第百一話 音VS音(決着)
ビッグマウス・ラウドVSフィーリッツ王国第三師団団長 ハル
「ヒャハハハハハー!!さっきまでの勢いはどうしたよ?え?どーしたよぉ?ヒャッハッハッハッハー!!!」
叫びながら腕を振り回しているだけだが、それだけでも目に見えない衝撃波の波がいくつも広がっていき、周囲もそしてハルをも破壊していく。
「クッ!全く、品のない方はこれだから!!『冬の唄』『春の唄』」
何とか持ちこたえてはいるものの、完全に防戦一方。時間が経てば経つだけハルの側のみが傷ついていく。
「どうよ!このラウド様の魔剣融合はー!!慣れるまでは喋りにくかったが、流石は俺様!適応力も世紀末並みだぜ!!ヒャッハー!!!イカしてんだろ!?てめーもさっさとイカれちまえよー!まずは耳から血を垂れ流してよー!ヒャハハハハハ!」
ラウドとの距離もどんどん縮まっていき、距離が短くなるごとにラウドの音の衝撃の威力も激しさも増していく。
「ヒャッハッハッハッハ!さーてと、そろそろ終わりにさせてもらうぜぇ!ちょうどてめぇも、逃げ場はなさそうだしなぁ!」
ふとハルが周囲を見回してみるといつの間にか岩肌に囲まれつつある。
「どういうことかしら?(大した高さではないものの、いつの間にこんな岩が!?)」
ハルが困惑していると、ラウドが自慢げに大声で語り出した。
「クヒャハハハハハ!てめぇ、俺様が何も考えずに適当に腕を振り回していたとでも思っていたのか?アァ!?俺様の音の衝撃で砕けたり、崩れた岩肌や地面の一部を、無理やり隆起させて集めてやったのさ!てめぇは必死で逃げててそれどころじゃなかったようだがなぁ!ヒャハハハハハ!!!」
「・・・・・」
「ついに何も言えなくなっちまったか、まぁいい!これで終いだからなぁ!!」
そう言うとラウドが「すうぅ!!」と大きく息を吸って、更に拳も大きく構えてハルに向けて突撃しようとしている。
それを見てハルは「ハァ・・・」とため息一つこぼすと、首を回して周囲に目を向けた。
「ヒャッハッハッハッハッハッハ!無駄だ無駄だ!!誰も助けになんざ来ねぇよ!!これで終わりだぜぇ!!脳天弾けちまいなぁ!ヒャッハーー!!!」
そう言ってラウドの突撃が始まる。
ハルは徐に聖剣を一撫でしてからスッとラウドに向けて視線を向け聖剣を構える。
「行くぜぇぇぇぇぇ!!!!ラウドシャウトウェーブゥゥゥゥ!!!!!」
ラウドがハルにジャブを打つように拳を振りながら突撃して、そのままの勢いで自らタックルを食らわせる。
ラウドの拳一つ一つから音の衝撃が発生して、それらの衝撃波が乱反射され最終的にハルの全周囲を襲い掛かり、更にタックルによる勢いと技名(笑)の叫びによる衝撃で、これまでで最大の威力の衝撃波がハルを襲った。
どぐわぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!!
と奇妙な物音とそれによって周囲の岩肌が砕け散り、ハルとラウドのいた場所にも数多くの岩の欠片が舞い落ちてくる。
尋常ではない砂ぼこりにより何も見えない状態の中、しばらくして砂ぼこりが風によって薄れていくと、タックルをした体勢のまま、何故か目を見開いて動いていないラウドがいた。
「バ・・・バカナ!!!!!あり得ねぇ!!!あり得ねぇぜ!!!何故だ!?何故無事なんだてめぇ!!!!」
そういうと動揺したラウドはそのままお尻から後ろに向かって倒れこんでしまう。何故だろう、体が上手く動かないようだ。
「はぁ・・・やれやれね。結局、貴方の力を頼らざるを得なかったわね、『スプラビ』」
ハルがそういうと、先ほどまで手にしていた聖剣が、なんとマイクスタンドとなっている。更にこれまでよりも遥かに強力な分厚い半透明のガラスがハルの周囲を覆いつくしている。
「何故だ!何故俺様のラウドシャウトウェーブを食らって何ともなっていやがらねぇ!」
「ねぇ貴方。何か勘違いしていないかしら?聖剣は何も剣の形をしていないといけない訳ではないのよ?むしろ魔法を使える人に剣なんて無意味でしかないでしょう?だったら、唄を歌うのに剣の形をした姿が本当の姿だなんて何故思ったのかしら?」
そういうとハルはゆっくりと立ち上がりながら一言呟く。
「唄ってくれるかしら?スプラビ。『清明の唄』」
ハルがそう言い放ち、唄を歌うと『春の唄』とは比べ物にならないような速度で、自身の体の傷が癒えていく。
それを見たラウドは、言葉が出ないように目を見開いて「ア・・ア・・」とだけ呻いている。
「そう言えば貴方。随分と楽しそうに私の能力を話してくれたわね。でも残念ね。確かに私だけの能力は貴方の言った通り『春・夏・秋・冬の唄』しか歌えないのだけれど。でもそれはあくまでも私個人の能力。スプラビの能力はまた別よ。我が隊は隊長から自身の基礎能力を鍛えることを重視されているから。」
そう言うと全ての傷が癒えたハルは、ラウドに向かって近づいていく。
「貴方、今何故か体が上手く動かせないでしょう?私個人の力では他人を強化することしかできないんだけど、スプラビは違うの。この子は私よりももっと、音を歌をより深く理解しているから私よりも多くの事が出来ちゃうのよ。だから・・・『処暑の唄』」
ハルがそういい歌を奏でると、ラウドが突然苦しみだして吐血する。
「こんな風に相手を弱体化させつつ攻撃する・・・なんてことも可能と言う訳よ。貴方の体がまともに動かないのもそれが理由。残念だったわね。せっかく私を倒せそうだったのに。でも褒めてあげる。私のこの力の事を知っているのは・・・貴方を含めてごく僅かだから。周囲に誰もいなくてよかったわ。あまり知られたくないのよ。奥の手って。」
「ゲハッ!?て・・てぇ・・めぇ。あの時、辺りを見回していたのは・・グハッ!味方を探してたんじゃなくて・・ガハッ!?」
「えぇそうよ。むしろ逆。誰か周囲にいるとスプラビの力がバレる恐れがあるから。それでもいいのだけれど、少なくとも戦争がある間はあまり知られたくないのよ。」
「ち・・くしょう・・・こうなりゃ・・・死なばもろともだー!!道ずれにしてや・・・る・・・?」
ラウドが無理やり上体を起こして、天に向かって腕を上げて魔力と音を出そうとしていたが、その足元から隆起した岩の塊で出来た槍によって体を貫かれてしまう。
「残念ね。悪いけれど貴方と一緒には行けないわ。さっきの唄ね。アレは『夏と秋』その二つの力を持っているのだけれど、貴方の吐血はスプラビの弱体化によって、体内が極度の変化に耐えられず起きたことなのよ。つまりそれは『秋の唄』の力。じゃあ『夏の唄』の力はどこに行ったと思う?答えは・・・少し前に貴方も同じことをしていたからわかるかしらね。」
それだけ言うとハルはラウドに背を向けて歩き出す。
「同じ音と使う者として、一つだけ教えておこうかしら。貴方は音を一面しか見ていなかったのよ。音の衝撃は確かに凄いけれど、音はそれだけじゃないのよ。人は様々な音で楽しくなったり、癒されたり、眠くなったり、悲しくなったり、怒ったり、不快に感じたりするわ。音の多様性を見ようとしなかったことが、貴方の敗因よ。」
そう言い残してハルはラウドだった者の元を去った。
音VS音
勝者 フィーリッツ王国第三師団団長 ハル
はい、いつも通りの投稿でございます。
例の如くよくある能力のよくある展開で楽しさはあまりないかもしれませんが、私の表現力と妄想力ではこれが限界でした。誠に申し訳ございません。
さらば世紀末モブ男ラウド君。肩パッドはあの世に持っていきなよ。
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こちらは気まぐれで書いた小説です。評価が上がれば追加も書こうとか考えてますが、しばらく更新はしておりません。それでも良ければどうぞそちらもよろしくお願い致します。
テンプレ異世界に飛ばされたけど、こんなのテンプレっぽいけどテンプレじゃない! ~適当テンプレ神に流されずに頑張って抵抗ツッコミしていこうとするお話~
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