第十一話 将軍と地下牢
短いですが、別視点で二種類入ります。
その頃、ウルベの研究所では
研究所入口にて
一人の男が入口に立っている。
男は高身長で浅黒い肌をしており、また耳も少しとがっているのか髪が少々長いので通常なら耳が見えなくなるくらいの長さなのに耳の先端が髪から飛び出している。
そしてその眼光は鋭く、瞳が別々の色をしていた。
「ようこそ。帝国六将軍第一軍団長、魔将軍・アークウェル殿」
それに相対する女性アミーラがそう答えるも、アミーラを見ることなくアークウェルの視線は研究所施設の奥へと向けられていた。
「・・・ウルベはどこだ?」
「私ならここですよぉ」
と、その視線の先からウルベが出てくる。
「相変わらず無愛想な顔をしてますねぇアークウェル。そんなことでは人生楽しめませんよぉ、もっと笑ってみたらどうですかぁ?私のように!くっくっく」
そういいつつ小刻みに肩を震わせて白衣を揺らすウルベ。
それに特に反応もせずにアークウェルは問いかける。
「ウルベ。この惨状は何だ?」
「本当に愛想のない男ですねぇ」
「ウルベ」
再三の問いかけに流石にこれ以上話を流すことも出来ないと踏んだのかウルベが呆れた様子で両手を上に向けて答える。
「わかっていますよぉ、説明しますがこんな場所で立ち話などと、私は貴方と違って繊細なのでねぇ、疲れてしまいますので場所を変えますよぉ。アミーラ、一息つきますので飲み物の準備をお願いしますねぇ」
「かしこまりました、ウルベ様」
「必要ない。さっさと・・・・」
「陛下から詳しく聞いて来いと言われているのでしょう?ついでに内部の様子も。なら研究所内に入った方が貴方にとっても都合が良いんじゃあないですかねぇ?アークウェル?」
無駄な時間を省こうとその提案を拒絶しようとするがそこにウルベが言葉を被せる。
その言葉に少しの思案をした後に答える。
「・・・・・・いいだろう」
「では、ご案内しましょうかねぇ、くっくっくっくっく」
・・・・・・・・・帝国地下牢内にて・・・・・・・・・・・・・・・
タッタッタッタッタと地下牢に二つの足音が響いている。
足音はどちらも大きくはなく、ある程度音を出さぬように走っているように感じる。
「はぁはぁ、本当にこっちで合っているの?」
「はい、間違いありません姫様。この情報はかなり信頼できる筋から入手したもの。この先にある牢で唯一
誰も入れない牢が存在しているはずです。その合鍵もここに」
二人の姿はおよそ罪人や捕虜が集う地下牢にあって似つかわしくない様相をしていた。
少女は必死に走っているがあまり走り慣れていないのか、純粋に体力がないのか息は少々乱れていたが先を走る女性の息は全く乱れておらず二人の体力の差は歴然であった。
「はぁはぁ、やっぱりあの一件は帝国が関わっていたんだわ、このことを何とか国の皆にも伝えないと」
「ええ、背後で操る帝国の者さえ打ち取ればかの国もあるいは。ですがその後に帝国とも事を構えることになるとなれば急ぎ戻って準備をしなければ。周辺国にも親書を送って協力関係を結ぶべきかもしれません」
「はぁはぁはぁ、えぇそうね。お母様にもそのように伝えないと・・・」
とそこまで言うと二人が男のいる牢の前に辿りつく。
「姫様。ここです。唯一各牢とはかけ離れ、しかも誰も入れられていない牢はここだけだと・・・・むむむ!」
「はぁはぁはぁ・・・ねぇアグスティナ?私の目には誰かいるみたいに見えるんだけど?」
「そ、そんなはずは。昨日の段階で誰もいないと確かに・・・・む?これは」
そういうとアグスティナと呼ばれた女性は地面にしゃがみ込み何かを見ている。
「どうかしたの?・・・血?」
姫と呼ばれた女性が同じくアグスティナに近寄りしゃがみ込む。
「この血は随分と新しい。おそらくは数十分程度しか経っていないでしょう。もしや情報が漏れたことを考えて慌てて牢にこの者を入れてかく乱しようとしたのかもしれません」
それを聞いて姫と呼ばれた女性の顔色が悪くなってしまう。
「じゃ、じゃあこの人は私達のせいで怪我をしたってこと?」
「姫様・・・・・・」
アグスティナは自身の主になんと声をかければいいか分からずただそう呟いた。
視点別にアップしようかと思いましたが、どちらも短かったため、合わせています。
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