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第十八話 帝国兵接触

本日二話目になります。

前話をご閲覧前の方はそちらを先によろしくお願い致します。

薄暗い地下道を走り続ける三つの音が聞こえる。


先頭を走るのは長身の女性。凛とした表情をして息も切れておらず、体力があることを示している。

また、青く長い髪をしているにもかかわらず、その髪はあまり乱れていないことから走り慣れているであろうことがわかる。


その次に走るのは先程の女性とは違い小柄な少女。

髪の色が銀色に近しい色をしているが、この薄暗い地下ではあまりよくわからない。

息は少々乱れており、あまり走り慣れていないであろうことがわかる。


最後に走るのは一人の青年。

年の頃は20前後といったところだろうか。

見た目より幼く見られがちな表情をしているが性格も実際にあまり大人びてはいない様子。


走り方が少々危なく、あまり走り慣れていないのか、時折何かに躓いているのに、何故か息は乱れていないという矛盾をはらんだ男である。


また服がボロボロで見た目にも育ちの良い状態ではなく、囚人と言われても納得できてしまうほどに使い込まれている。


と、これまで走り続けていた三人が突如として足を止め、先頭を走っていた青髪の女性アグスティナが道の先を窺って忌々しげに言葉を放った。


「ちっ!まさか既に先にいるとは想定外だった」


これに対して答えたのは銀髪の少女、オフィーリアであった。


「どうしたの、アグスティナ?」

「この先に帝国軍の兵士がいるようです」

「そんな!私達の事が気付かれたの!?」


小声で話しながらも驚いたように言うオフィーリア。

未だ兵士たちはこちらに気が付いてはいないようだが。


「・・・・・いえ、そういった感じではありませんね、もし私達の事に気付かれていたとすれば、敵はむしろこちらを探しているはずです。ですが今現在の彼らはこの先から動こうという気配がありません」

「じゃあ一体どうして?」


目の前の兵士たちはどこかダルそうな雰囲気で、持ち場から多少見回り程度に動くが基本的にはその場で待機しているような感じであり、誰かを探しているといった風ではなかった。


「・・・・おそらくは念の為の予備人員として配置されていたのではないかと思われます。あの牢に敵が様子を見に来たことから、私達がこの道を先に通った際に挟み撃ちするつもりで配置しておいたのでしょう」

「じゃあ今はまだマシということなのかしら?」


わずかにほっとしたような表情を浮かべるオフィーリアだったが、アグスティナの表情が優れないことを感じ、再び表情を引き締める。


「ええ、ですがいつまでもこのままではいずれ見つかってしまいます。ここは一気に突破するしかないかと・・・・・」


このままこの場にとどまっていては彼らがいつ退却するかもわからない上に万一後方から追手が迫ってきていないとも限らない、ここで待つという選択肢はないようであった。


「・・・大丈夫なの?」

「幸い今見える敵の数は六名。見えない位置と予備で置いている人員の予想からしておそらく一小隊、おそらく十二名ほどでしょう。本来は挟み撃ちで使う足止めの人員です。それほどの数を配置してはいないでしょう」


アグスティナがおおよその数を予測して周囲を観察している。


「わかったわ、私も援護するわ。」

「いえ、たった十二名程度ならば、私一人で十分です。むしろこの部隊を倒した後の方が心配です。この部隊を倒せば敵に見つかる可能性は大いに上がります。ですので姫様は周囲を警戒しておいて下さい」


強敵はいなさそうとはいえ、これまでの道のりの敵は全てアグスティナが処理してきているため、ここへきて一小隊の相手をすることに不安が残った。


だがアグスティナからすればこの戦闘によって間違いなく敵にこちらの位置がバレることを考えれば、オフィーリアが戦闘によって移動速度が低下することの方が危険と考えた。まして怪我などされては堪ったものではないのだ。


それでもオフィーリアは不安が残るからか不満そうな表情でまだアグスティナに意見を言う。


「でも、いくら貴女でもそれだけの数に狙われては・・・」


だがオフィーリアが話している途中で言葉を被せる様にアグスティナが言葉を紡ぐ。


「・・・姫様、城を出る前に私と交わしたお約束をお覚えですか?」


無理を言って城を抜け出せたのもアグスティナが手を貸してくれたからであったが、それには条件があったのだ。


「・・・戦闘の事に関しては、貴女の指示に従う」

「はい、ここは私にお任せ下さい。」

「・・・・・・・わかった。でも!危なくなったら私も戦うわ!それでいいわね?」


未だに納得はしていないようではあるが、ひとまずは説得することが出来て安堵するアグスティナ。


「わかりました。お願いします」


そういうと二人は今までずっと黙っていた青年、ジュナスの方へと視線を送る。


「わかっているな?姫様を守るんだぞ!」


ジュナスは言葉はわからなかったが、二人の真剣な雰囲気から、さっきのゴブリンの時とは違い、事態は非常に危険であることをなんとなく察知した。


まずアグスティナ、そしてオフィーリアに視線を送ると、二人とも真剣な様子でこちらを見て自分を窺っている。


それを確認した後に、二人に対して神妙な顔つきでコクリと一度首を縦に振る。

そのことで二人も、彼が事態を把握したことを察して頷く。


「では姫様、行って参ります」

「ええ、アグスティナ。気をつけてね・・・武運を」


そういうとアグスティナは再度、敵の方へと視線を送る。

そして少しずつ敵に気付かれるぎりぎりの範囲までゆっくりと近づいていく。


「(姫様には問題ないと言ったが、実際にはどの程度の部隊が配置されたのか、その敵の錬度によっては少々苦戦するかもしれんな。いや、だがどの道、戦えるのは私しかいない!ならば余計なことは考えるな!ただ目の前の敵を・・・斬るのみ!)」


アグスティナはぎりぎりまで敵に近付いていき、一度こちらへと視線を送る。

それに対してオフィーリア、そしてジュナスがそれぞれ頷き、その頷きにアグスティナも頷きで返す。


そして戦いが始まった。

いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。


楽しんでいただけましたら、感想や誤字訂正、ブックマークや評価などして頂けますと大変うれしく思います。これからもどうぞよろしくお願い致します。


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