男はお主の敵であろう。ならば構わぬとそう申したはずだ」


(わかっている。だが今は待ってくれ。その男からある程度情報を聞いておきたい。それが終わったら好きにすればいいが、とりあえず先に俺に話をさせてくれ)


止めた理由を説明して、その後は好きにしてくれと言うと肯定の感情が感じられた。


「なるほど、良かろう。が、念の為、先にこの男の魔力だけは吸わせてもらう。お主に変わっている間に余計な抵抗をされても困るのでな」


(お?おお!そうだな、頼む。・・・・・助かる)


ネームレスが自分を気遣ってくれたことに驚きつつも少し嬉しくて礼を言う。


そう会話が終わるやスキンヘッドの男に向かって剣を接触させる。

スキンヘッドの男からすると、いきなりよくわからない化け物みたいな男が襲い掛かってきたと思ったら、独り言をブツブツと言い出して、それが終わると剣を向けられたのだ。


もはや何が何だかわからなくて、その不気味さが一層恐怖を生み、それだけでスキンヘッドの男は今度こそ殺されるのかと思い、顔を蒼白にしていた。


が、次の瞬間、自身の力が急に抜けて手に力が入らなくなり、もはや上半身を支えることも出来ずに地面へと倒れこんだ。


意識はあるが、まるで全力疾走しきった後のように力が入らなくなっている。


「な、なん・・だ・・・これ・・・?」


(魔力を限界以上に吸うと生命力が吸われる。ギリギリまで吸わしてもらったぞ。・・・・全く大した量ではなかったがな)


少し残念そうにいいながら、そういうと意識をジュナスと入れ替える。


「そうか、いや助かった。ありがとう」


そう呟くとジュナスは無表情でスキンヘッドの男に向かって声をかけた。


「おいお前。少し話を聞きたい。聞かれたことに答えるんだ、いいな?」


スキンヘッドの男はその言葉を聞いて自分が殺される事態は避けられたと思い、安堵する。

そして自分は殺されない価値があると考えて、少し態度が強気になる。


「て、てめぇ一体何なんだよ!俺達にこんな事しておいてただで済むと・・・」


スキンヘッドの男の言葉はそこで止まった。

何故ならジュナスがスキンヘッドの男の顔のすぐ横の地面に剣を突き刺したからだ。


「・・・・立場を理解しろ、お前は俺に言われた事だけ答えていればいいんだよ」


そういうジュナスの表情は決して元いた世界で見られるような表情ではなかった。

何が彼を変えたのか、きっと彼自身さえ自分が今どんな表情をしているのか知り得ないだろう。


だがそこまでされてスキンヘッドの男は、自分の立場を少なからず理解したのか、必死に首を縦にコクコクと振るだけになった。


「よし。まずお前らは一体誰だ?この場所で何をしていた?あの子たちは一体誰だ?ゆっくりでいい、一つずつ答えろ」


何の感情もない声でそう言われ、ガタガタと震えながらもなんとか言葉を紡ぐ。


「お、俺達はただ単に村に住んでる男で、あ、あいつらは村の娘で森で行方が分からなくなったから、お、俺達が探してみつけて連れ帰ってるとちゅ・・」


そこまで聞いてジュナスは、ネームレスに一時体を渡してあることを頼んだ。

それを聞いたネームレスは即座にその行動に出る。


ジュナスの体を借りたネームレスは剣を縦に一度振るう。

それはとても速い動きであり、決して普通の者には目で追う事も出来なかったであろう。


だからスキンヘッドの男も自身の身に起きた事にしばらく気がつかなかった。

そう、自身の左頬に何かが付いて何だろうと思い、左手でそれを拭おうとして気付いたのだ・・・・・自身の左腕がない事を。


「い・・・・いぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!う、腕が!!俺の腕が!!!うでがあぁぁぁぁぁぁ!!!!いでぇぇぇぇぇいでぇよぉ!!!」


自分の目で見てしまったことで、痛みを脳が認識したのか途端に大声で叫び出した。

そこまでしてからまたジュナスに体を戻す。


「(オエッ、まだ慣れないな・・でも前よりマシか)」


少し顔をしかめてからジュナスは再びスキンヘッドの男に話しかける。


「・・・喚くな。お前が本当の事を言わないからこうなる。いいか、次はないぞ?もう一度だけ答えるチャンスをやる。お前たちは誰だ?何をしていた?」


ここまで自分の心が残酷に変わった事をジュナスは少なからず、自分で気が付いていた。

そしておそらくはその原因であろう大元にも・・・。

だが今はそれは後にして、この男からの話を聞くことにしたのだ。


「た!助けて!お願いです!ちゃんと話します!話しますから命だけは!」


「だったらさっさと話せ」


特に何の表情も感情も抱くことなく、そのままの声音で再度問う。

すると今度は本当のことを話し出した。


「お、俺はケーガナイっていう元蛮族の男だ・・です。今はこの先にある以前砦だったところを根城にしていて、このガキ達は近くに住む修道院の娘達で・・その・・そこにエルフの娘がいるってんで・・エルフってのは貴重だから売れば高く売れるってお頭に言われて・・・」


ガタガタと震えながらもなんとか声を出す。

普段使いなれないような半端な敬語?のような言葉を言おうとしている辺り、かなり混乱しているようだ。


「それで、その娘達を見つけたから誘拐して売り払おうとしてたって訳か」


「お・・・俺達は指示された通りやっただけなんだ!ほ、ほんとだ!!娘たちは諦める!だからなぁ頼む!見逃してくれ!ノーカウントだ!ノーカウント!」


と、ここで話していたはずのジュナスが急に会話を止めた事を不安に思ったケーガナイは、自分が何か問題な発言をしたのか、と顔を青くしていた。


もしそうならさっきと同じように今度は、右腕が斬り落とされているだろうと思い至り、背筋が震えてすぐに右腕に視線を移す。


そこにはちゃんと右腕が付いていることから、どうやら自分が問題発言をしたというわけではない事に先ず安堵する。


となると一体なぜ会話を急に止めたのかと考えるケーガナイ。

その時ジュナスは、今の発言を聞いて思考の海の中にいた。

相変わらず区切りが微妙です、すみません。

自分の好きな作品のセリフの一部を少し変えて流用したりしてます。問題があった際には訂正しようと思います。


いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。


楽しんでいただけましたら、感想や誤字訂正、ブックマークや評価などして頂けますと大変うれしく思います。これからもどうぞよろしくお願い致します。


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