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第二十話 信頼、魔法の脅威

いつもより気持ち長いです。


「はぁはぁはぁはぁ(クソ!気持ち悪い、別に死体を見るのは初めてじゃないのに・・・なんか良く分からないけど気持ち悪い)」


もう吐く物が何もないのに空気だけで嘔吐感を促す。

そんな彼の背中を撫でているのはオフィーリア。


彼が何故、こんな状態になっているのかをあまり理解出来てはいない彼女だったが、そのような状態の人を目の前にして、無視することなど出来ないのが彼女の性格であった。

そしてそれを少し離れた場所から見ている一人の女性、アグスティナ。


剣を片手に持ち、二人の様子を見ているその表情は、彼がそんな状態になったのを悲観するのか同情するのかわからないような面持ちであった。


ジュナスが少し落ち着いたのか顔をあげたその時、目に入ったのは背中を撫でていたオフィーリアでも、少し離れた場所からこちらの様子を窺っているアグスティナでもなかった。


彼の視線はその奥に、その視線の先は彼の視力であれば精々、暗闇しか見えない。

そう、暗闇しか見えないはずだった。

暗闇しか見えてはいけないはずだったのだ。


だが実際には、先程アグスティナが戦ったときに見た、小さな光。

暗闇しかないはずの場所であり、ジュナスにとって暗闇しか見えないはずだったからこそ気付けたわずかな光であった。


だが、彼からすれば、その魔力の光が見た目よりもずっと強力で、無慈悲で、恐ろしい程の力を持っていることをつい先ほど目の当たりにしたのだ。


だからこそ、彼はとっさにそういった行動に出た。

おそらくは彼の意思ではない。

それは生物としての本能の部分が勝手に働いたことに他ならないだろう。


「う!うおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「えっ?きゃ!?」


彼は突如に大声をあげながら、すぐそばで背中をさすってくれ、自分の様子を窺ってくれていたオフィーリアを抱いて横に跳ねるように飛んだ。


その距離はとても普通の人間では出せるような距離ではなかった。

だがその直後、いや、彼が叫んだ瞬間だろう、彼の足もとから地面が突如隆起して彼らの身を貫かんと襲いかかってきていたのだ。


彼の生物としての本能が、恐怖心がその身を動かしたのだ。

その様子に驚きつつもされるがままになっているオフィーリア。

そして二人を見ていたアグスティナの表情が驚きと、そして怒りに満ちて自らの背後を睨む。


その圧倒的な殺気に宛てられてか、瞬間、暗闇からの気配が慌てるような、怯えるような気配へと変わっていくがそれでも同じようにまた、魔力の奔流を自らの手へと集めていく。


「き!貴様ぁぁぁぁ!!死んで償えぇぇぇぇ!!」


アグスティナの剣からまたも同じような輝きが放たれ、先ほどよりもより強力な魔力の奔流が暗闇へと放たれる。


それだけで、暗闇にまるでそこだけ太陽が照ったかのような明るさが生まれ、突如としてその明るさが激しい爆発と熱量へと変わっていく。


地下の密室で使うには余りに危険な技であったがアグスティナは怒りからか、その持てる力を最大限に使ったかのような火力を、自らの怨敵へと込めた。


その甲斐あってか、二度目の暗闇からの魔力の奔流は、一度圧縮し、発動の気配を感じたが周囲に変化はなかった。


「はぁはぁはぁ・・・・・・はっ!姫様!?姫様ー!!!」


アグスティナは落ち着きを取り戻すと、即座に自らの主であるオフィーリアの元へと駆けつける。

先程の戦いから更に今の一撃で、魔力を本当に使い切り、かなりフラフラではあったが、それでもその足取りが衰えることはない。


「姫様!姫様ーー!!」


近づくとオフィーリアは・・・ジュナスの頭を膝に乗せて必死にその右手を彼の顔にかざして魔法を発動している。


「姫様・・・・ご無事でしたか」


主の無事を確認して、流石にマナロスト(魔力枯渇)になったのか、膝を地面に着けている。


「アグスティナ!私は大丈夫・・でもジュナスが!!」


アグスティナは主が無事だった事に安堵したが、その無事をもたらした青年が先程までと違い、主の膝の上で動いていないことに気付く。


「彼は・・・もしや頭を!?」

「えぇ!頭というよりは顔に直接敵の魔法が当たってしまったみたいなの!出血が激しくて!」


そういうとオフィーリアは懸命に、彼の顔の右半面へ魔法をかけているが、牢で見た時のように強い魔力の力を感じられずにいる。


「姫様・・・もう魔力が!」

「くっ!このままじゃ・・・・このままじゃ!」


二人が必死にそう言いつつ彼を癒し続けている。


「(・・・・・あれ?俺、どうしたんだっけ?)」


相変わらずの暗闇の中にあって淡い光が自分の顔に向けて照らされている。

そして自分はこの光の温かさを覚えている。

とそこまでいってようやく事態を思い出す。


「(そうだ、なんか吐いてて気分悪ぃとか思って顔をあげたら、あのヤバそうな光が目に入ってとっさにビビって飛んで逃げたんだっけか・・・カッコわりぃ。んでこの展開はまた怪我しちまって治して貰ってるって訳か・・オフィーリアに借り作りまくりだな)」


目を開けるジュナス、少し片方の目が開きにくいが何とか開けることが出来た。

そこにあったのはやはりというか、予想通りというかオフィーリアの手が当てられていていた。

どうやら開きにくいのは怪我のせいらしい。


そっち側にオフィーリアの手が当てられていることからも間違いはなさそうだ。

とりあえず目を開けたことで、オフィーリアが泣きそうな顔をしながらも、こちらを見て驚いているので笑っておいた。


そういや、あの時、体が勝手に動いたからあれだったがオフィーリア、無事だったんだよな?

この子は自分が怪我してても、人の事を優先しそうだからな・・・


そこまで考えてジュナスは体を動かそうとするが、それをオフィーリアが顔に当てている手と反対側の手で押さえてくる。


「まだ動かないで!傷が完全に癒えてないから!」


相変わらず何を言っているのかは分からないが動くな・・・ということらしい。

何でわかるかというとそりゃ、体を手で押さえられていたらそういうことだとしか考えられないだろ。


でもさっきから緑色の光がどんどん弱まっているような・・・それにオフィーリア、ちょっと辛そうにしていません?


そういや、アグスティナさんもさっき戦った後に辛そうな表情していたから、魔法って無限に使える訳じゃないってことか。


もう光がほとんど出ていないにもかかわらず、なおも動くなと言うかのように、手で体を押さえてくるオフィーリア。


いやほんともう大丈夫だから。

顔はちょっとヒリヒリするけど、目も何とか見えているし体も動くしな。


そこまで確認してから、少し無理やりオフィーリアの手をどけて上半身をあげる。

そして上半身をあげて気付いた。


「(あれ?俺もしかして膝枕されてた的な?・・・・マジか!!えっ!?いや・・・えっ!?えと・・・・えっ!?)」


上半身をあげて何やら周囲とオフィーリアの顔を何度も見回しつつも顔が赤くなる。

そんなジュナスにオフィーリアは良く分からないがとりあえずは大丈夫かと安堵している。


その様子を見ていたアグスティナも、ジュナスがひとまずは大丈夫そうなのを確認して一言声をかけた。


「・・・・良く姫様を守った。今まで貴様を疑っていた。許してほしい」


ジュナスは唐突アグスティナに声をかけられた。

その声はとても穏やかで、これまでは声を掛けられても、怒鳴るかのような勢いの声だったのに、今回は完全に違っている。


また、ジュナスを見るその目がこれまでと違い、信頼されているかのような目であった。

なんとなくジュナスは自分が褒められたのかと思い、笑顔で頷く。


それだけで言葉はわからずともアグスティナとジュナスとの間に信頼が芽生えたようであった。

ひとまず状況が落ち着いたのかアグスティナがオフィーリアに向かって話しかけている。


「姫様、誠に申し訳ありません、よもやまだ敵がいたことに気付かず」

「いえ、誰も気付けなかったわ。それに貴女がいなければここまで来ることも出来なかったのだから気にしないで」


「ですが!・・いえ、はい・・・誠に申し訳ありません」


これ以上謝罪をしてもオフィーリアがその謝罪を受け取ることはないと判断したのか、完全に納得はしていない表情をしつつもひとまず謝罪を終わらせる。


「もう、無事だったんだからいいじゃない。それにしてもジュナスってどうなっているのかしら?こういうのもなんだけど、私の魔力もほとんどなかったから気休め程度しか出来なかったはずなのに、もう血が止まっているなんて・・・」


「・・・・・それは私にもよくはわかりません。ですがその辺りに彼を実験体にしようとしていた事に関係しているのかもしれません」


オフィーリアはここに来るまでに随分と魔力を消費していたのもあり、先ほどジュナスに治療をしていた時もせいぜい傷が化膿するのを止める程度の力しか残っていなかったはずなのだが、何故かジュナスは血が止まる状態にまでなっていた。


ジュナス自身はオフィーリアの治療のおかげだと思っているようだが・・・


「そう・・・よね。わからないわよね」

「はい、ですが彼が姫様のお命を救ったのは間違いありません、ですので・・・」


その時、少しずつ周囲が振動し始め、周囲の建物の一部が崩壊しだした。


「これは・・・少々無理をし過ぎたのか、ここが崩れ落ちるかもしれません!!急ぎ脱出しましょう!」

「待って!まだジュナスが!!」


見るとジュナスもさすがに周囲が崩れ始めたのを確認し、不安になったのか、体を完全に起こして周囲を窺う。

傷も残ったままで、多少フラついてはいるが、ひとまず体は動くようだ。


「なんだ!?崩れてんのか!?これヤバくね!?いや俺の体調もかなりヤバいけど、このままじゃ体調がどうのとか言ってる場合じゃないよな?皆仲良く生き埋めコースまっしぐらじゃね?」


そう思って二人に視線を送ると二人も同じように視線を返してくる。

それだけで危険であることが分かり、急いで三人が立ち上がって頷きあい、走りだす。


とにかく早く脱出しなければ!その思いが三人に歩を進ませる。

だがあまりに慌ててしまっていたせいか、あることを見逃してしまった。

それは先程、最後に抵抗をした敵を倒した辺りを過ぎ去ろうとしたその時に起こった。


アグスティナが道の先を示すために先頭を走り、オフィーリアの肩を借りてジュナスがその魔法が発動されそうになって掻き消えたはずの場所を通ったその瞬間だった。

何故か消えたはずの魔力の奔流が再び集まりだしたのだ。


「え!?これ、なんで?」

「まさか!先程は発動者が周囲からいなくなって止まっていただけ!?」


魔力不足で未発動だった魔法が、この場で唯一魔力が残るジュナスが近づいた為であった。

ジュナスは先程の一件でその光に対して、もはやトラウマに近い程の危機感を持っていた。


だが今度は先ほどとは違い、意識が強くあったため、本能で体は動いてはくれなかった。

故に彼の取れた行動は・・・自分に肩を貸してくれていた一人の少女を・・・押し出すことだけであった。


少しでも遠くへ、その思いで押し出す腕、その直後の轟音と震動そして浮遊感・・・次の瞬間にはジュナスはその場所に存在していなかった。

本日仕事が休日のため、時間が出来れば二話目も投稿しようと思います。


いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。


楽しんでいただけましたら、感想や誤字訂正、ブックマークや評価などして頂けますと大変うれしく思います。これからもどうぞよろしくお願い致します。


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